THE BACK HORN × 下北沢SHELTER
- the Homeground 第24回 -

ライヴ活動を行なうアーティストの拠点となるライヴハウス。思い入れ深く、メンタル的にもつながる場所だけに、当時の想いや今だからこそ話せるエピソードなどを語ってもらった。もしかしたら、ここで初めて出る話もあるかも!?

L→R 岡峰光舟(Ba)、山田将司(Vo)、菅波栄純(Gu)、松田晋二(Dr)

L→R 岡峰光舟(Ba)、山田将司(Vo)、菅波栄純(Gu)、松田晋二(Dr)

THE BACK HORN プロフィール

ザ・バックホーン:1998年結成。“KYO-MEI”という言葉をテーマに、聴く人の心を震わせる音楽を届けている。01年にシングル「サニー」をメジャーリリース。17年には宇多田ヒカルとの共同プロデュース曲「あなたが待ってる」が話題に。結成20周年となる18年、3月にメジャーでは初となるミニアルバム『情景泥棒』を、10月にはインディーズ時代の楽曲を再録した新作アルバム『ALL INDIES THE BACK HORN』を発表。また、ベストセラー作家・住野よるとのコラボレーション企画も注目を集め、2021年末にはフィジカルとして約4年5カ月振りとなる待望のシングル「希望を鳴らせ」をリリース!THE BACK HORN オフィシャルHP

“ここでライヴをやりたい”って気持ち
が原動力になっていた

結成20周年を迎えることを記念して、初めてワンマンライヴをした下北沢SHELTERで2018年1月21日に招待制ライヴを行ないますね。

松田
ベストアルバムを盛り上げる施策として、ライヴも連動して盛り上げられたらいいなと思って。僕らはCDを買っていただいた人の中からライヴに招待するような企画をあまりやっていなかったので、せっかくみんなで作る20周年というタイミングだし、インディーズ時代に初めてワンマンライヴをやった下北沢SHELTERで招待ライヴをやりましょうということになりましたね。

当時は下北沢を拠点にライヴをしていましたけど、ワンマンライヴまでにも下北沢SHELTERには結構出演してました?

松田
そうですね。首が切られる直前までいきましたけど…
全員
(笑)。

“首が切られる直前”とは?

松田
ノルマの分お客さんが呼べないと、夜のライヴに出られないんですよ。下北沢SHELTERってやっぱり下北を中心に活動してると、“あそこで一度はやってみたいな”という憧れのライヴハウスで。その代わりにオーディションに受かって出たからには、ライヴの内容もそうだけど、動員も含めてちゃんと活動できていなければ厳しいってことを、当時の店長の西村さんにも言われました。西村さんはとにかくTHE BACK HORNはいいバンドだから出ろ出ろって言ってくれてたんですけど、動員が及ばなかった時に呼ばれて、“次もお客さん5人ぐらいのチケットノルマだともう厳しいかな…”って言われたんですよ。それがライヴの前だったので、栄純と将司が“今から下北の街で弾き語りをしてチケットを売ってきます!”って言ってリハと本番前の間に行ったら、チケットが15枚とか売れたんだよね。それでノルマが完売したんですけど、そこからなんかバンドとは別に、ふたりの弾き語り癖が…(笑)。
山田
小銭稼ぎみたいな感じかな(笑)。
岡峰
そう言えば、その頃将司が『一平ちゃん』をめちゃくちゃ食ってたっていう噂があったけど。
山田
グレープフルーツジュースと炭水化物が持久力にいいっていうので。
岡峰
米食えばいいんだけど、なぜか『一平ちゃん』っていう。『ペヤング』よりも『一平ちゃん』のほうが炭水化物が多かったんだよね?
山田
数字見たらね(笑)。

他にオーディションを受けていた時の思い出は?

松田
昼にASIAN KUNG-FU GENERATIONと一緒にオーディションライヴを受けて、ドラムの(伊地知)潔くんがめちゃくちゃ俺らのステッカーを買ってくれた(笑)。
岡峰
なんと言うか…今思い出してもありがたいよね。
松田
ありがたかった(笑)。その後、ライヴに出られることになったんですけど、とはいえ、やっぱり全然バンドの動員力もなかったので、お客さんもトータルで20人とか…20人いたらいいほうだったかな?
菅波
噂では、どんどん友達が減っていったっていう…(笑)。
岡峰
最初のほうは友達が来てたけど、友達だけの動員に頼らないようにしようとしたらどんどん減った(笑)。
松田
しかも、自分でそういうことを言ったんですよね。“ノルマのために電話をして来てもらうってどうなんだろう?”って。
菅波
そうだった。意味あるのか?みたいなね。ぱったり連絡をとらなくなったら、案の定その友達も来てくれなくなった(笑)。専門学校で結成したので、その専門学校での友達がみんな盛り上げに来てくれてたんですよ。

2000年6月に下北沢SHELTERで初ワンマンをした時はどういった想いがありましたか?

