【陰陽座】『陰陽座 全国ツアー2017
「頻伽の聲に応ずるが如し」』2017
年5月30日 at TOKYO DOME CITY HALL

 最新アルバム『迦陵頻伽』を引っ提げた2度目の全国ツアーは、陰陽座の過去と現在を交錯させることで進化を示し、未来への期待を見事に駆り立ててみせた。絶世の美声で鳴くという伝説上の生物名を冠した作品ゆえ、まずは表題曲で黒猫の嫋やかで神秘的な歌声がオーディエンスを魅了。その後も変幻自在に曲の主人公を憑依させる彼女の歌が核であることは昨年のホールツアー同様だが、ライヴハウスを回る今回は200曲近いレパートリーから多彩に楽曲を掘り起こし、新作と融合させながらファンの期待に応えるというテーマがあった。14年前に発表された「飛頭蛮」とアルバム新曲「轆轤首」を続けて披露したのは、その最たる例。ひと組の夫婦の物語を前者は亭主、後者は女房と視点を変えて描いた楽曲が時を超えて出会い、ひとつの命を与えられるドラマチックなさまにはまったく度肝を抜かれるほかない。男性とは思えぬ柔らかなファルセットを聴かせる瞬火(Ba&Vo)に「絡新婦」で壮絶な激情を放つ黒猫と、そこで互いに陰陽の顔を入れ替えながら威力を発揮する男女ツインヴォーカルは最強のひと言。加えて地に足の着いたアンサンブル、せめぎ合いの度を増した招鬼&狩姦のスリリングなツインギターが過去曲をより味わい深く響かせていたのも、紛れもない進化の証だろう。アンコールでは千秋楽名物“極楽地獄”で定番メタル曲を畳み掛け、それに拳と扇子で応えるオーディエンスとの魂のやり取りは、まさしくひとつの迦陵頻伽が放つ声のような美しさ。“僕たちの一歩はみなさんの一歩でもあるので、これからも一緒に歩んでください”と瞬火に言わしめたのも当然である。

撮影:平野タカシ/取材:清水素子


■ SET LIST ■

  1. 1.迦陵頻伽
  2. 2.鸞
  3. 3.生きもの狂い
  4. 4.青坊主
  5. 5.ひょうすべ
  6. 6.熾天の隻翼
  7. 7.御前の瞳に羞いの砂
  8. 8.飛頭蛮
  9. 9.轆轤首
  10. 10.涅槃忍法帖
  11. 11.鬼斬忍法帖
  12. 12.氷牙忍法帖
  13. 13.絡新婦
  14. 14.愛する者よ、死に候え
  15. 15.組曲「鬼子母神」~鬼拵ノ唄
  16. 16.吹けよ風、轟けよ雷
  17. 17.甲賀忍法帖
  18. 18.邪魅の抱擁
  19. 19.風人を憐れむ歌
  20. <ENCORE1>
  21. 1.焔之鳥
  22. 2.鳳翼天翔
  23. 3.羅刹
  24. 4.骸
  25. 5.わいら
  26. 6.がいながてや
  27. <ENCORE2>
  28. 1.蛟龍の巫女
  29. 2.雷舞
  30. <ENCORE3>
  31. 悪路王
陰陽座 プロフィール

オンミョウザ:1999年、大阪にて結成。“妖怪ヘヴィメタル”という惹句を掲げ、人間のあらゆる感情を映す“妖怪”を題材とし、道なき道を切り開く信念を“ヘヴィメタル”の名の下に貫く。正統的ヘヴィメタルを音楽性の基盤としながらも、男女ツインヴォーカルとツインリードギターによる変幻自在な表現により、日本文化に徹底的に拘った唯一無二の世界観を結成時から現在まで淀みなく展開。自主製作で2 枚のアルバムを発表した後、 2001年にシングル「月に叢雲花に風」でメジャーデビュー。以降、精力的な音源制作はもちろん、すでに全都道府県を2 周しているという事実が物語るように、生粋のライヴバンドとしても歩を緩めることなく邁進中。安易な“変化”よりも“進化”と“深化”を信条とし、“上”ではなく“前”に向かって着実に歩み続けることを最大の理念として実行する、極めて希有なバンドである。陰陽座 オフィシャルHP

OKMusic編集部

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