忘れらんねえよ 10周年&梅津卒業ワ
ンマンで見せた“ロックンロールは嘘
をつかない”ということ

忘れらんねえよ 10周年&梅津卒業ワンマン『サンキュー梅ックス』

2018.5.1Zepp Tokyo
「思いっきり笑えよ! 思いっきり騒げよ! 思いっきり泣いてもいいからな!」
開演時間になり、フロア後方から登場した柴田隆浩(Vo&Gt)が柵の上から観客に叫ぶと、「俺を運べ!」とクラウドサーフ、というか仰向けで運ばれてステージにたどり着く。そのマヌケな姿にフロアから笑いが起き、和やかな空気のままライブがスタート。
初のZEPP TOKYOワンマンとなる、10周年&梅津卒業ワンマン『サンキュー梅ックス』。結成10周年記念に加え、梅津拓也(Ba)の卒業ライブということもあり、超満員の観客が見守ったこの日。「忘れらんねえよは好きですか? 俺も忘れらんねえよが大好きです!」と始まったライブに湿っぽさは無かったが、1曲目の<さよなら君がいたから 全ては輝いたぜ>と歌詞を変えて歌った「ゾンビブルース」に、柴田の想いや覚悟を感じる。
忘れらんねえよ 2018.5.1 撮影=岩佐篤樹 ATSUKI IWASA
ベースラインが印象的な「あんたなんだ」では、「このベース、気に入ってるらしいよ」と柴田が梅津を茶化したり、「梅津くんと最初に作った曲です」と始まった「ドストエフスキーを読んだと嘘をついた」では、二人で顔を突き合わせて音を重ねたり、思い出をなぞり、噛みしめるように演奏する柴田と梅津。サポートメンバーであるマシータ(Dr)、タナカヒロキ(Gt)との呼吸もバッチリで、痛快なビートで踊らせた「体内ラブ」、サビに大合唱が起きた「スマートなんかなりたくない」と、前半から多数の魅せ場を作る。

忘れらんねえよ 2018.5.1 撮影=岩佐篤樹 ATSUKI IWASA
忘れらんねえよ 2018.5.1 撮影=岩佐篤樹 ATSUKI IWASA
盟友であるおとぎ話の有馬和樹と牛尾健太。サポートギターとして共に活動していた、爆弾ジョニーのロマンチック☆安田と、ゲストを迎えてのセッションや思い出話も大いに盛り上がった中盤戦。梅津が以前組んでいたバンドで作った曲に、柴田が歌詞を付けてきたら、「紙がない」といううんこの曲になっていたという話で盛り上がると、「そりゃ、やめるよね」と梅津が脱退の真相を明かす(笑)。柴田は「しかし、素晴らしい仲間と出会わせてくれて、バンドは最高だな!」と笑うと、「バンドやろうぜ」のヒネた歌詞でその喜びを歌い、「人生は突然真っ暗になることがある。でも、1、2、3、4(のカウント)で奇跡が起きるんだよ!」と言って「北極星」で輝き続ける覚悟を歌い、梅津と強く握手をする。
忘れらんねえよ 2018.5.1 撮影=岩佐篤樹 ATSUKI IWASA
忘れらんねえよ 2018.5.1 撮影=岩佐篤樹 ATSUKI IWASA
今後、ついにメンバーが柴田一人になってしまう、忘れらんねえよだが。「CからはじまるABC」で、でかい音を鳴らしてバカ正直な歌詞を叫ぶ彼らと、会場中が拳を上げて声を合わせる光景を見て、全く心配ないと思った。柴田は何も諦めてないし、バンドを信じているし、ロックンロールを信じている。「全部ぶつけていいですか? お前らも全部ぶつけて来いよ!」と始まった「俺よ届け」で、<絶対 俺変わったりしないから>と叫ぶ姿に、このまま変わらず、信じ続け、貫き続け、さらなる高みまで突き進んで欲しいと心から思った。
忘れらんねえよ 2018.5.1 撮影=岩佐篤樹 ATSUKI IWASA
ライブ後半、「10代の時に(柴田と)知り合って、10代のまま続いてる気がしたんだよね。でも、ここで一区切り。ここから旅立とうと思って、決断しました」と、今の気持ちをファンに告げた梅津。柴田の「楽しかった?」の問いかけには、「楽しかったよ」と笑顔を見せる。その言葉を受けて、「今日は楽しもうでいいや! 泣くのは明日でいいや!」と吹っ切れた様子の柴田は、「ばかばっか」で1,000円札を握りしめて、観客の頭上に飛び込むと、フロア後方まで観客に運ばれて行きビールを購入。フロア中央で観客の頭上に立ち、「おまえらの夢を注ぎ込め、全部飲み干して叶えてやるよ!」と一気に飲み干す! ステージに戻り、<世の中ばかばっか>と歌う一番のばかに歓声を送る観客の顔はみんな笑顔で、「やっと分かった! 俺はロックンロールでお前らを笑顔にして、俺も笑顔になって、悲しみを全部ぶっとばしたいんだ!」と告げる柴田の表情も力強く、説得力に充ちていた。
忘れらんねえよ 2018.5.1 撮影=岩佐篤樹 ATSUKI IWASA
<僕は歌い続けるよ>と誓った「いいひとどまり」、<明日には 名曲が このZEPPに 生まれんだ>と歌った「この胸の高鳴りをなんと呼ぶ」と続き、本編ラストは「明日とかどうでもいい」。アンコールでは、「夢なんて叶うんだな! 下北沢でやってる時、ZEPPでやれるなんて、これっぽっちも思わなかったけどさ、ロックンロールって嘘つかないんだな」と柴田が語ると、夢を込めて書いた「バンドワゴン」をたっぷり気持ちを込めて歌う。

忘れらんねえよ 2018.5.1 撮影=岩佐篤樹 ATSUKI IWASA
忘れらんねえよ 2018.5.1 撮影=岩佐篤樹 ATSUKI IWASA

忘れらんねえよ 2018.5.1 撮影=岩佐篤樹 ATSUKI IWASA
MCではサポートを含む4人が梅津へ言葉を贈り、「よし、終わろうか! 面白かったから、これからも面白いことをやっていきます」と「忘れらんねえよ」を熱唱。観客はスマホのライトを照らし、大合唱で梅津を送る。アンコールラストで演奏された「まだ知らない世界」ではたっぷり感情を込めた演奏を聴かせると、渾身の演奏を見せたアウトロでタナカ、マシータが一人ずつ楽器を置き、梅津を抱きしめてステージを去っていく。柴田と梅津だけが残されたステージでは、2人の最後の演奏がしばし続くと、柴田が「梅津ありがとう!」と涙声でシャウトし、梅津を抱きしめてステージを去る。残った梅津もステージを去ると、ベースのフィードバックだけがステージに残った。全34曲、3時間強におよぶ、この日のライブ。誰もいないステージには、鳴り止まない拍手が送られていた。

忘れらんねえよ 2018.5.1 撮影=岩佐篤樹 ATSUKI IWASA
忘れらんねえよ 2018.5.1 撮影=岩佐篤樹 ATSUKI IWASA
終演後、スクリーンには7月9日に渋谷CLUB QUATTROにて行われる、次回ライブの告知が流される。忘れらんねえよの物語は、まだまだ終わらない。
取材・文=フジジュン 撮影=岩佐 篤樹 ATSUKI IWASA
忘れらんねえよ 2018.5.1 撮影=岩佐篤樹 ATSUKI IWASA

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