宮沢氷魚、青柳いづみ、豊田エリー、
中嶋朋子にミニインタビュー~舞台『
BOAT』ビジュアル撮影現場にて

2018年7月16日(月・祝)から東京芸術劇場プレイハウスにて、藤田貴大(マームとジプシー)の最新作となる舞台『BOAT』が上演される。先日実施された本作のビジュアル撮影の合間を縫って、これが初舞台かつ初主演となる宮沢氷魚、青柳いづみ、豊田エリー、中嶋朋子に撮影の感想や出演に対する今の気持ちを、そして彼らを選んだ藤田に本作の構想を聞いてみた。
宮沢氷魚
僕はモデルをメインに仕事をしているのですが、今日の撮影は普段のそれとは違う雰囲気でした。あんなに大勢の人が撮影に関わりながら一つの世界観を目指しているのを肌で感じて、心地よい緊張感がありました。撮影に準備されていた小道具と、ボートだけであんな風に世界が生まれるんだ、と感動していました。
今回初舞台ですが、最初にお話をいただいたときは「嘘かドッキリなんじゃないかな」って思っていました。だから、実は藤田さんとお会いするまでは半信半疑で、お会いしてお話をして初めて「本当なんだ!」と確信したんです(笑)。ただ、以前から舞台に出演することに以前から興味があったので、とても嬉しかったです。俳優としてのお仕事は2017年の秋から始めたばかりなのですが(ドラマ『コウノドリ』シーズン2)いよいよ舞台です。素敵な出演者の皆さんと藤田さんとご一緒するのが楽しみです。まだ若いうちに色んな経験が出来るのは本当に光栄な事だと思っています。
現時点では、まだこの作品で僕がどのような役をやるのか、藤田さんから聞いていなくて。全く分からない状態です。藤田さんは普段も稽古が始まるまで敢えて決めないみたいです。ご本人も「僕の現場は他の人の現場とかなり違うと思うので、これを普通だと思わないで」っておっしゃっていました(笑)。
いわゆる「ボート」って今は、レジャーで楽しくワイワイというイメージかもしれないですが、昔は母国を離れて新しい国で仕事を探すなど、「苦労」を連想させるものだったのかもしれません。多くの人々の辛さ、新しい人生への船出、自分の家族やホームタウンを離れて新生活を送る人……そんな事をぼんやりとイメージしながら今回の撮影に参加していました。実は僕の曽祖父と祖母がアイルランドからアメリカに渡ったんです。今もふとした瞬間に彼らがどんな想いや経験をしてアメリカに渡ったのか、考えることがあります。
宮沢氷魚
青柳いづみ
ボートで来て、ボートで去っていくというお話。それ以上のことは知らないんです。藤田くんの場合、新作となると本当に誰もその内容を知らない。藤田くんですら知らないのかもしれません。稽古をやりながら役を決めていくこともある。今回はどういうやり方をするのかな。
私は「ボート」と聞いて「異境」を思い浮かべました。ボートで国境を越えていく、まったく違う場所からやっていく。『BOAT』はこれまで上演した『カタチノチガウ』『sheep sleep sharp』と併せて三部作といっていますが、その作品を含め童話をモチーフに扱った作品を多く作ってきました。童話の中では悲惨な出来事もたくさん起こっていて、それは今の現実世界でほんとうに起きていることと何が違うのだろう、と考えていくと、童話は童話でなくなるし、劇中で起きていることも劇中で起きていることだけではなくなっていく。藤田君はそうやって作品について、今いるこの世界について考えていると思います。今回の『BOAT』では藤田君が作った世界を観客の皆さんは観る事になりますが、それを通して、今この世界に、生きている人たちに向けて“現実”を見せたいという思いが藤田君にはあるようです。
藤田くんは「俺が影響を受けたのは時代だけかな」ってかっこよく言っていますけど(笑)、実際作品ができる時代の影響を受ける事がとても多いと思います。それは、学生のときから変わっていません。
これまで作ってきたすべての作品が同じように大変でした。作品を作るということはそういうことだと思っています。それでも作品が出来上がった瞬間にかつて見みたことのないものが見える瞬間があって、藤田君はこれをいつから予見していたのだろうかといつも驚きます。誰も見たことのないものを見せたいし、見たい。彼もそれを見たくて演劇をやっているんでしょうね。
青柳いづみ
豊田エリー
今日の撮影現場で、立ち位置や衣裳の微妙な違いを調整して撮影していく様子は、藤田さんの普段の作品作りにも繋がるので、とても印象でした。以前参加させていただいた『ロミオとジュリエット』でも試しては修正の日々。本番が始まってからも台詞を足したり減らしたり、とさらに修正を重ねていったんです。私は父がイギリス人で、父の地元は港町で海が見える場所なんですが、昨年、その景色の写真を送ってほしい、と藤田さんから言われて写真を送ったこともありました。だから、今日の撮影では父の地元の海を思い浮かべていました。
前回はオーディションで参加しましたが、今回はあの時間を経て、直接お声をかけていただいた、ということが率直に嬉しいです。前回は初舞台ということもありとにかく必死でした。終わった後は、もっといろいろなことができたんじゃないかなって思い続けていたんです。また藤田さんの世界の中でお芝居ができることになったので、あのときの自分を越えていけるように頑張ります。とにかく、いい緊張感を持って臨みたいです。
『ロミオとジュリエット』のときもオーディションで受かったとはいえ、配役については稽古開始日までまったく分からなかったんです。稽古の前にワークショップもあったので、ここでは分かるはず! と思っていたのですが、そこでも分からなくて。ワークショップ自体がオーディションなのでは? と思うくらいでした。あとで「あの時は敢えて言わなかった」って打ち明けられましたけどね。
