映画『SUKITA 刻まれたアーティスト
たちの一瞬』デヴィッド・ボウイが巨
匠と呼んだ男とは

写真家・鋤田正義(すきたまさよし)の軌跡を辿るドキュメンタリー映画「SUKITA 刻まれたアーティストたちの一瞬」が、全国順次公開中。デヴィッド・ボウイをはじめ、イギー・ポップ、マーク・ボラン、YMO、忌野清志郎といった数々の「天才たちの一瞬」を捉えてきた鋤田。ポートレート、ポスター、アルバムジャケット。鋤田が手がけた作品たちは、世界中の誰もがどこかで必ず目にしていると言っても過言ではない。
デヴィッド・ボウイが鋤田正義に贈ったこの言葉。

_SUKITAはまったく献身的で素晴らしいアーティストである。私は彼を巨匠(マスター)と呼ぶ。(デヴィッド・ボウイ)

デヴィッド・ボウイにこれだけの賛辞を贈られた写真家・鋤田正義とは。

まずは予告編からどうぞ。
(映画『SUKITA 刻まれたアーティストたちの一瞬』予告編)

映画「SUKITA 刻まれたアーティストたちの一瞬」では、鋤田正義と交流の深い仲間へのインタビューや対談とともに、数々の「鋤田ゆかりの地」を巡る。今まで公開されることのなかった当時の撮影秘話や時代背景、鋤田の生い立ちなども知ることができるとても興味深い内容。そんな鋤田は、今年で80歳を迎えた。

“鋤田正義は偉大”ということは経歴やアーティスト達が残すコメントからもよく分かるが、単に「才能がある」という話だけでは済まされないように思う。鋤田正義が愛される理由、それはいったい何なのだろう。


「スキタ」とは一体どんな人?

鋤田正義(すきた・まさよし)プロフィール 1938年、福岡生まれ。 1960年代から頭角を現し、1970年代には活動の場を世界に広げる。デヴィッド・ボウイやイギー・ポップ、マーク・ボラン、忌野清志郎、YMO等の写真が有名だが、そのフィールドは広告、ファッション、音楽、映画まで多岐にわたる。2012年、40年間撮り続けてきたデヴィッド・ボウイの写真集『BOWIE×SUKITA Speed of Life 生命の速度』をイギリスから出版。その他の写真集にボウイ『氣』、『T.REX 1972』、『YMO×SUKITA』、『SOUL 忌野清志郎』等がある。またイギリス、フランス、イタリア、ドイツ、アメリカ、オーストラリア等の世界各地で自身の写真展を展開中。

これを読む人の中には、鋤田正義という人物を「知らなかった」「名前は知っているけど見たことない」という人もいるかもしれない。映画のタイトルを見て「SUKITAって何だ?スキータ?」とか思った人もいるかもしれない。この記事を書いている私自身も、映画を観るまでは「鋤田正義」という人物について詳しくは知らなかった。

かのデヴィッド・ボウイが「巨匠」と呼んでいた、なんていうから、とんでもなく異彩を放つ奇抜なお方なのかと思っていたんだけど(偏見…)、それがいやいや、びっくり。スクリーンに映し出された「鋤田正義」は奇抜とはおよそかけ離れた、実に優しくて穏やかな空気を纏っている方だった。
特に印象に残っているのは、劇中でMIYAVIと撮影を行うシーン。現場入りから撮影中、撮影終わりまで、終始にこやかでやわらかに行われる。観ている側としては、すごくラフな撮影なんだなあ、と思っていたんだけど、完成した写真を見て驚き。強い。とにかく強い。MIYAVIの目に吸い込まれるようにずっと見てしまう写真。どう撮るか、ではなく「どこで向き合い、捉えるのか」。私たち周りの者からは見えない、鋤田の被写体との向き合い方の凄みをまざまざと見せてもらった。
写真集「MIYAVI×SUKITA」出典