松田
ちょっとずつちょっとずつだったけど、常に来てくれるお客さんが増え始めてきた時期で。そこに専門学校時代の友達も呼び込んで、なんとか売り切ったっていう感じでした。でも、やっぱり自分たちの楽曲だけで丸々やれるライヴっていう喜びと…新たな次元というか、“これが本当のライヴなんだな”って。これをずっとキープというか、下北沢SHELTERでワンマンを常にやれるバンドでいたいなと思いました。
山田
地元の友達が結構20人くらい来てくれましたね。ちょうどそのタイミングで高校の時の友達がひとり亡くなったので、「さらば、あの日」って曲を歌ってる時に涙しそうになった記憶があります。

菅波さんはどうでしたか?

菅波
俺は結構いっぱいいっぱいでしたね。多分、お客さんのほうもあんまり向けてなかったんじゃないかな? それまでは下北沢SHELTERの客席からステージを憧れの眼差しで観ていた側だったので。いっぱいいっぱいだったけど、めちゃくちゃ嬉しかったですね。スタート地点に立った感があったというか。
山田
打ち上げの時に初めて客席がどういう作りになってるかようやく分かったくらい、俺も本番中に客席を見たことがなかったかも。ステージの床のシマシマ(市松模様)を見ながら、“ここのハコもシマシマだ…”って思ってた(笑)。

初ワンマンの時はまだ岡峰さんがいなくて、この4人では2008年に行なっていますね。

松田
『裸足の原点』だっけ?
岡峰
日本武道館の直前にやったね。けど、多分俺がちょうどメンバーになる時のタイミングが2002年の12月1日とかに下北沢SHELTERだったんですよ。ART-SCHOOL、SPARTA LOCALS、THE BACK HORNのスリーマン。
全員
あぁ~~!
菅波
最高だね、メンツ。
松田
そういうところでも、いろいろと思い入れのある場所なんですよね。
岡峰
客としても下北沢SHELTERはめっちゃ行ってたもんなぁ。ライヴは観てないけど、打ち上げに行くとかもあったし。

先ほど松田さんが“下北沢SHELTERでワンマンを常にやれるバンドでいたいと思った”とおっしゃっていましたけど、2008年のワンマンではそこからひと回りもふた回りも大きくなって戻ってきたわけですよね。

松田
10周年で日本武道館が決まったタイミングで。2000年の初ワンマンのあとも何回か下北沢SHELTERでのワンマンをやらせてもらいながら、次は新宿LOFT、渋谷CLUB QUATTRO…ってバンドの歩みとともにライヴの動員も増えていって。日本武道館の直前ではあったんですけど、毎回勝負だと思っていたので、下北沢SHELTERもそんなに差はなかったです。心の中で“ここから始まったんだな”とか、“ここが憧れで始まったバンドが10年続いたんだな”っていうのを噛み締めたライヴでしたね。
岡峰
やってる時の感情は一緒なんですけど、手を伸ばしたら後ろまで届きそうな感じの一体感が良かったですね。昔の俺だったらその距離すらも見渡す余裕がなかったけど、その頃にはもう“やっていける”っていう自信がありましたね。

下北沢SHELTERでは当時の店長の西村さんによくお世話になっていたとのことですが。

松田
はい。今は珈琲屋さん?
岡峰
新代田FEVERで珈琲屋さんしてる(笑)。

出会いはいつ頃でしたか?

松田
下北沢SHELTERにデモテープを持って行った時だったので、結成してすぐだったと思います。インディーズのCDを出すきっかけになった人…後々の事務所の社長なんですけど、そこからの紹介もあって。一応オーディションは受けさせてあげるけど、判断はしっかりするよっていう感じでデモテープを受け取ってもらったんです。西村さんは毎回コメントをくれてたんですけど、“ああしろ、こうしろ”っていう上からじゃなくて素直に感想を言ってくれました。でも、しっかりライヴハウスの店長として、ダラダラしちゃいけないことは伝えてくれるし、その辺がものすごく信頼できる…店長でありながらも音楽好きの仲間みたいな。もう一方ではこのバンドがもっと良くなるにはどうしたらいいかってことを考えてくれる人だったので、すごく信頼感がありましたね。頼りっぱなしというか、西村さんに頼ってばっかりだった(笑)。

西村さんからはどのように思われていたと思いますか?

松田
やさしくしてくれてたものの、他にも出たいアーティストはいっぱいいるし、ブッキングとかも動員が伸びないとそんなに優遇できないっていうのがあったので、その狭間でTHE BACK HORNを見ててくれたんじゃないかな? いつか言わないとっていうのが、さっき話した“次入らなかったらもう出られないよ”って最終宣告だったんだと思うし。なんだかんだ食いつないだっていうか、弾き語りでチケット売れた!ってふたりが帰ってきてから、ちょっとずつ上手いこと環境が変化していったので、下北沢SHELTERで続けることができましたけど。

出会ってからの西村さんに対しての印象で変わったことは?