共演する宮沢さんはかっこいいし、身長も高い。言動がすべてかわいらしくて、以前番組で共演した際、スタッフさんたちと「氷魚くんは年上の女性人気が半端ないんじゃないですか?」とキャッキャしてました(笑)。珍しいタイプの青年ですね。どうしてこんなにも、この世界で汚れずに生きてこれたのだろうって。心が綺麗だなあって感じています。
豊田エリー
中嶋朋子
(撮影をして)物語がここから始まる、という感じがしました。私は藤田さんの作品に出演するのは初めてなのですが、藤田さんの頭の中のイメージをぐっと掘り下げて撮っている印象を受けたので、たぶんお芝居についてもきっとたくさん作り込まれる方なのでは、と思いました。とても楽しみです。
初めて観た藤田さんの作品は『クラゲノココロ モモノパノラマ ヒダリメノヒダ』。そのあと『ロミオとジュリエット』も観ています。『ロミオとジュリエット』では、今回共演する豊田さんが初舞台とは思えないくらいしっかりと舞台に立っていたのが印象的でした。私の初舞台も『ロミオとジュリエット』なんですよ。
とにかく作品を拝見する時はいつも、藤田さんの才能に驚かされています。作品では感動させていただいていましたが、まさか自分が藤田さんの世界に寄り添うことができるなんて、思ってもいなかったんです。すごく好きな世界だったので、お声をかけていただいたときは、一緒に作品を創造することができるんだなあ! って本当に嬉しかったです。
今回の作品は『BOAT』というタイトルです。まだ内容については分かりませんが、今の自分が物語の中で水のようにたゆたっていけたら、自分自身も何かを手に入れることができるかもしれませんね。
中嶋朋子
藤田貴大
僕はこの数年、「ここがどこなのか、今がいつなのかわからない世界」の中で、生きるか死ぬかの狭間で葛藤する人間を描きたいと思って作品を作ってきました。
昨年(2017年)北朝鮮からボートが着岸したニュースを見たとき、同じタイミングでマームとジプシーでは「新しい作品のためにボートを買いたい」という話題が出ていたりしていて、自分の頭の中に描いている世界とニュースで見ている現実が一致するタイミングがありました。日本って島国だし、周りを海で囲まれていて、船で行き来しないと他の国と関われないじゃないですか。そこにボートがたどり着くのって非常にショッキングなことだと思うんです。これが島国じゃなかったらまた全然違う印象となると思うんですけどね。直接的にも難民問題にも繋がってくる事だし。そんな『BOAT』という言葉から想像力が膨らませ、ボートというモチーフでいろいろなことを紡いでいくとおもしろいんじゃないかなと思って始まりました。
今回のキャスティングは1年近く悩んでいて、結果的にとても良いキャスティングができたと思っています。宮沢氷魚さんと中嶋朋子さんは始めてご一緒します。宮沢さんは、瞳に奥行きがある人を求めていたのでピッタリな人がいて嬉しかったです。そして中嶋朋子さん。僕自身の中には中嶋さんには「その土地で待っている人」というイメージがあります。色んな事でそうだと思いますが、そこから出ていく人たちだけでなく、出ていかない事を選ぶ人たちもいると思うのです。作品の中でもその事は描きたいと思っているので、その“出ていかない人”の中に中嶋さんがいてくれたら、と思っています。
誰がどの役をやるか、を明らかにしていないのは役者さんとの関わり方としても、そのことだけに縛られたくないから。キャスティングって僕が思い描く世界に「いる」と思えるか、「いてほしい」と思うかどうか、だと思うんです。これは関わるスタッフも同じです。
昨年「マームとジプシー」が10周年を迎え、その時に自分が10年間で描いてきた作品をどう把握するか、というリクリエーションをしたんです。具体的に言うと、過去描いていた9作品をモチーフ別に3つずつ並べてそれぞれ3つの作品にまとめました。その3作品と30代になった時に描いた作品、全部で4作品を携えて全国ツアーをしました。そのとき、やはり今までの自分は、生まれ故郷の北海道伊達市での自分自身の記憶をモチーフにずっと描き続けて来たんだと再認識しました。その時間を経て、今後は作家としてその先に行くために、全く別なモチーフに着手していく事になると思います。20代の頃のように自分の記憶を直接的に描いて頼りにするのではなくて、自分という人間がどのように世界を把握し、つくっていけるか、ということに挑戦していきたいなぁと考えています。
藤田貴大 photo by 篠山紀信
取材・文=こむらさき

アーティスト

SPICE

SPICE(スパイス)は、音楽、クラシック、舞台、アニメ・ゲーム、イベント・レジャー、映画、アートのニュースやレポート、インタビューやコラム、動画などHOTなコンテンツをお届けするエンターテイメント特化型情報メディアです。

連載コラム

  • ランキングには出てこない、マジ聴き必至の5曲!
  • これだけはおさえたい邦楽名盤列伝!
  • これだけはおさえたい洋楽名盤列伝!
  • MUSIC SUPPORTERS
  • Key Person
  • Listener’s Voice 〜Power To The Music〜
  • Editor's Talk Session

ギャラリー

  • 〝美根〟 / 「映画の指輪のつくり方」
  • SUIREN / 『Sui彩の景色』
  • ももすももす / 『きゅうりか、猫か。』
  • Star T Rat RIKI / 「なんでもムキムキ化計画」
  • SUPER★DRAGON / 「Cooking★RAKU」
  • ゆいにしお / 「ゆいにしおのmid-20s的生活」

新着