世界に名だたるビッグネームたちが、S
UKITAを語る

鋤田自身のことはよく知らなかったという人でも、上記の写真はどこかで見たことあるのでは?映画が始まれば、代わる代わる登場する錚々たるスターの顔ぶれに圧倒される。
デヴィッド・ボウイ、イギー・ポップ、マーク・ボランといった世界的ロックミュージシャンのほかに、映画界からは「パターソン」「ミステリー・トレイン」などで知られるジム・ジャームッシュ監督も登場。(鋤田はジャームッシュ監督による1989年製作「ミステリー・トレイン」のスチルを担当)

数々のビッグネームたちのコメントに圧倒される中、わたし的「興奮ポイント」はここ。先日カンヌ国際映画祭でパルムドール 最高賞を受賞した「万引き家族」の是枝裕和監督がコメントを寄せていた。
インタビューはもちろん受賞前に行われたものだが、是枝監督が登場した瞬間「おおお!なんてタイムリーな!」と興奮してしまうのは私だけではないはず…
出典

しかも、興奮ポイントはそれだけじゃ終わらない。「万引き家族」で主演をつとめたリリー・フランキーや、音楽を担当した細野晴臣も登場。もう、何だか勝手に運命を感じてしまう。
(『映画ワンダフルライフ その登場人物たちと撮影現場の記録』是枝監督×鋤田正義の作品はこちらから。映画「ワンダフルライフ」のスチルを撮影したのが鋤田だった。※写真はamazonより引用)

カメラを持たない写真家

リリー・フランキーは、同郷である鋤田に対しリスペクトを語り「もし、鋤田さんの写真を見てなかったら、ボクたちはRockを聴いてなかった」とコメント。
細野晴臣は、YMO(Yellow Magic Orchestra)時代を振り返るとともに、鋤田のことを「刀を持ってないお侍さんっていうイメージなんですよ、僕は。まるでカメラ持ってない、写真家みたいに、感じるんですよ。」と話した。普段はカメラの前に立つと神経がピリピリするという細野だが、鋤田の前では、まるでカメラがないかのようにリラックスできたそう。
言葉で表すことが難しいけれど、鋤田自身から滲み出るあたたかくて居心地の良いオーラみたいなものがある。その中で、あんなに強烈な作品が生まれていることにただただ驚き、観る者は圧倒される。そこに、数多くのアーティストが鋤田に心を許し、被写体として身を委ねる理由=素晴らしい作品がたくさん生まれる理由なのだろう。

写真家のドキュメンタリーであり、音楽
ドキュメンタリー

(「(c) 2018「SUKITA」パートナーズ」)

鋤田正義の半生を辿るこのドキュメンタリーは、鋤田自身のドキュメンタリーでもあり、音楽の歴史を辿るドキュメンタリーでもある。この記事を書くBGMには、デヴィッド・ボウイやYMOを選んだ。ここで一旦、私的プレイリストをご紹介します。
「Starman」デヴィッド・ボウイ

まずは、もちろんデヴィッド・ボウイ。劇中歌としても使用されている名曲「Starman」から。”今、彼が生きていたとしたらきっとこの映画に出演していたんだろうな”と曲を聴きながら妄想にふける。
「The Next Day」デヴィッド・ボウイ

もう1曲ボウイの名曲を。この「The Next Day」というアルバムのジャケットの背景となっている写真は、鋤田の撮影したボウイだ。映画の中では、鋤田自身も知らなかったという「ジャケット制作秘話」が披露され、とても興味深かった。
「BEHIND THE MASK」YELLOW MAGIC ORCHESTRA

予告編にも本編の劇中歌にも使用されたYMOの名曲。アルバム「ソリッド・ステイト・サヴァイヴァー」のジャケット写真は鋤田の作品。バラバラの靴を履き、麻雀卓を囲む細野晴臣、高橋幸宏坂本龍一とマネキン2体。このシュールかつキャッチーな写真は、アルバムの収録曲と見事なほどにマッチしている。

