OBLIVION DUST、
結成20周年ツアーを完遂
OBLIVION DUSTがデビュー20周年という節目に全20カ所に渡って開催したツアー『20th Anniversary OBLIVION DUST "Zodiac Way Tour 2017-18"』が、2月9日にマイナビBLITZ赤坂でファイナル公演を迎えた。
「このツアーで、オレのステージの姿勢っていうか立ってる時の気持ちが、すごい変わったんだよね」。
VocalのKEN LLOYDは語る。「これまでショーが始まっちゃえば周りで何が起きてようが、それこそお客さんがどういう反応してようが構わなかったんだよ。自分さえ集中していれば」。ある種のフロントマンとしての自信と、バンドが出すサウンドに対する信頼感からか、様々なステージ上で巻き起こる出来事(それこそアクシデントも含んで)に対して、無関心とも言えるほど我が道を行っていた彼が、このツアーから自分に芽生えたある変化を喜んでいるようだった。バンドと同じくプロとしての活動が20年となる、このフロントマンが迎えた新たな境地とは何なのか? そしてそれはステージにどんな変化をもたらしてくれるのか?
これまで締めとして最後に演奏されることが多かった「Sink The God」からショーはスタート。この曲が始まるといよいよ最後の曲だとずっと刷り込まれてきた観客が驚きと共に、いきなり背中を突き飛ばされたかのように音の渦に巻き込まれていく。彼らは結成当初から心地よい裏切りを与えることを常に意識してきたバンドだ。それは音楽的なアプローチやデザインワークにおいても顕著であり、その上でバンドのカラーにまとめ上げてみせる力量とバランス感覚がある。CDなどの音源で聴くと様々なアプローチを仕掛けているのだが、いざショーで演奏するとその全てが一つのバンドのグルーヴに見事に昇華されていく。つかみ所が無いと思われがちな彼らだが、ステージでのパフォーマンスを見ると全くブレがなく、あっさりと彼らの手中に収まってしまう感覚だ。「もちろん、そういったことは自分なりに計算するんだけど、このバンドってホントにメンバーの考え方がバラバラで、それをお互いに認めあってるから、最後には自然と良いアイディアしか残らないみたいなところがあると思う」的確な表現でそれに答えてくれたのは、サウンド・プロデューサーでもあるGuitarのK.A.Zだ。
「Syndrome」「Remains」と新旧織り交ぜつつも余韻を感じる暇もなく、次々畳みかけてくるのはこのバンドの定番なのだが、ここで一度ブレイクの後に「In Motion」が始まる。この曲は今回のツアーではショーの開始に配置されることが多かった、非常にOBLIVION DUSTらしい勢いがある曲だ。観客も自然と2度目のスタートを無理矢理けしかけられたかのように、熱狂度が高まっていく。
「オレはこのバンドの本来持っている野生的な面というか、体温とか呼吸をいかに感じさせるかってことが、自分の役目だと思ってるから」機材の進化により、ライヴでもクオリティの高い音像が再現されるようになればなるほど、ただそこでメンバーが実際に演奏しているということ以上のパフォーマンスをどう表現するか?についてBassのRIKIJIには確固たるスタンスがあるようだ。「演奏自体のクオリティが上がっていくのは長年やってるから当然なんですけど、それだけじゃあ全く面白みがないんです、バンドって」聞き方によっては物議をかもし出しそうな発言を、あっさり言い切るのもRIKIJIの魅力ではあるのだが、彼の言いたいことはもう少し深い意味合いが含まれていた。「そもそも音楽は演奏者の感情を伝えるために出来たんだから、今オレがどんな気分でこの曲を演ってるのか?が大事で。当然その感情には激しいものが含まれるし、それは毎回大なり小なり違ってたりするのがライヴなんです」
