【Nulbarich インタビュー】
2017年を駆け抜けたNulbarichが
新作で見出したさらなる飛躍の布石
曲を作る時の合格ラインは
自分がアガるか、アガらないか
さっきおっしゃった、さらなる挑戦はどんなところに表れていますか?
アルバムも含め、これまでリリースしてきた3枚は、温かいイメージのやさしさが入っている曲が多かったんですけど、今回はまた別の感情が見える作品になっていると思います。「In Your Pocket」もビートが効いていたり、強めのリフが入っていたりして。もともとリフものが好きなので、サウンド面でもどこか耳に残るものは必ず入れたいと基本的に思っているんですけど、今回は何て言うのか…今まで出していなかった感情がサウンドにも、歌詞にも、歌のテイストにも入っているのかな。“これまでと違う”と言う人がもしかしたらいるかもしれないぐらい。ただ、そもそも僕たちってジャンルを決めて、こういうコンセプトでっていうバンドではないんですよ。メンバーそれぞれに経験してきたものをそれぞれに持ち寄って、ケミストリーを起こして、何ができるか楽しむバンドなんですよ。だから、今回は喜怒哀楽の喜、次は怒っていうことでもないし、みんなで感情を掻き鳴らしながら、今回の作品が出来上がった時に“こんなのなかったね”って。感情も含め、いろいろなものを全員が一個のミキサーに入れるんですけど、出来上がりは誰も想像できていないんで、新たな自分たちのかたちを知ることができたっていう驚きはありましたね。
もっと確信的に作っているんだと思っていました。
唯一の共通点がブラックミュージックで、それ以外は好きなアーティストもそれぞれに違うし、普段聴く音楽も全然違うし。だから、ケミストリー待ちみたいなこともかなりあるんです。曲の作り方も僕が曲のラフを作ることもあるし、セッションしたものを持ち帰って、僕が曲にすることもあるし。今、メンバーとはすごい一緒にいるんで、“あいつ、ライヴでこんなフレーズを弾いてたな”とか、“あいつ今、こんなブームなんだ”とか、そこでいろいろな種が生まれるんですよ。それをしっかり摘んでいって、曲の器をまず作って、みんなの意見を聞きながらっていうやり方が多いですね。ライヴでもその時のテンションでアレンジが変わることがあるし。だから、作品だけを聴いている人は変わったと思うかもしれないけど、今回のEPの節はすでにライヴに出ていたと思うんですよ。今回の曲が出来上がった時は、“あっ、こんなことやるんだ!?”って言われたんですけど、経験したことから作っているものがほとんどだから、僕ら的にはすごくナチュラルで、超リアルタイムな感情が入っていると思います。
その感情を言葉で表すとしたら?
今、僕らって、今まで分からなかったことに気付いていっている段階だと思うんですよ。その分、可能性があるってことなんですけど、もちろん不安もありますよ。ただ、バンドを組んだ時、心の中で無敵だと思っていた僕らがその後、現実を知ったり、予想外のことが起きたりする中で、感情が豊かになったところが出ているんじゃないかな。この1年で新たに発見した感情が詰め込まれている。だから、聴き返すと、その時に経験したことを歌詞にしているから、自分の勝手な思い出ソングにもなっているんですよね。
「In Your Pocket」のイントロのリフは無敵ですね。
最初、作った時はそう思ってました(笑)。今は、ありがとうございますと思っています。作った時は“無敵だな。勝った!”と思いましたけど、今はその驕りもちょうどいいサイズになっています(笑)。でも、できた時は踊り狂いました。アガるなって。
曲を作る時、アガることは欠かせない要素ですか?
そこが大前提というか…しっかりしたコンセプトのあるバンドだと思われがちだと思うんですけど、曲を作る時の合格ラインは自分がアガるか、アガらないか。アガる曲じゃないとリリースしないです。「In Your Pocket」のサビメロとリフは、自分の中の合格ラインを超えた気がしました。
その「In Your Pocket」はNulbarichらしいアンセミックな曲だと思うのですが、ヒップホップソウルっぽい「Spellbound」とブギの要素もある「Onliest」は挑戦的というか、かなり攻めてきたという印象でしたが。
「Spellbound」は、それこそ今までにない感情が入っている曲だと思うんですけど、ライヴで結構エモくなる時の感情を落とし込んだんです。もともと持っていたものがナチュラルに出てきたんですけど、今までのやり方に落とし込んでいたらできていなかった曲なんじゃないかな。新しいことに挑戦するのってワクワクするじゃないですか。しかも、それが上手くいった時はなおさら嬉しいし、ライヴでやるのも楽しみになるし。自分たちがその時にフレッシュに感じているものを取り入れるというワクワクが、今回の3曲がこういう曲になった一番の理由だと思うから、ほんと、その時の刹那をぶち込んだEPだと思います。「Onliest」はかなりシンプルな曲なんですけど、理想に近い音色の数…迷うと音色の数って増えると思うんですけど、この曲はいい感じで隙間もあって、理想の落としどころになりました。
「NEW ERA」のジャジーなリミックスバージョンを収録したのは、どんなアイデアから?
単純にこのアレンジをやりたかったんです。ローズピアノとウッドベースとミニマムなドラムという編成が本当に好きで、その3つでやってみたいというのが夢のひとつだったんですよ。それを「NEW ERA」でやってみたら、はまったんです。歌も録り直したので、リミックスではなくて、もはや別曲なのでは?っていうのはあるんですけど(笑)、この柔軟性はこのバンドならでは。僕ら、ライヴの場所や環境によってメンバーを入れ替えたりするんですけど、メンバーが変わると、当然、音も変わる。この1年、そういうケミストリーのトライもやってきたわけですけど、今回の「NEW ERA」の化け方や柔軟性は、今後の布石になるという気はしています。今、ライヴに挑む姿勢もアレンジも含め、超自由なんですよ。
より一層、今後が楽しみになりますね。
もし変な方向に進んだら言ってください。でも、その時は“進化です!”って言い張るかもしれないです(笑)。変わっていくことが楽しみというか、収まることをしないほうがカッコ良いと僕は思っているんですけど、それには常にアップデート、アップデートして、自分たちの音楽を塗り替えていくのがアーティストとしての僕の生き方だと思っています。
取材:山口智男