鋤田正義コラボTシャツが「TOKYO CULT
UART(トーキョーカルチャート) by B
EAMS」にて発売中。激レアです。

映画公開とともに発売が開始された「鋤田正義×TOKYO CULTUART by BEAMS Tシャツ」が「TOKYO CULTUART(トーキョーカルチャート) by BEAMS」にて発売中。既に売り切れ→再入荷を繰り返すほどの人気っぷりだそう。デザインは3種類。鋤田が撮影したイギー・ポップ、マーク・ボラン、YMOだ。
歴史的名盤、YMO「ソリッド・ステイト・サヴァイヴァー」のジャケに使用されている写真と異なり、Tシャツにプリントされている写真はバックがピンクバージョン。これは、鋤田のアイディアで “写真として世の中にあまり出ていないピンクパージョンを今回Tシャツにしてはどうか” という提案をきっかけに実現したスペシャルバージョン。

【インタビュー】BEAMS・永井氏が語る
「鋤田正義」そして「アート」

今回「鋤田正義×TOKYO CULTUART by BEAMS」Tシャツが発売されるということで、「TOKYO CULTUART by BEAMS」のディレクター・永井秀二氏に話を聞いてみた。
■永井 秀二(ながいしゅうじ)
1988年株式会社ビームス入社。2000年よりTシャツ専門レーベル「BEAMS T」の企画立ち上げ、ディレクターとして、2001年にbeamsT.com、2002年にはBEAMS T の路面店を原宿に立ち上げる。その後、国内外合わせショップ15店舗とショッピングサイトのディレクション、商品のバイイング、国内外のアーティストによるアートエキシビションの企画、プロデュース等を行う。2008年12月原宿にTOKYO CULTUART by BEAMSを立ち上げる。

――---今回「TOKYO CULTUART by BEAMS」から、鋤田正義コラボTシャツを発売することになった経緯を教えてください。

永井 : 元々、映画のタイアップ的なものは基本的にお断りしているんです。でも今回は映画タイアップではなく「鋤田さんとのコラボ」ということで。もちろん僕自身もずっと鋤田さんのことは知っていますし、ファッションとしてもアートとしても素晴らしいものになると思い今回の発売に至ります。数多ある洋服屋の中から、そういったお話を頂けるのはとても光栄ですね。
――---どの写真も、かなり貴重な素材かと思うのですがいかがでしょう?


永井 : 普通のルートでは、権利の問題もあるのでなかなか使えない写真ばかりですね。イギー・ポップにしろマーク・ボランにしろYMOにしろ、それぞれきちんと許可を取れているのは「鋤田さんとのコラボ」だったからだと思います。YMOの写真も、このバックがピンクの写真はかなり貴重ですしね。

――---Tシャツを作る際、こだわった部分は?

永井 : 通常はカラー写真だと、綺麗に色が出る「インクジェットプリント」で印刷することが多いのですが、今回は、鋤田さんの写真の重要性や貴重性を鑑みて、長持ちする「シルクスクリーン印刷」を選びました。インクジェットよりも画質が荒くなるという点もあるのですが、とても貴重な素材を使ったTシャツなのでシルクを選んでよかったと思います。
――---永井さんにとって「Tシャツ」とは?

永井 : Tシャツって、ある意味自分のフィロソフィを示すものなんじゃないかと思うんですよね。イギー・ポップを着ていれば、“この人はパンクな感じが好きな人なんだな”とか、マークボランであれば“ロックミュージックが好きなんだな”とか、、その人のことを少し考えさせてくれるじゃないですか。そんなアイデンティティを示すような力も持っているんじゃないかと思います。

――----「TOKYO CULTUART by BEAMS」で展開する商品の基準はどのようなものなのでしょうか?

