取材:土内 昇

今、堂々とした姿でスタート地点に立て
ている

昨年は現在のメリーを詰め込んだ15分の大作「激声」、初めてプロデューサーを立てた「冬のカスタネット」と実験的なことをやってきただけに、アルバムはもっと広がっていくのかと思ってたら、バンドのコアな部分を突き詰めたようなものになりましたよね。

ガラ
昨年はいろんなことに挑戦したので、次はメリーの芯が出せるように、2008年にやったことをちゃんと形にできるようにっていうところから始まったんですね。で、“今年はツアーをやろう!”ってことで、ライヴアルバムっぽい勢いのあるものを出そうってなったんですよ。
ネロ
なんか、バンドを始めた時のような気持ちに戻った…いろんなことにドキドキ、ワクワクしてた頃に戻ったような、ある意味吹っ切れた心境で臨んだところがありますね。結果、あれもこれもっていうアルバムじゃなくなったって感じです。隙のないものを作りたかったというか。ツアーで47都道府県を回ったことや、15分の大作を作ったことや、初めてプロデューサーを立てて大衆的な曲を作ったという経験があるので、ありふれたものにはならない自信もありましたし。

自信が持てたからこそ、ここまでシンプルにすることができた?

ネロ
そうかもしれないですね。パッと聴くとゴチャゴチャしているように聴こえるんですけど、実はシンプルなことをやってますからね。なかなか気付いてもらえないんですけど(苦笑)。
結生
それって挑戦でもあったんですよ。シンプルっていう狭いコンセプトの中で、アルバムとしてどれだけ広くできるかっていう。そういう意味でも、このアルバムを引っ提げて、今年1年をやっていこうっていう気になれる作品になったと思います。
テツ
武器となるアルバムを作りたかったんですよ。作品として家で聴いて満足するっていうものじゃなくて、ライヴの絵が見えるようなもの…だから、作ってる時も“ここでこんな動きをしたいな”とかライヴを想像してましたね。
ネロ
曲を作ってる時からライヴの絵が見えてないと嘘だと思うんですよ。じゃなきゃ、別にお客さんの前で演らなくてもいいっていうか。だから、そのコンセプトはすぐに出てきました。だから、47都道府県を回ったことはめちゃくちゃデカいですね。そこで得たものが相当ありますから。

実際、原曲を作る時はどんなことを意識して?

結生
原曲の段階でライヴで演奏している状況が思い浮かぶもの、そういう雰囲気があるっていうところを大事にしました。この狭いコンセプトの中で、どんなふうにいろいろな色を見せるかも考えて。
健一
ライヴっぽい曲っていうのは、過去にも作ってきたんで、それとはカブらないようにして…だから、新しさもありつつライヴでも映えるっていうことを意識してましたね。ステージで自分が弾いているところをイメージしながら、ギターのフレーズを考えたし。
ネロ
メリーって今年で8年目なんですけど、それだけやっているとバンドの中での自分のキャラや自分らしさというものが分かってくるんですね。歌詞を書くガラに対しての遊び心もあったりして…そういうものがお互いに生じるし、お互いを操り出すんですよ。僕は言葉遊びがすごく好きなんですけど、今回はストレートにやってくれたんですね。「片道切符」っていう曲なんですけど、僕の心境を伝えて、それを言葉にしてくれたんで、うまく操れたなって。
テツ
自分が作った「演説~シュールレアリズム~」に関して言えば、今回は2回に分けて録ったんですね。で、僕の曲は後半に録ったんです。前半でアルバムの雰囲気が見えてたんで、そこに足りないものとか、もうひとつ超えたものってところで、歌がちゃんと歌になってなくて、楽器隊の4人が遊んでいるような曲があればライヴで楽しいかなと思って作りました。歌詞的にも世の中に対するアンチテーゼというか…選挙の街頭演説みたいな感じで、世の中を斜に見ているようなものにしてくれて、すごくいい曲になったと思ってます。

サウンドも打ち込みやシンセとかは使わないで、バンドだけで作ってますよね。

ガラ
それはレコーディング前にみんなに言ったんですよ。打ち込みとかは排除して、なるべく5人だけでやる…っていうか、“バンドやろうよ!”って感じだったんですよ。第六の手を借りずにみんなのプレイで、コーラスもみんなの声でやろうっていうところから始まってたんで。
ネロ
「GI・GO」の打ち込みっぽいところも、実は僕が叩いてるんですよ。ひとり三役でやったのを、結生くんがミックスしてくれました。

ドラムはクリックも使ってないんですよね。

ネロ
そうなんですよ。これが一生残ってしまうと思うと緊張もしたんですけど、それだけみんなが信頼してくれてるってことなんで、うれしくもあり、プレッシャーもありで…やっぱりテンションって大事ですね。ライヴを思い描くってのが重要だから、そういう気持ちでやったら案外細かいところが気にならなかったし、感覚でいいグルーヴが出せてますね。
結生
生っぽさは今までのアルバムの中で一番出てますね。バンドっぽさというか。だから、クリックなしってのは良い部分も悪い部分もあるかもしれないけど、今回のアルバムにはすごく合ってたと思います。

これだけサウンドが生々しいと、歌もライヴのテンションで?

