【RUSH BALL 2008】RUSH BALL 2008
泉大津フェニックス 2008年8月30日

取材:黒田奈保子

関西を代表する夏のロック野外イベントのひとつ『RUSH BALL』。これまでにも他の夏フェスでは実現できないような個性的なラインナップで開催され、多くのロックファンを魅了してきたこのイベントが今年で開催10周年を迎え、初の2デイズでの開催となった。出演者は下記の一覧を見ても分かる通り、開催前からテンションの上がるスペシャル過ぎるラインナップが発表された。 記念すべきイベント初日、天気はあいにくの雨模様…。それでもオープニングアクトのWRONG SCALEが未だ空を霞める曇り空をかき消すような強靭なステージングでイベントの幕を豪快に開けてみせた。トップバッターを飾ったHAWAIIAN6。“反戦”を謳った「A CROSS OF SANDNESS」での激しく重厚なサウンドに込められた、憂いや憤りを感じるリリックに胸が締め付けられた。そして、この日唯一の女性アーティスト小谷美紗子では、新曲「手紙」で圧倒的な歌声とピアノに乗せてやってくる深く広大な言葉の波にやられ、人目もはばからず号泣してしまった。吉野 寿(Vo&Gu)の喉の調子が良くなかったというeastern youthだが、そんなことを微塵も感じさせない。エモーショナルな中にも優しさあふれる「夏の日の午後」のなんて気持ちの良いこと! もうこの時点で筆者は面白いくらいにビールが進んでいたのは言うまでもない。『RUSH BALL』の常連RIZEはストイックでタフな演奏で次々にアッパーな楽曲を披露し、LOW IQ 01 & MASTERLOWは、「WAY IT IS?」など明朗快活なロックで会場を揺らしていく。泥濘の中、モッシュにダイブの連続でオーディエンスたちの白かったはずのTシャツは、数々の戦場を潜り抜けた勲章のように全く別物のように泥色に変わっていく。陽も落ち着き始めたころ、the band apartの包み込むような音郡に癒されたかと思いきや、これまた『RUSH BALL』の常連、Dragon Ashの登場で会場はさらに体感温度を上げていった。“雨男”で悪名高いKEN YOKOYAMAも汚名返上とばかりに暴れまくる。ハーモニカと歌声だけの「人間」で会場を一蹴した銀杏BOYZ。峯田和伸(Vo&Gu)のまるで磔にされたキリストのような神憑った風体がさらなる迫力を生み、あっと言う間に観客の感情を丸飲みにしてしまった。そして初日のトリ、BRAHMANがこの日の全ての思いを昇華させる最高のステージを味わわせてくれた。TOSHI-LOW(Vo)の鬼気迫る表情にリンクするかのようにオーディエンスは拳を突き上げ、ともに歌い、全身を打ち奮わせ、初日にして体力も音を感じる精神力も使い切った気がした。 初日とは打って変わって快晴となった2日目。riddim saunterが太陽を祝うかのようにハッピーでピースフルなサウンドでイベントのオープニングアクトを務めた。続くASPARAGUSもポップでキュートでキャッチーな楽曲陣でオーディエンスを盛り上げる。「ライオン」「白夜」など破壊力にあふれた楽曲で一瞬にして会場の雰囲気を変えたジン。一瞬の隙すら認めず、短い演奏時間の中を全速力で突っ切っていった。そして今イベント唯一のレゲエアーティスト、FIRE BALL with JUNGLE ROOTS BANDが登場。“アウェイ”の環境を手玉に取り、重厚なバンドサウンドと軽快なリリックで観客を虜にし、気が付けば周り一面タオルが舞い上がっていた。MO’SOME TONEBENDERは新曲を交えつつ、彩り豊かな楽曲でロックの真骨頂を見せ付け、SPECIAL OTHERSが放つ、言葉がなくとも伝わる心地良い緩さのサウンドは妙に感覚を研ぎ澄まさせ、続くゆらゆら帝国ではその感覚がさらに鋭利になり、脳内のアドレナリンはこれでもかと大放出しっ放し! そんな全身から音楽を取り入れようと必死になった状態で聴く、ACIDMANの壮大な世界観を持った詞世界と芯のぶれることのないソリッドなサウンドは快楽以上の何者でもなかった。BOOM BOOM SATELLITESではワールドクラスのアッパーなサウンドで会場が一瞬にしてクラブ状態へ。インディーズ時代から『RUSH BALL』に出演し続けているストレイテナーは感謝の意を込めてか、演奏する楽曲ひとつひとつに深い思いが感じられた。そして今イベントの大トリ、TOKYO SKA PARADISE ORCHESTRAが登場! 凄まじいスピードで展開されていく楽曲に連られ、残った体力の全て使って踊り狂うオーディエンスたち。「Pride Of Lions」が最後に披露されると、会場に花火が上げられイベントの終わり告げた。 今回のライブレポートは正直、全てのアーティストについて書く気はなかった。でもしょうがない、たった一言でも書きたいと思わせる最高のイベントだったのだ。

OKMusic編集部

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