「臼井孝のヒット曲探検隊
~アーティスト別 ベストヒット20」
ラブソングとエールソング、
どちらが人気!?
ドリカムのベストヒットを探る!

総合8位は「未来予想図」シリーズの
カップルの“今”を描いた大ヒット曲

これらのCDヒット曲に分け入って総合8位に入ったのが、2007年のシングル「ア・イ・シ・テ・ルのサイン~わたしたちの未来予想図~」。「未来予想図」「未来予想図II」の世界観を反映した映画『未来予想図 ~ア・イ・シ・テ・ルのサイン~』の主題歌として、そのカップルの“今”を想定して書き下ろされ、配信では75万件を超える大ヒットとなった。

このように代表曲を語っているとキリがないのがドリカムの特長でもあるのだが、これらの名曲たちに次いで、アルバム収録曲の「HAPPY HAPPY BIRTHDAY」が11位と大健闘している。こちらは93年のアルバム『MAGIC』のラストに収録された1分15秒ほどの短い楽曲だが、ハイレベルなゴスペルが展開される、かわいらしくもカッコいい作品。本作がかかった途端、その場は祝福ムードに包まれるので、そういった演出効果としてダウンロードしたり(10位)、カラオケで歌ったり(11位)する人が20年以上経った今でも、かなり多いということかもしれない。

ラブソングだけでなく
エールソングの比率も高い

そして、ここで『私のドリカム』のテーマ別の上位ランクイン数を見てみると、TOP20中のベスト盤収録17曲中、“LOVE”が8曲、“TEARS”が2曲、そして“LIFE”ソングが7曲となった。特に初期にラブソングが多いと思われるドリカムだが、それとほぼ同等で“LIFE”を綴ったエールソングも人気。例えば、3大女性シンガーソングライターと言われる、中島みゆき、松任谷由実、竹内まりやでもこの3要素のそれぞれの代表曲はあるが、これほどまでエールソングの比率が高いのはドリカムならではだろう。これも、世知辛い世の中や前述の東日本大震災など、苦境を乗り越えるのに彼らのパワフルなステージや楽曲がより必要とされているということだろうか。

2017年10月には、約3年ぶりとなるオリジナルアルバム『THE DREAM QUEST』を発売。本作には「九州をどこまでも」「愛しのライリー」「あなたのように」「KNOCKKNOCK!」「あなたと同じ空の下」「その日は必ず来る」と6作もの配信限定シングルが収録され、いずれも映画やCMなどの大型タイアップが付いて、配信で週間TOP10入りはしているものの、アルバム売上は累計13万枚弱(2018年2月現在)にとどまっている。アルバムの内容としては前述の“LIFE”要素がより色濃くなっており、もしかすると、このSNS時代ではそれにアレルギーを起こしている人がいるのかもしれない。また、ディテールの効いた恋愛模様の表現が秀逸なドリカムだからこそ、“LOVE”ソングや“TEAR”ソングを渇望する長年のファンが多いことも予想できる。

アルバム『THE DREAM QUEST』
SPOT映像

ドリカムの中村正人自身もさまざまなインタビューでそれを自覚していることを語っているのだが、それでも超ポジティブな作風は一切ブレず、むしろ年々強まっている気がする。しかも、それに応じた超アクティブなステージ演出、超ファンキーな楽曲、そして超パワフルな吉田の歌唱と、あらゆる面で振り切っているのは、この混沌とした社会の中でもかき消されぬ、長期的に記憶されるような活動にシフトしたということだろうか。

その意味では、東日本大震災の時に大きく再評価されたように今後も何かが起こるたびに、ドリカムの音楽は希望の灯として、いっそう求められる時代が必ず来そうな気がする。

プロフィール
臼井 孝(うすい・たかし)
1968年京都府出身。地元国立大学理学部修了→化学会社勤務という理系人生を経て、97年に何を思ったか(笑)音楽系広告代理店に転職。以降、様々な音楽作品のマーケティングに携わり、05年にT2U音楽研究所を設立。現在は、本業で音楽市場の分析やau MUSIC Storeでの選曲、さらにCD企画(松崎しげる『愛のメモリー』メガ盛りシングルや、演歌歌手によるJ-POPカバーシリーズ『エンカのチカラ』)をする傍ら、共同通信、月刊タレントパワーランキングでも愛と情熱に満ちた連載を執筆。Twitterは @t2umusic、CDセールス、ダウンロード、ストリーミング、カラオケ、ビルボード、各番組で紹介された独自ランキングなどなど、様々なヒット情報を分析してお伝えしています。気軽にフォローしてください♪

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