しっとりと聴かせる「All I Need」を中盤に聴かせた以外は、常に緩急をつけながらも独自のグルーヴで場内を揺らせ続け、その高密度に圧縮されたかのような音の塊が次々と吐き出されていく。最新アルバムの『DIRT』から「Evidence」「Lolita」「Death Surf」と、ここから終盤まで怒涛の連打が始まる予感の中、「あと20年よろしく」と言うまさかのKENのMCに大きな歓声が上がる。「今回のツアーで、本当にお客さんの顔が良く見えるようになったというか、みんなの細かい反応まで見ながら演るようになったんだよね。その曲ごとにどう暴れたいのか分かるようになったら、自分がその都度どう変化をつけて煽ったらいいのかってアイディアが次々出てきたっていうか」結成20年にして、今更と言うべきか、まさかと言うべきか。KENを多少なりとも長く見てきている人にとって、この変化がどれほど大きなものかはお分かり頂けると思う。それほどまでにステージでは直球勝負にこだわり、そこにアイデンティティすら感じさせるほどストイックかつ不器用なフロントマンが、全力でパフォーマンスするという意味合いに新たな次元を追加したかのような話だ。OBLIVION DUSTのライヴは本当に幸せな空気に包まれている、と言う多くのファンの声が昨年から高まっており、その音楽性からは到底想像がつかないと感じる方も多いだろう。しかしいつの時代でも優れたバンドは、相反するベクトルを巧みに織り交ぜることで、音楽の独自性を高めてきた。OBLIVION DUSTもいよいよその風格と共に次なるステージへとっくに踏み出していたのだ、と感じさせられる。
デビューアルバムから幾度となくアレンジを重ねながら、ライヴの定番曲に居座り続ける「24 Hour Buzz」でショーは幕を閉じた。熱狂冷めやらぬ中、ギターのフィードバックがいつまでも響き渡る場内のモニターに「緊急告知」の文字が映る。自ずと悲鳴と歓声が入り混じった声が場内に響く。モニターには故hideの4月に行われるメモリアル・イベントへの出演決定の文字。「時代の扉が開いた」という言葉を添えていち早くこのバンドの可能性に言及し、キャリアをスタートさせたばかりのOBLIVION DUSTを公私ともプッシュしてくれたのは、他ならぬ今は亡きhideであった。いよいよ2018年、待ちに待たれた巨大フェスへの出演を控え、どんな光景を大観衆の前で見せてくれるのか。今のOBLIVION DUSTの充実ぶりと勢いを考えると、まだ何かやらかしてくれそうな気配が、ますます濃くなっているのが感じる。彼らが20周年以後に描く企みはどんなものなのか? 同じく発表された夏のツアーと共に期待したい。
photo by 田中和子(TANAKA KAZUKO)
VocalのKEN LLOYDは語る。「これまでショーが始まっちゃえば周りで何が起きてようが、それこそお客さんがどういう反応してようが構わなかったんだよ。自分さえ集中していれば」。ある種のフロントマンとしての自信と、バンドが出すサウンドに対する信頼感からか、様々なステージ上で巻き起こる出来事(それこそアクシデントも含んで)に対して、無関心とも言えるほど我が道を行っていた彼が、このツアーから自分に芽生えたある変化を喜んでいるようだった。バンドと同じくプロとしての活動が20年となる、このフロントマンが迎えた新たな境地とは何なのか? そしてそれはステージにどんな変化をもたらしてくれるのか?
