椎名桔平にインタビュー「家族のあり
方を感じてほしい作品です」 舞台『
レインマン』

2018年夏、舞台『レインマン』が、東京・新国立劇場 中劇場にて上演される。原作映画は1988年にアメリカで公開され、翌年には日本でも公開された映画史に残る傑作。ダスティン・ホフマンとトム・クルーズが兄弟役を演じ、人の出会い、人間としての変化、家族とは何かを考えさせるヒューマンドラマである。2006年に日本で世界初の舞台化がされたのち、2008年には新たにウエスト・エンドで舞台化されたが、本公演はそのウエスト・エンド版の翻訳上演となる。弟チャーリー役は藤原竜也、そして兄レイモンド役は今回、2006年の日本版でチャーリーを見事に演じた椎名桔平が挑む。

12年前に弟を演じ、今回役を変えて兄を演じる椎名の心境とは? 作品の魅力、役作りに対する考えなども含め、話を聴いてきた。
【あらすじ】
事業に失敗して破産寸前のチャーリー(藤原)の元に、自分を勘当した父の訃報が届く。莫大な遺産すべてが自分のものになると期待して帰郷するが、財産を受け取るのは、いるはずのない兄のレイモンド(椎名)だと聞かされる。
チャーリーはなんとか財産を手に入れようと、重度のサヴァン症候群患者である兄を施設から連れ出すことを決意するが……。

ーーまずは、12年前の日本初演時の思い出を含め、今回どのようにレイモンド役を演じたいと思っているのか、お聞かせください。
前回時、僕は(レイモンド役の)橋爪功さんの芝居を毎日見てきた訳ですが……どんな芝居だったかなあ(笑)。あれから年月も経ちましたので、今思い出している最中です(笑)。当時ヅメさん(橋爪)が60歳半ばで、僕は今年54歳。当時のヅメさんとは違う感じの兄役になるのかな、と想像しています。さかのぼると兄レイモンドを映画で演じたダスティン・ホフマンは、年齢こそ今の僕に近いくらいだったかなと記憶していますが、彼とは背格好も演技力も違いますし(笑)。今は小説になっているものを読み、改めて記憶をさかのぼろうとしているところです。
映画では、レイモンドのモデルになっているキム・ピークさんを研究して役を作られたそうです。が、サヴァン症候群の方はキムさんのようなタイプの天才的な記憶力を持つ方だけでないので、僕はいろいろなタイプの方をインターネットやドキュメンタリー番組などで調べることで、自分の役を作っていこうと考えています。すばらしい演技をしてきた歴代の先輩たちに敬意を払いつつ、一方で彼らが作った形にとらわれないようにしたいと思っています。橋爪さんと共演した事は自分の中で財産となっています。その財産を持ちながら違うアプローチを探していこうとしているところです。
ーーお話を伺っていると、椎名さんは事前にリサーチしてから役に臨むタイプなのかな、と感じたのですが、その点はいかがですか?
そうですね。5年前に出演した『「教授」~流行歌の時代とある教授の人生~』という舞台で、僕が演じたのは寄生虫を研究している生物学者。その時はやはり学者の気持ちがわからないから、寄生虫博物館を観に行ったりしていました。何も知らないという状態からのスタートであれば、知識や体験など「何か」に頼りたい……その気持ちがリサーチという動きにつながるんだと思います。知っていて不要なものを省くことはできますが、知らないと何も加えられませんからね。
今回演じるサヴァン症候群の方も僕の身近にはいませんし、施設などにもそう簡単に行くことができません。でも本当は、直接お会いして彼らの話し方や仕草など「リアルな存在」としてとらえてみたいとも考えています。
とはいえ、『レインマン』は、サヴァン症候群の方をどう理解するかが本作の軸ではなく、本作を通して家族の在り方を考えるということが軸となります。普遍性のある「家族」「兄弟」という視点が主軸となります。欲深な弟チャーリーと無垢な兄レイモンドの両極端な兄弟の対比。アメリカのエンターテインメントは他の映画を見てもこういう対比の仕方が好きなのかもしれませんね。
ーー今回上演されるのは過去の上演よりかなり大きな劇場(新国立劇場 中劇場)ですね。
今回上演する会場は、過去上演した劇場よりも大きく、900人超のサイズ。この作品ってちょっとした仕草や目線の動きがキーとなると思うので、どういう演技、演出の調整をしたら大きな劇場で成立するのか、演出家の松井(周)さんたちと相談して作っていきたいですね。松井さんとは、今回初めてお仕事をするのですが、稽古の中でどういうふうに松井さんの世界観に触れていくのか、とても楽しみにしています。
ーーこの作品「家族」がテーマということですが、椎名さんが考える「家族」とは?
今回の役作りには直接活かせないかもしれませんが「家族」って愛おしくてたまらない存在なんですよね。うちの子は8歳になりました。同じくパパである友人からは「4、5歳がかわいらしさの頂点」と聞いていたんですが、息子は8歳になってもかわいくてかわいくて仕方がない(笑)。先日、学校で転んでちょっとおでこを切ってしまい、傷口を縫うことになったんですが、それを見ながら「ああっ、俺が代わってあげたい」って(笑)。これが大人相手なら放っておける話ですが、パパとママとしては「何があってもこの子は守らないといけない」という純粋な感覚が溢れてきますよね。
親子だけでなく夫婦でもそうですね。若い時であれば単なる男女の恋愛で「お前が好きだベイビ~!」(※椎名さんの発言ママ)で済む話でしょ(笑)? そんな男女の付き合いから、結婚して長い年月をかけ、互いにいい歳月を重ねていくことで、違う愛しさが膨らんでいく。それが「家族」というものなんだと思っています。
椎名桔平
取材・文=こむらさき

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