【サカナクション】サカナクション
赤坂BLITZ 2009年3月7日

撮影:DAISUKE ISHIZAKA(HATOS)/取材:土内 昇

 場内に入ると、水泡が浮かぶような音が終始流れ、壁面をバンドロゴの魚が浮遊していた。外の世界から切り離された別次元の空間に迷い込み、まるで海底にいるかようで、妙に落ち着いた気分に陥ってしまう。しかし、本ツアーは全公演がソールドアウトということもあり、1Fフロアは満杯で、2F席まで立ち見も出ているほど。静粛な空間ではあったが、そこには熱気にも似た期待感が渦巻いていた。そして、その抑えられていたエネルギーは1曲目から大爆発を引き起すのだ。エレクトロニカ、ロック、クラブミュージックを昇華したダンサブルなサウンドに触発されたオーディエンスは、至高の笑みを浮かべながら、拳を振り上げ、高く飛び跳ね、高揚感を掻き立てる音楽に体を預けるのだった。 その後も矢継ぎ早に繰り出される、フックのあるメロディーと言葉が乗った、ポップでグルービーなチューンの数々。MCで山口一郎(Vo&Gu)が自分たちの聴いてきたアンダーグラウンドな音楽とJ-POPやJ-ROCKと呼ばれるエンターテイメント・ミュージックのどちらにも素晴らしい部分があると話し、その隙間を狙っていきたいと語っていたが、それこそが彼らのポップ感覚なのだろう。楽曲を彩る各パートのテイストにはファンクやニューウエィブ、ハードロックなどの懐かしい香りがあるのだが、それが繊細で、かつ技巧的なセンスによってひとつになり、斬新な楽曲を構成している。そして、さらにライヴという手法によって、ダイナミックなグルーヴを放つのである。そんな新進気鋭の独創サウンドが、ひしめき合う客席をトリップさせている様は圧巻だった。
サカナクション プロフィール

北海道は札幌より登場の5人組ロック・バンド。バンド・サウンドとテクノ/エレクトロニカ的要素が高次元で融合した、00年代的新鮮さを携えたグループである。因みに、sakana+action=ミュージック・シーンの変化を恐れず魚の動きのように軽快に素早くアクションしていく=sakanactionというのがバンド名の由来だ。
05年、山口一郎(vo&g)と岩寺基晴(g)の2人により、札幌にてバンド結成。06年には草刈愛美(b)、岡崎英美(key)、江島啓一(dr)が加わり現在の編成となる。同年夏に行われた『RISING SUN ROCK FESTIVAL 2006 in EZO』への出演をきっかけとして多くの音楽ファンの注目を集める。

自主録音の「三日月サンセット」「白波トップウォーター」といった楽曲の評判が口コミで広がり、07年5月に、<ビクターエンタテインメント>より1stアルバム『GO TO THE FUTURE』でメジャー・デビュー。本作には先述の2曲も収録され、ロック・リスナーもクラブ・ラヴァーズも等しく魅了する、最終的には“ポップ”としか言いようのない豊かなサウンドが実現している。08年1月にリリースした2ndアルバム『NIGHT FISHING』では、その先進性が評判になり、同年夏には新人最多となる8本もの野外大型フェスに出演、急激に注目度を増幅させる。

翌年1月には3rdアルバム『シンシロ』をリリース。ロック・リスナーはもちろん、J-POPユーザーにも彼らの楽曲が突き刺さり、各メディアでも絶賛されチャート上位に登場。また、全公演のチケットがソールド・アウトした全国ツアー『SAKANAQUARIUM 2009“シンシロ”』では、ステージングはもとより演奏楽曲をライヴ用にリアレンジしてパフォーマンスに臨む姿勢が高く評価された。

また、制作物のグラフィックやツアー・グッズのデザインなど、楽曲以外のクリエイティビティーも話題に上り、「ネイティブダンサー」のPVを<YouTube>で公開するやいなや、20万を超える再生回数をカウントすることに。PVとしては異例ともいえるこの再生回数は、インタラクティヴ・プロモーションに敏感なユーザーの支持にも繋がった。10年1月、『kissmark』CMソングに抜擢されたシングル「アルクアラウンド」をリリース。本作がロング・セールスを記録する中、3月には海水と淡水が交わる水域“汽水域”から創られた造語が付けられた4thアルバム『kikUUiki』(汽空域)を発表。サカナクション オフィシャルサイト
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公式サイト(レーベル)

OKMusic編集部

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