これまで締めとして最後に演奏されることが多かった「Sink The God」からショーはスタート。この曲が始まるといよいよ最後の曲だとずっと刷り込まれてきた観客が驚きと共に、いきなり背中を突き飛ばされたかのように音の渦に巻き込まれていく。彼らは結成当初から心地よい裏切りを与えることを常に意識してきたバンドだ。それは音楽的なアプローチやデザインワークにおいても顕著であり、その上でバンドのカラーにまとめ上げてみせる力量とバランス感覚がある。CDなどの音源で聴くと様々なアプローチを仕掛けているのだが、いざショーで演奏するとその全てが一つのバンドのグルーヴに見事に昇華されていく。つかみ所が無いと思われがちな彼らだが、ステージでのパフォーマンスを見ると全くブレがなく、あっさりと彼らの手中に収まってしまう感覚だ。「もちろん、そういったことは自分なりに計算するんだけど、このバンドってホントにメンバーの考え方がバラバラで、それをお互いに認めあってるから、最後には自然と良いアイディアしか残らないみたいなところがあると思う」的確な表現でそれに答えてくれたのは、サウンド・プロデューサーでもあるGuitarのK.A.Zだ。
「Syndrome」「Remains」と新旧織り交ぜつつも余韻を感じる暇もなく、次々畳みかけてくるのはこのバンドの定番なのだが、ここで一度ブレイクの後に「In Motion」が始まる。この曲は今回のツアーではショーの開始に配置されることが多かった、非常にOBLIVION DUSTらしい勢いがある曲だ。観客も自然と2度目のスタートを無理矢理けしかけられたかのように、熱狂度が高まっていく。
「オレはこのバンドの本来持っている野生的な面というか、体温とか呼吸をいかに感じさせるかってことが、自分の役目だと思ってるから」機材の進化により、ライヴでもクオリティの高い音像が再現されるようになればなるほど、ただそこでメンバーが実際に演奏しているということ以上のパフォーマンスをどう表現するか?についてBassのRIKIJIには確固たるスタンスがあるようだ。「演奏自体のクオリティが上がっていくのは長年やってるから当然なんですけど、それだけじゃあ全く面白みがないんです、バンドって」聞き方によっては物議をかもし出しそうな発言を、あっさり言い切るのもRIKIJIの魅力ではあるのだが、彼の言いたいことはもう少し深い意味合いが含まれていた。「そもそも音楽は演奏者の感情を伝えるために出来たんだから、今オレがどんな気分でこの曲を演ってるのか?が大事で。当然その感情には激しいものが含まれるし、それは毎回大なり小なり違ってたりするのがライヴなんです」
しっとりと聴かせる「All I Need」を中盤に聴かせた以外は、常に緩急をつけながらも独自のグルーヴで場内を揺らせ続け、その高密度に圧縮されたかのような音の塊が次々と吐き出されていく。最新アルバムの『DIRT』から「Evidence」「Lolita」「Death Surf」と、ここから終盤まで怒涛の連打が始まる予感の中、「あと20年よろしく」と言うまさかのKENのMCに大きな歓声が上がる。「今回のツアーで、本当にお客さんの顔が良く見えるようになったというか、みんなの細かい反応まで見ながら演るようになったんだよね。その曲ごとにどう暴れたいのか分かるようになったら、自分がその都度どう変化をつけて煽ったらいいのかってアイディアが次々出てきたっていうか」結成20年にして、今更と言うべきか、まさかと言うべきか。KENを多少なりとも長く見てきている人にとって、この変化がどれほど大きなものかはお分かり頂けると思う。それほどまでにステージでは直球勝負にこだわり、そこにアイデンティティすら感じさせるほどストイックかつ不器用なフロントマンが、全力でパフォーマンスするという意味合いに新たな次元を追加したかのような話だ。OBLIVION DUSTのライヴは本当に幸せな空気に包まれている、と言う多くのファンの声が昨年から高まっており、その音楽性からは到底想像がつかないと感じる方も多いだろう。しかしいつの時代でも優れたバンドは、相反するベクトルを巧みに織り交ぜることで、音楽の独自性を高めてきた。OBLIVION DUSTもいよいよその風格と共に次なるステージへとっくに踏み出していたのだ、と感じさせられる。
デビューアルバムから幾度となくアレンジを重ねながら、ライヴの定番曲に居座り続ける「24 Hour Buzz」でショーは幕を閉じた。熱狂冷めやらぬ中、ギターのフィードバックがいつまでも響き渡る場内のモニターに「緊急告知」の文字が映る。自ずと悲鳴と歓声が入り混じった声が場内に響く。モニターには故hideの4月に行われるメモリアル・イベントへの出演決定の文字。「時代の扉が開いた」という言葉を添えていち早くこのバンドの可能性に言及し、キャリアをスタートさせたばかりのOBLIVION DUSTを公私ともプッシュしてくれたのは、他ならぬ今は亡きhideであった。いよいよ2018年、待ちに待たれた巨大フェスへの出演を控え、どんな光景を大観衆の前で見せてくれるのか。今のOBLIVION DUSTの充実ぶりと勢いを考えると、まだ何かやらかしてくれそうな気配が、ますます濃くなっているのが感じる。彼らが20周年以後に描く企みはどんなものなのか? 同じく発表された夏のツアーと共に期待したい。
photo by 田中和子(TANAKA KAZUKO)
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