ガラ
ライヴだと荒くなってしまうんで(笑)、それの基準となるものが歌えればいいと思ってました。今回は1曲1曲、曲に向かう姿勢も違うというか…歌詞を書く時間がわりとあったんで、自分の中でちゃんと解釈してから歌入れができたから、歌にもバリエーションが出たと思いますね。ライヴハウスは僕の歌とバンドのサウンドで包み込むイメージがあって、ホールはすっと歌を届けるイメージがあるんですけど、このアルバムに関しては聴いてくれる人の正面で歌っているイメージだったんですよ。顔を付き合わせる…聴いてくれた人が目の前に僕の顔があるかように思うっていうのをイメージしてました。とにかく前のめりな感じですね。多少、荒いところもあるんですけど、それは別にいいやって思ってました。

歌詞は曲の世界観で書いてるのですか? どの曲も今の時代を切り取っているような感じがあるのですが。

ガラ
そうですね。1曲1曲書いていったわりには、社会的なものだったり、自分が思っていること…曲のイメージで吐き出してみたり、汚らしい言葉を使ってみたりしたんですけど、全体のイメージとしては不満をぶつけているものばかりのような気がする。さっきネロも言ってましたけど、今までは言葉遊びをしたり、言葉の意味をちょっと変えて、わざと分かりづらくしている部分があったんですけど、今回はあまり考えずに思ったことをバーッと書いていったんで、自分でもストレートなものになったと思いますね。最終的に全部の歌詞を書いて、曲を聴いた時に、これがデカい意味での“閉ざされた楽園”なのかなって。今になって考えてみると歌詞に矛盾している点がいくつかあったりするんですよ。「[human farm]」って時代の悪口を言ってるんですけど、“そんな中で、俺、普通に生きてんじゃん。結局、俺も飼われているじゃん”みたいな。でも、それが自分の中での“閉ざされた楽園”なのかなって思ってるんですよ。

今回のアルバムはバンドのコアな部分を出したとはいえ、トライも多そうですね。

ガラ
今まで以上に4人を信用したことが大きいですね。僕はいい歌詞を書いて、いい歌を歌うことだけに集中した…投げっぱなしって言われてもいいぐらいに4人を信頼して、全てを任せました。
結生
ガラからギターバンドっぽくしたいって言われたんですよ。自分としてももっとギターを出したかったんで、メジャー以降の作品でギターのバランスが一番デカいと思います。そういうところでギターが目立つんで、音にしても、フレーズにしても、細かいところまでかっちり作るんじゃなくて、バンドサウンドになった時にカッコ良いものってのを意識してましたね。そこは結構拘りました。
健一
だから、プレイ的に新しいことに挑戦したっていうよりも精神的なところですよね。ガラがメンバーを信頼したって言ってくれたじゃないですか。その分、甘えることができなくなった…任せられているからこそ、やりきらないといけないし、信頼されているからこそ、それに応えないといけない。そういう気持ちが強かったですね。
テツ
僕は音作りに拘りましたね。今までは作品に対して“こういう音”っていう作り方だったんですけど、今回は“ライヴでどう響かせたいか?”ってことを考えて…実はメンバーには言ってないんですけど、結構わがままに作ったんですよ。“ギターと被っちゃうかな?”って思っても、ベースとして出したいものならそのままやってました。でも、結果的にいい方向に転んで、全部が立って見えるというか、ギターもベースもちゃんと見えるものになったと思います。
ネロ
…これが本来のバンドの姿なのかもしれないですよね。だから、今までのメリーってまだまだだったんだなって。そういう意味では、“ここから何ができるんだろう?”ってすごく思ってます。作品を作る毎に新たなスタート地点が待ってるわけですけど、今、堂々とした姿でスタート地点に立てているなって。

では、どんなアルバムが作れた実感がありますか?

ネロ
まだまだ僕らって弱いと思うんですよ。でも、そういうヤツって自分を強く見せるためには威嚇が必要だと思うんです。それって攻撃だと思うんですね。“攻撃は最大の防御だ”って言われているように、最高に攻撃的なアルバムになりましたね。これらかライヴをしていって、もっと芯の強いものにしたいです。
結生
ニューアルバムができると“これが今の俺らです”ってよく言いますけど、“今の”じゃなくて、“これがメリーです!”っていうアルバムになりましたね。まさに名刺代わりです(笑)。
ガラ
ツアーだったり、これからの活動によって、このアルバムの評価や価値が変わってくると思うんですね。とりあえず、このアルバムを出すことで種は蒔けると思うので、あとは土地土地に行って、ライヴをやって、水をやって、デカい花を咲かせるだけです。
メリー プロフィール

メリー:2001年10月に結成。昭和歌謡的な叙情旋律や欧米発のロックなどを様々に融合させた個性的な世界観により、インディーズシーンのみならず、著名ミュージシャンからも注目される存在に。2005年にメジャー進出した後も精力的なライヴを行なっており、型にハマらない活動がそのままバンドのコンセプトにもなっている。メリー Official Website
Merryオフィシャルサイト
メリーオフィシャルサイト

OKMusic編集部

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