KFK 初のワンマンツアーにみた、音楽
性の追求・再構築の先にある新境地

KFK CLUB ONE-MAN TOUR 2018『7 DYSTOPIA CITIES』 2018.4.29 渋谷WOMB
KFK(ケー・エフ・ケー)初となるワンマンツアー『KFK CLUB ONE-MAN TOUR 2018『7 DYSTOPIA CITIES』』のファイナル公演が渋谷WOMBで行なわれた。前身バンドであるカフカから改名し、今年1月に初のミニアルバム『ラブソングフォーディストピアシティトーキョー』をリリースして以降、1月27日には渋谷VUENOSで単発のリリースパーティーを行いバンドの新たな進む道をいち早く示したKFKだったが、今回は初となる全国ツアーを全国7ヵ所で開催。その会場もカフカ時代に馴染みのある“ライブハウス”ではなく、“クラブ”にこだわり、前半はバンドセット、後半はDJタイムという構成でライブを繰り広げてきた。そのファイナルとなった渋谷WOMBは、今KFKがやりたい音楽を徹底的に追及しながらも、その“やりたいこと”を集まったお客さんときちんと共有したいという、そんなメンバーの想いが溢れたライブだった。
KFK 撮影=Kazuki Sano
メンバーはバンドロゴがデザインされたお揃いのコーチジャケットを羽織って、ステージに現れた。「We are KFK from Tokyo Setagaya!」。カネココウタ(Vo)がオートチューンを使った不思議な声であいさつをすると、「私はもう気にしない」からライブはスタート。カネコがシェイカーを振りながらハンドマイクで歌い、ベースのヨシミナオヤはシンセを弾く。この2人は、曲によってギターやベースを持つフレキシブルなスタンスをとる一方、ドラムのフジイダイシとギターのミウラウチュウは最後まで同じ楽器というスタンスだ。「今日はツアーファイナルなので、今まで地方を回って持ってきた想いを解放して、共有するライブをしたいと思ってます」というカネコの言葉から、多幸感溢れる「Another World Another Day」や、ゆったりとしたグルーヴに揺れる「Falling Butterfly」など、エレクトロテイストなクラブ仕様の楽曲たちでフロアを踊らせていく。正面だけでなく、天井にまで設置されたスクリーンには、KFKのライブでは欠かせないVJによる映像を映し出しながら、音楽と映像とが一体となる唯一無二の空間を作り上げていった。
KFK 撮影=Kazuki Sano
「今年でカフカは10周年だったんだよね」と、KFKになる前のバンドのことにも想いを馳せたあと、カネコは今のKFKに対する想いを語りかけた。「“変わっちゃった”って不安な人たちもいると思うけど、俺らの内面は変わらない。変われるはずがないしね。この4人がやる音楽であることには変わりないから、KFKの良いところをみんなに共有してもらいたいなと思ってます」と伝えると、80s’ な雰囲気を漂わせたダンスナンバー「いたって普通」、カフカ時代の楽曲を浮遊感のあるアレンジで再構築した「彼女は海で(Re-Build)」、さらにダークで混沌とした「byz dnt kry」を立て続けに届けた。ビリビリと空気を震わせる重低音に合わせてメンバーが体を激しく動かすアグレッシヴな演奏は、今回のツアーを経て大きく研ぎ澄まされた部分だった。これまでのKFKは“カフカ的なバンド感”を排除して、全く違うものをしなければならないという意識があったような気がするが、この日は、あくまで10年間ロックバンドを続けてきた4人が、ロックバンドのままクラブカルチャーに近いところで新しいバンドに生まれ変わったという、その意味を感じるライブでもあった。
KFK 撮影=Kazuki Sano
KFK 撮影=Kazuki Sano
MCでは「持ち曲が少ないから喋るしかない」「それでもワンマンツアーをやるっていう暴挙に出たのは、カフカから知ってくれてる人にちゃんとワンマンでKFKを伝えたかったから」と、カネコ。ここで、ギターを準備しながら「ツアー中に作った新曲をやります」と言ったものの、イントロが始まった瞬間、どうやら曲順を間違えていたことに気づいた様子。ヨシミが「なんかギターを持ってるから、怪しいと思ったんだよね(笑)」と笑いを誘い、そのあたたかい空気のまま今回のツアー会場限定で初のアナログリリースされている新曲「Milkshake」と「2Nite」が披露された。この時、カネコは「レコードを出すのが夢だった」とも語ったが、それもカフカ時代には、やりたくてもやれなかったことのひとつだ。そして、今度こそ新曲「熱帯夜」へ。ゆったりとしたヨシミのラップに始まり、ダンサブルなビートが打ち鳴らされると次第にシューゲイザーのようなギターの轟音が激しく渦巻いていくアプローチは、KFKの新境地であり、あらゆるジャンルを超越してゆく今のKFKだからこその素晴らしい楽曲だった。
KFK 撮影=Kazuki Sano
「ぶちあがっていけますかー!?」というカネコの声を合図に、メンバーの名前を使ったコール&レスポンスでフロアを盛り上げると、いよいよライブはラストパートへと突入した。カネコとヨシミが奏でる2台のシンセが心地好く共鳴する「M i s s i n g」のあと、「みんなの歌だぜ!」という煽り文句からヨシミによる攻めのラップが炸裂したEDMナンバー「Are you KFK」で、会場のボルテージが最高潮へと達する。そして、最後の1曲「せたがや・とわいらいと」を前に、カネコは「俺たちは世田谷で暮らしてる4人なんだけど、ただその街に生きてることが嬉しくて。なんか……生きててよかったなと思います」は語りかけた。享楽的なダンスナンバーとは裏腹に、生きていくうえで誰もが避けては通ることのできない、悲しみや痛みをも内包しながら、それでも“今だけは傷だらけでも走るだけだろ”というメッセージを込めた楽曲は、この日のライブの終わりにとても相応しかった。
KFK 撮影=Kazuki Sano
そして、ライブを終えたメンバーがステージ後方に用意されていたDJセットへと移動すると、そのままDJタイムへと突入した。「せっかくだから乾杯しようぜ!」と、アルコール片手に陽気な声を挙げたメンバーが、SMAPや洋楽の最新ヒットまで含んだ様々なジャンルの楽曲をプレイすると、1月のリリースパーティーの時には、やや戸惑い気味だったお客さんも、楽しげに体を揺らしていた。ライブもDJも地続きの音楽として楽しんでほしいというKFKからの新しい提案もまた、ツアーを経て少しずつ浸透しつつあるようだ。
KFK 撮影=Kazuki Sano
なお、KFKは6月23日に恵比寿 Time Out Cafe & Dinerで『KFK Presents ROOM』というDJイベントを開催する。KFKが作る新しい遊び場として、今後も定期的に開催していくというこのイベントでは、DJだけでなく、その場所でしか買うことのできないグッズや音源もリリースしたいと、メンバーは意欲を口にしていた。バンドという枠に囚われないKFKの音楽活動は、ここからさらに本格化していきそうだ。

取材・文=秦理絵 撮影=Kazuki Sano
KFK 撮影=Kazuki Sano

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