取材:田上知枝

ぶつけどころのない怒りを山ほど曲にし

ケバケバしいルックスとステージから漂ういかがわしさは、ロック史に名を残してきたスターたちが放ってきたそれと同じものを感じる。驚愕のライヴパフォーマンスで全国に“中毒患者”を増殖させまくっている毛皮のマリーズ。ヴォーカルの志磨遼平曰く、“バンドの過渡期のようなものを見事に捉えた作品”だという前作『Faust C.D』より約半年、悪魔的なベールに包まれていた従来のマリーズが殻を破り、剥き出しのメッセージを叩き付ける両A面シングル「ビューティフル/愛する or die」が12月3日に発売になる。その第一声をキャッチした。

「この一年ほどで僕はさまざまなコトに幻滅・失望しました。これがまた悲しいことに誰も悪くないのです。そのぶつけどころのない怒り、それだけで山ほど曲を書きまして、その新しい作品群からのリードシングルが『ビューティフル』。この曲はかなり前からイメージはあったのですが、アレンジを練る段階で非常にアタマを悩ませました。そしてイントロを思い付き、弾いてみた時に、まさにこうコード一発で光が射した感じでした。『愛するor die』は逆に一発OKの素晴らしい曲です。『宗教』は私の単独作で、曲を書き上げて次の日にレコーディングしました。JUNIORというアイリッシュパンクバンドでアコーディオンを弾いているKatzeくんと、SEBASTIAN Xというバンドで歌を歌っている永原真夏ちゃんも参加してくれています」(志磨)

志磨はここ最近、ザ・ビートルズの研究本やインタビュー集などを読み漁っているという。

「初期の彼らは世界中を公演旅行で飛び回りながら、テレビやラジオ、映画出演もこなしつつ、残ったわずかな日数で、あの数々の名盤を次々発表していったワケです。“一年に一枚必ずニューアルバムを出す”というレコード会社との契約や、“次はどれだけスゴイことをするんだ”という世界中のものすごい期待・予想といったプレッシャーをものともせず、しかもシングル曲はアルバムに絶対収録しないのですね、彼らは。今やスタンダードとなったあれらのシングル曲を『ラバーソウル』や『リボルバー』なんかと並行してポコポコ生み出していたワケです。“それに比べたら我々なんか屁でもない”と思うと、どれだけスケジュールに追われても落ち着いて作曲に勤しめます」(志磨)

ロックに魂を売った男、志磨遼平率いる毛皮のマリーズ。彼らこそ若手ロックバンドの救世主だ。マリーズが、次代のロックシーンに革命を起こす!

毛皮のマリーズ プロフィール

志磨遼平(vo)、越川和磨(g)、栗本ヒロコ(b)、富士山富士夫(dr)の4人で活動するロック・バンド毛皮のマリーズは、06年9月に1stアルバム『戦争しよう』を発表。70年代パンク/グラム・ロック、寺山修司などの影響を過剰にデフォルメしたサウンド、そして破壊と狂乱のライヴ・パフォーマンスで一躍注目を浴び、全国各地に中毒患者を一気に増殖させる。

07年12月にリリースされた2ndアルバム『マイ・ネーム・イズ・ロマンス』では、おとぎ話の有馬和樹(vo)、ソウルフラワーユニオン奥野真哉(key)がゲスト参加した本作は、アメリカの古き良き黄金時代をモチーフとしたコンセプトによる作品で、マリーズの音楽性の奥深さも表現された作品として反響を呼んだ。

08年にはTHE BAWDIESとのスプリット・ツアーやミドリとの共演も相まって、全国各地でソールド・アウトを連発、同年5月に1stミニ・アルバム『Faust C.D.』をリリース。2ndアルバムの煌びやかさとは相反するバイオレンス度500%の戦慄の怪作が誕生した。悪魔に魂を売り渡したかの様なサウンドは、彼らのライヴ・パフォーマンスの狂気を音源にも封じ込めた凄まじさだった。この年には『AOMORI ROCK FESTIVAL'08』『COUNTDOWN JAPAN 08/09』などにも出演、さらにはニューヨークドールズとの夢の共演を果たし、観客の度肝を抜いた。

09年4月に3rdアルバム『Gloomy』をリリース。常に前作を裏切り続ける毛皮のマリーズの新たなサウンドが全編にみなぎるロックの金字塔的傑作であるこのアルバムは、オリコンアルバム総合チャートで初登場51位を記録。<タワーレコード>インディーズ・チャートは堂々1位を記録。そして10年4月、<コロムビアミュージック>よりアルバム『毛皮のマリーズ』でメジャー・デビュー。毛皮のマリーズの時代が彼らの手の届く地点に近づいてきている。
毛皮のマリーズ オフィシャルサイト
公式サイト(レーベル)
公式サイト(アーティスト)

OKMusic編集部

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