OLDCODEX Painter YORKE.
『WHY I PAINT
~なぜボクがえをかくのか~』
- 第67回 ♪涙そうそう / BEGIN -
外の太陽とはギャップの強い部屋の中で
デザインワークやデスクワークが続いてる。
なんともインドアな夏の始まり。
なんとなく軽い頭痛が続いてるなあと感じてたら、
身体が発熱した。夏風邪ってやつかな?
さっさとやっつけようと、病院の待合室。

待合室で待ってると、扉が開いた。
車椅子を押された白髪のおばあさん。
僕はごく自然と立ち上がり手を引いた。
手を握った時、僕はハッとした。
よく知ってる女の人だ。
僕が彼女に名前を呼びかけると、彼女はとても驚いた顔で僕の顔を見た。
車椅子を押している男性も不思議そうな顔だ。
診察が終わっても、しばらく話し込んだ。
「本当に何にも覚えていないのよ、ごめんね。」

毎日花壇の手入れをして、
花が咲く度に部屋に届けてくれた山中さん。
旦那さんを亡くして、病に倒れてしまったと
寄り添う息子さんが空白の時間を埋めてくれた。
僕の知る息子さん。それは小さな頃の話だったんだね。
シャイな感じがお父さんにそっくりじゃないか。
とても立派な男の人になったんだね。
夏の暑い日。僕はまた大人に近付いてる。
僕の部屋に並ぶ空の花瓶たち。
“いつもいつも胸の中 励ましてくれる人よ”
僕がいつまでも覚えてる。右腕に咲く薔薇と共に。
YORKE. / july, 2018