松田
今は…珈琲屋ですよね(笑)。
岡峰
すごいよく会うんですよ。
山田
よく会うんだ(笑)。
松田
最近はそんなに下北沢SHELTERではやれてないので、ホームグラウンドというよりは原点というか、始まりとなった憧れの場所みたいなほうが近いんです。最近ゆっくりと話はできてないんですけど、新代田FEVERでライヴをやらせてもらった時には、“久しぶりだね”って話しました。
岡峰
『スガフェス!』のケータリングにもいましたね。珈琲屋さんで。
山田
気が付くとケータリングによくいるよね。
松田
西村さんも出会った頃は“下北沢SHELTERの店長”っていう、ライヴハウスに情熱を注いでる感じでしたけど、もう20年近く時間が経っていろいろな音楽との付き合いとかライヴハウスとの付き合いとかも変わってきたのかなって思いますけどね。
山田
まぁ、でも音楽に対する愛は変わってないんじゃないの。

下北沢SHELTERと他のライヴハウスを比べて、違うと思うところはありますか?

松田
ここでやれたらひとつレベルアップしたと思えるような場所だったので、その存在ってやっぱりすごいと思います。“ここでライヴをやりたい”って気持ちが原動力になっていたんで。結構デッドな作りで、スピーカーから出る音も生々しいというか、下北沢SHELTERは生音、アンプから出る音とかも混ぜながら作る音だったのを覚えています。
山田
誤魔化しは効かない感じだもんね。
松田
逆にそのバンドの誤魔化しの効かない音がそのままパワーとして客席に伝わる感じもあるし。しっかりバンドの演奏で固めてやらないと伝わらない場所だったなって今ふと思います。

来年1月のライヴはどういったものになりそうですか?

松田
かなり20年の味の利いたライヴに…
岡峰
急にそこの表現ざっくりしたな(笑)。
松田
まぁ、やっぱり20年前よりもいろんな場所でライヴを経験してきて、もっといろいろな視野でライヴという空間を見られるようになったと思うので、今だからこそ伝えられる演奏と人間的な力で魅せられるライヴになったらいいなと思ってます。

結成20周年を記念したベストアルバム『BEST THE BACK HORN II』のリリースにともなってファンによる楽曲投票もあったので、そういう点でも期待できるセットリストになるんじゃないかと楽しみです。

松田
これから考えるんですけど、内容的にも喜んでもらえるような感じにしたいです。下北沢SHELTERが一番THE BACK HORNの歴史としても思い入れがありますし、初めてワンマンをやって、確信を持って“これからもっともっとやっていくぞ”っていう気持ちになったし。自分たちが下北で頑張ってきたうちの達成感のひとつみたいなライヴハウスなんです。…ここまで話して思ったんですけど、下北沢SHELTER以外にも下北沢Club Queの二位さんにもとにかくお世話になりました!

二位さんとはどのような思い出がありますか?

松田
下北のライヴハウスでやり始めた頃にデモテープを持って行ったら、すぐに“6月にライヴがあるからもうこれに出なよ”って、怒髪天の増子(直純)さんや、当時マーブルダイヤモンドってバンドの倉山(直樹)さんが企画するイベントにいきなり入れてもらったりとかして。その時のTHE BACK HORNはどうしたら動員が増えるのかっていう動員問題を抱えてたんですけど、二位さんは“とにかく50枚でも100枚でもフライヤーを持って、毎日俺のところに来い”と。それで2週間通って、その後も土日とか通いました。そういういろはを教えてくれたのは、二位さんだったなと思いますね。
菅波
二位さんに訊くと、最初に“どうやったら俺たち売れますか?”って訊いてきたって言われるけどね。
松田
そんなゼロの状態から2週間…。
菅波
“また来てる…”みたいな。しつこいね(笑)。
松田
すがり癖があるんです(笑)。

(笑)。先ほどの路上ライヴの話もあるし、下北沢という街との縁が深いということですね。

松田
自分たちの初企画は下北沢屋根裏だったりするし、下北沢SHELTERをはじめとして、下北全体で言えることかもしれない。だから、次の下北沢SHELTERでのワンマンも想いがこもった感慨深いライヴになると思います!

下北沢SHELTER

撮影:Kana Tarumi

撮影:Kana Tarumi

住所: 〒155-0031 東京都世田谷区北沢2-6-10仙田ビルB1
電話番号:03-3466-7430
HP: http://www.loft-prj.co.jp/SHELTER/

OKMusic編集部

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