【連載】
OLDCODEX Painter YORKE.
『WHY I PAINT
~なぜボクがえをかくのか~』
- 第60回 Imagine / John Lennon -
なんだか昔大人が言ってた意味が少しだけ、
ほんの少しだけ理解できるようになっちゃったよ。
今年も街が慌ただしいよ。
だから僕はなるべく慌てずにスローモーションで
街を眺めるようにしてる。

高速道路を降りて信号待ちしている時の話。
シャッフルで再生してる車のスピーカーから
“想像してみろ”ってジョンレノンが歌い出して、
とても不思議な感覚に襲われたんだ。
車のウィンドウの向こうはもう10年前の景色。
ぼくは10年後、この運転席からハンドルを掴んでる。
歩く人、歩道橋の看板、慌ただしい交差点、
となりで退屈そうに信号待ちしてる人、薄曇りの空。
そのすべてにノスタルジーなフィルターがかかって見える。
オレは自分の顔を触ってみたりした。
いつもと変わらない質感で、まだ年は取ってないみたい。
右手に刻んだ星の色も今朝と変わらない。

なんだかうまく思い出せないや。
それくらいオレの人生はいろんな色で染まった。
最初に塗った色はなんだったっけ。
親父と最後にキャッチボールをした日から
10年はまだ過ぎていないはず。
あのフェンスに囲まれた小さなスペースで
オレが投げるボールをうまく取れなくて、
彼の投げるボールはオレが子どもの頃よりも
スローモーションみたいに遅かった。
9才の頃、親父が買ってくれたグローヴの匂いを
クリスマスになると思い出す。あの日を想像してみる。
そうすると街のイルミネーションなんかより
よっぽど綺麗な風景がある感じがする。
だけど、今見えてる色よりも彩度は浅くて
手を伸ばしても全然届かない風景。
10年後、この感情を忘れちゃうかもしれない。
だからここにぼくの感情をしっかり書いておくよ。
再び想像できるかい?
10年後の君へ。メリークリスマス。
YORKE. / December, 2017