取材:岡本 明

薄着でカッコいいところが見せられたと
思います

「染まるよ」は落ち着いた曲になりましたね。

高橋
アップチューンのものが2曲続いたので、ひと呼吸置きたかったというか。でも、前回の2曲と比べて攻めてないように思われますけど、心の中ではジリジリ攻めている感じの曲なんです。音圧で攻めるのではなく、内面や感情からにじみ出るというか。しかも、サウンド的にもあれこれ取っ払って骨だけになってて、だからこそギョッとするみたいなカッコ良さは絶対あると思うので。新しいことにチャレンジできたと思います。

まさに、骨組みで聴かせている感じがします。

橋本
3ピースというのを大切にして今までやってきたんですけど、その“骨組み”という言葉がぴったりで。歌だけじゃなく、ひとつひとつの音に意味がある、意志がある。だから、少ない音でも強い曲になっていると思いますね。

音と音の隙間から感情がにじみ出していく感じがあって、だからこそ“でも もう いら ない”の箇所の転調が効いていますね。

橋本
最初から聴いてて、“いつ爆発するんだろう?”って感じると思うんですけど、そこで爆発するんです! でも、爆発しきらない、というのもポイントです。

これまでと違うところで爆発しているということ?

橋本
内出血みたいな…今のは違いますか(笑)。
高橋
でも、ノリノリの曲ではないけれど、この曲は何回も聴いていると染み込んでいくと思いますね。

プロデューサーの亀田誠治さんとは初組み合わせですね。

福岡
そうです。一緒にスタジオに入っていても、3ピースって良いよね、シンプルってカッコ良いよねっておっしゃってくださって。それで自信になったところもあります。曲によって、カラーやコンセプトを変えたり、着る服が変わったり…けれど、この曲では全部脱いで骨になって、それでカッコ良くないと意味がない。そこで初めてしっかりした骨があることを確認できたので。着膨れじゃなく、薄着でカッコいいところが見せられたと思います。

この歌詞は夜通し誰かのことを思い続けて、最後は朝焼けに染まる景色の中にいるわけで。そこに思いの強さが凝縮されていますね。

福岡
はい。朝か夜か分からない時間に起きていて、何度も朝焼けを見ました。その時に書いたから、一晩ではないんですけど、その思いはずっと夜中にありました。私、タバコは吸わないんですけど、吸うことがどういうことなのかを思い出を通して分かりたいっていうのと、分かるためにちょっと無理しようとしている自分がいる感じですね。
高橋
ロマンチックな歌詞で絵になりますね、映画のワンシーンみたいに。でも、悲しいなと思いました。アッコちゃんの歌詞で、ここまで感情的で情景が思い浮かぶのも新しいですね。
橋本
大人っぽい歌詞と思ったのと、“プカ プカ プカ プカ”っていうところが印象的。アッコちゃんの歌詞はオチみたいなのがはっきりしているタイプだと思っていたんですけど、これは終わりのない感じを想像させるなと思いました。いつかの一日を切り取ったもので、分かりやすいんだけど、掴めない。でも、歌いたいと思ったので、頑張って曲を作りました。

独特のバランスを持った表現ですよね。そして、カップリングの「愛捨てた」も夜に悶々としてますね。

高橋
並んでますよね。どうしたんでしょう(笑)。でも、“悲しい夜でさえ やっぱりお腹は空く”、そこが発見でした。失恋したら食べないって言うじゃないですか。でも、食べられるということは元気で、元気でいるということはまた人を好きになるということですから(笑)。書いて元気になりましたね。

もう1曲の「RPG」は楽しい曲で、遊べていますね。

福岡
新しいものを作っていきたいという気持ちがあったから、歌詞もちょっとふざけていて、エッちゃんが歌わなそうな言葉をいっぱい入れたし。そういう挑戦を面白がれるようになってきたのはいいことですね。

そして、シングルと同じ日に武道館ライヴとツアーを収録した2枚組ライヴDVDがリリースされますね。『前菜』『スープ』ときて、やっと『メインディッシュ』ですね。

福岡
『メインディッシュ』に名前負けしてないです。肉と魚かな。ディクス2が魚、わりと庶民的な内容で。
高橋
うん、そっちはいろんなライヴハウスの映像を入れているので、観てもらえたらうれしいです。武道館とライヴハウス、両方とも私たちですって自信を持てる映像作品ですから。
橋本
かなりのボリュームです!
チャットモンチー プロフィール

2000年徳島で結成。2005年メジャーデビュー。2006年リリースのSG.「シャングリラ」がヒット。2007年リリースの2nd AL.『生命力』に続き、09年リリースの 3rd AL.『告白』は、オリコン初登場 2位を記録。2008年には、初の日本武道館公演を開催。メジャーデビューから2年4か月での日本武道館2days公演は、女性ロックバンドとしては史上最短(※当時)で、現在のロックシーンを 代表するバンドへと成長を遂げる。2011年にDr.高橋久美子の脱退により、橋本、福岡の2ピース体制となる。2014年には、サポートメンバーを迎えた体制での活動を発表し、6th AL.『共鳴』を15年にリリース。そしてデビュー10周年の日本武道館公演を行い、2016年には郷里徳島で主催フェスを2daysで初開催。大成功を収めた。最新作は、シングル『Magical Fiction』(2017年4月リリース)。デュオ“橋本絵莉子波多野裕文”(橋本)やユニット“くもゆき”(福岡)での活動、CM歌唱(橋本)や徳島での多目的スペースOLUYOの運営(福岡)など、それぞれ多彩な活動を行っている。2017年11月23日、2018年7月をもって活動を「完結」させる事を発表した。チャットモンチー オフィシャルHP

OKMusic編集部

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