【GRANRODEO インタビュー】
独特の曲構成が聴く者を刺激する
死生観を紡いだ一曲
映画『文豪ストレイドッグス DEAD APPLE(デッドアップル)』オープニング主題歌の表題曲「Deadly Drive」はシンプルなロックサウンド。一転して、カップリングにはかわいいポップナンバー「マジカル・ストーリー」を収録。ギャップが魅力の一枚になった。
「Deadly Drive」は曲全体の構成の
不思議さが気になった
「Deadly Drive」はギターをメインにしたシンプルなロックサウンドで、男臭さも感じました。
e-ZUKA
今回は、映画『文豪ストレイドッグスDEAD APPLE(デッドアップル)』のオープニング主題歌で、同じ『文豪』シリーズのアニメテーマソングとしてリリースした「TRASH CANDY」は、シンセから始まってピコピコ鳴っている曲だったので、今回は逆にギターをメインにしたシンプルな方向性で、歌はいきなりハイトーンから始まるものだったら面白いんじゃないかと思って作りました。
なるほど。ギターだけのシンプルさからも男臭さを感じたのかもしれません。イントロのギターもタイトルに“Drive”と付くだけに、車がエンジンをふかしているような。
e-ZUKA
そこは徐々にテンポが上がっていくんですけど、レコーディングでそういうことをやるのは初めてでしたね。ライヴでやるなら顔を合わせながら演奏するので、それほど難しくはないですけど、レコーディングではバラバラにクリックを聴きながらやるので、それで息を合わせたりグルーブを出すのが大変で、そこは少し難しかったかな。
サビのメロディーが独特ですね、途中で速くなる感じで。
e-ZUKA
自分で作っておきながら、なかなか慣れないですよね(笑)。たぶん2番のサビは聴いててしっくりくると思うんですけど。だから、1番も2番と同じようにテンポを倍にしたほうがいいんじゃないかと思ったんだけど、スタッフから“ちょっとした違和感があったほうがいいんですよ”とアドバイスをもらってこうなりました。聴いている人を落ち着かせないっていうのかな。タイアップの曲はこういう細かい仕掛けが毎回あります。
Bメロでは早口で歌っているところもありますが。ラップみたいな感じというか。
e-ZUKA
ラップまではいかなくて、メロディーなのかしゃべっているのか、その中間的な感じで歌ってもらってる。
KISHOW
実際に歌うと、そこまで早口には感じなかったかな。それより僕としては、この曲全体の構成の不思議さが気になりましたよね。A→B→C→A→A→2A→2B→2Cみたいな感じは、今までなかった。それに、ド頭がすごく高いところから始まるし。“独特な曲構成の曲”という印象が強いです。
e-ZUKA
ここは映画制作サイドからの要望もあったんですよね。普通のTVアニメのテーマソングは89秒で、まず89秒バージョンを作って提案するんですね。でも、今回は映画だから3分30秒という指定があって。先方からも“せっかく3分30秒あるから構成を凝ってほしい”と要望をいただいて。それで、情報量を多くしようと思って作っていったら、こういう構成になりました。あと、最近はスタッフから勧められて最近の若手バンドやアーティストの動画を観るんだけど、今の人たちは構成とか理論とか関係なく、めちゃくちゃやってて、でもそれがカッコ良いと思う曲もたくさんあるんですよね。そういうものから刺激を受けた部分も結構ありました。
こういう変わった構成の曲を初めて歌う時は、最初は歌いにくさとかがあったりしますか?
KISHOW
そういうのはないです。今までと違うタイプの曲でも自分で歌詞を書くから、言葉を曲にはめていくうちに自然と曲が体に入っていくんですよね。だから、実際にレコーディングで歌う時はすでに自分のものになっていて、どんな曲でも歌いにくさを感じたことはないです。“僕は生まれてこのかた、歌を難しいと思ったことはない!”。
カッコ良い(笑)。
作詞の面ではどうでしたか?
KISHOW
先方のプロデューサーから“作詞のヒントとしてシナリオはいります?”と訊かれたので、“じゃあ、ぜひ!”と読ませていただいて書きました。こういうキャラクターが出て、こういう流れで、こういう終わり方なんだなと、何となく頭にある状態だったので、すぐに言葉や歌詞のテーマはイメージできて。だから、曲ができた時はすでにイメージがあったので、言葉をどんどん配置していくような感じでしたね。生きるだ死ぬだの死生観みたいなものをテーマとして、そこを掘り進めていきました。
主人公の中島 敦の視点にこだわったわけではないと。
KISHOW
そうではないですね。俯瞰から今回の作品を見て、大枠でテーマをとらえているというか。
死地に向かうことは分かっているけど、でも進まなければいけない時があるみたいな。
KISHOW
うん。まぁ、死の淵まで絶望したり失望したりした中に…使い古された言い回しで言うと、闇の中にひと筋の希望の光を見い出すこともある。僕はそういうことはあまり経験したことはないけど、そういう歌詞なのかもしれませんね。
真っ暗なハイウェイで車のヘッドライトが闇を照らして、進む道を示しているみたいな感じも浮かびますね。
タイトルの“Deadly Drive”は、どんなところからイメージを広げて?
KISHOW
映画の内容自体、死と生のコントラストが映えていると思ったし、“◯◯Alive”みたいな“生”の方向でも良かったけど、映画のタイトルが“文豪ストレイドッグス DEAD APPLE(デッドアップル)”だし、全体に死を匂わせる内容だなと思ったのもあって、このタイトルにしました。言ってしまうと、昭和のプロレスの技名ですけどね(笑)。上からドンって投げるだけの技だけど、ディック・マードックとかの外国人レスラーがよくやってたんじゃないかな。それもありつつ、曲自体にドライブ感があったし。
じゃあ、そのうち“パイルドライバー”という曲とかも。
KISHOW
ブレンバスターとかオクトパスホールドとかもあるし。昭和プロレスのネーミングセンスはすごいですよね(笑)。コブラツイストなんか好きでしたよ!
アントニオ猪木さんですね!
KISHOW
そうそう。コブラツイストは一番好きな技で、よく弟にかけて遊んでましたね(笑)。でも、プロレスの固め技って、かける側とかけられる側が協力し合わないと成立しなくて、そこが昭和プロレスの良さでもあり…。
KISHOW
この曲もe-ZUKAさんと僕が協力し合って完成させることができた、と(笑)。