永井 : まずはオリジナリティがあることですかね。「アート」ってその人しかできないこととか、作れないものだと思うんですよね。音楽もそう。たとえば絵が上手い人は山ほどいるんですけど、他の人でも描けそうだなって思うこともあるじゃないですか。そうじゃないのがアートかなと思います。草間彌生さんとかもそうですよね。水玉模様自体は誰でも描けるけど、あの作品は彼女にしか作れないアートですよね。
鋤田さんの写真もそうで「鋤田さんにしか撮れない写真」なんです。
Tシャツを手に取る人の中には、映画を観に行ってない人もいると思いますが、背中に「SUKITA」というプリントが入っているので、そこからまた映画を観るきっかけになって、鋤田さんのことを知る人が増えたら嬉しいですね。
Tシャツのバックプリントに「SUKITA」の文字

<鋤田正義コラボTシャツ 販売店舗>

>TOKYO CULTUART by BEAMS
>BEAMS JAPAN 4F
>ECサイト
映画の序盤で鋤田は、布袋寅泰とともに、マーク・ボランが事故死したロンドン郊外を訪れる。そこには鋤田が撮影したボランの写真が。布袋は「この写真のせいで僕はギターを始めたんです。」と当時を振り返る。

スーパースターたちが、ひとりの写真家
をとことん語ることで見えてくるもの

「ドキュメンタリー映画」という括りの中でも、インタビューや対談のシーンで構成される本作。数々の著名人が、鋤田のことを語っていくため「おお!すげー!あの人もこの人も」と感動しながら、目まぐるしく映画は進んでいく。しかし映画を観終わる頃にはそんなミーハー心はどこかへいってしまい、「鋤田正義」という人物しか見えなくなっていた。そんな不思議な感覚を覚える映画だった。

BEAMS・永井氏も語るように「その人にしかできないこと」それが「アート」であり、鋤田はそれを体現している。感性やセンスだけではない、新しいものを常に取り入れる精神や、被写体に対する愛情やまなざし、ご本人の「在り方」。そんなものをひしひしと感じる映画だった。
夢を持っていたり、好きなことを仕事にしている人には、特にグッとくるんじゃないだろうか。

SUKITA Tシャツ プレゼント企画

今回ミーティア編集部から特別に、SUKITA Tシャツを抽選で3名様にプレゼントします!応募方法はミーティアTwitterをフォロー&本記事のプレゼントツイートをRT!当選の場合、DMにてご連絡します。
※DMが届かない場合、一週間経過後もお返事がない場合は当選が無効となります。予めご了承下さい。

作品情報

映画「SUKITA 刻まれたアーティストたちの一瞬」
出演:鋤田正義 布袋寅泰 ジム・ジャームッシュ 山本寛斎 永瀬正敏 糸井重里 リリー・フランキー
クリス・トーマス ポール・スミス 細野晴臣 坂本龍一 高橋幸宏 MIYAVI PANTA アキマ・ツネオ 是枝裕和
箭内道彦 立川直樹 高橋靖子 他
監督:相原裕美
制作プロダクション:コネクツ
製作:コネクツ ハピネット スペースシャワーネットワーク パラダイス・カフェ パルコ 鋤田事務所
協賛:学校法人 日本写真映像専門学校
配給:パラダイス・カフェ フィルムズ
2018年 / 日本 / カラー / ビスタ / Digital / 5.1ch / 115分
(c)2018「SUKITA」パートナーズ
sukita-movie.com

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映画『SUKITA 刻まれたアーティストたちの一瞬』デヴィッド・ボウイが巨匠と呼んだ男とははミーティア(MEETIA)で公開された投稿です。

ミーティア

「Music meets City Culture.」を合言葉に、街(シティ)で起こるあんなことやこんなことを切り取るWEBマガジン。シティカルチャーの住人であるミーティア編集部が「そこに音楽があるならば」な目線でオリジナル記事を毎日発信中。さらに「音楽」をテーマに個性豊かな漫画家による作品も連載中。

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