「臼井孝のヒット曲探検隊
~アーティスト別 ベストヒット20」
平成の歌姫、浜崎あゆみの
ヒットを探る
アルバムオリジナル曲も
2曲が総合TOP10入り
しかも、シングル以上にアルバムでヒットを飛ばしていたこともあり、9位に「Who...」、10位に「JEWEL」と2曲のアルバムオリジナル曲が総合TOP10入りしているのも注目点だろう。「Who...」の方は1999年11月発売の2ndアルバム『LOVEppears』(これもシングル「Appears」との対比となるセミヌード・ジャケットで“白あゆ”“黒あゆ”と大きな話題に)の本編ラストに収録されたバラードで《これからもずっとこの歌声が/あなたに届きます様にと》というサビの歌詞からライヴの終盤で歌われることの多い人気曲、また「JEWEL」はPanasonicのCMソングに起用され《君の笑顔が/僕の大切な宝物》と温かく歌ったラブソングで、共に配信とカラオケで強く支持されている。
他にも本人初のデジタルシングルで、配信で25万件以上のヒットとなった「Together When...」が12位(世間的にさほど知られていなかった段階でも『NHK紅白歌合戦』で歌唱できたという好待遇も話題に)、1stアルバムのタイトル曲「A Song for XX」が14位と、アルバム曲がランクインしている。
「Together When...」MV
全体的に切ないバラードや
爽やかなアッパーチューンが人気曲
筆者自身が、その変化を最初に感じたのは2005年のシングル「Bold & Delicious」だろうか。本作はCDの売上が前シングル「HEAVEN」から33万枚→13万枚と急落し、配信やカラオケでも彼女のTOP30に入っていないが、その作品にかけた熱量は過去最大級かと思ったほどだ。なにしろ“ヤーヤーヤーヤーガーガーガーガー”という怒涛のコーラスから始まって、サビで“Bold&Delicous!!”とゴスペル調の女性コーラスが入り、それに対し、本人も“(そう自由に)なってぇ!”とハイテンションなシャウトで応酬している。そこにはかつての切なさや可愛さは微塵に感じられず、上位曲が好きなファンにとっては“需要なき供給”のように思われがちだが、本作があったからこそ、後年のより自由な作品作りや力強いパフォーマンスに彼女が覚醒できたのではないか、と思っている。
最近は新曲のリリースよりも長期的なライヴやSNSでの情報発信に注力しているが、ライヴでの実績がすこぶる多い彼女だからこそ、また、ヒットの指標がCDセールスだけではなくなった今だからこそ、本当に伝えたい楽曲が伝わるような気がする。是非とも新たな代表曲が生まれることに期待したい。
「Bold & Delicious」MV
プロフィール
臼井 孝(うすい・たかし)
1968年京都府出身。地元国立大学理学部修了→化学会社勤務という理系人生を経て、97年に何を思ったか(笑)音楽系広告代理店に転職。以降、様々な音楽作品のマーケティングに携わり、05年にT2U音楽研究所を設立。現在は、本業で音楽市場の分析やau MUSIC Storeでの選曲、さらにCD企画(松崎しげる『愛のメモリー』メガ盛りシングルや、演歌歌手によるJ-POPカバーシリーズ『エンカのチカラ』)をする傍ら、共同通信、月刊タレントパワーランキングでも愛と情熱に満ちた連載を執筆。Twitterは @t2umusic、CDセールス、ダウンロード、ストリーミング、カラオケ、ビルボード、各番組で紹介された独自ランキングなどなど、様々なヒット情報を分析してお伝えしています。気軽にフォローしてください♪