取材:高木智史
自分たちがやってる音楽に嘘はない
ついに1stアルバムが完成しましたが、UNISON SQUARE GARDEN(以下USG)の“本能”と“知性”が詰まった作品だと感じました。みなさんとしては何かテーマはありましたか?
斎藤
バンドの歴史のスタート地点を作ろうというのがまず始めにありましたね。10年経った時に“USGはこのアルバムから始まったんだ”ということを示したくて、今表現できるものの全部を誠実に向かい合って形としていきました。
さまざまな曲調の曲があるのは、そこにつながっていると。
斎藤
そうですね。バラエティ豊かかは分からないけど、いろんなことに挑戦しようとしているアルバムだと思う。11曲ある中で、1曲1曲で表現したり、最初から最後までの作品としても表現していたり。
挑戦という点だと「MR.アンディ-party style-」はエレクトロにチューンナップされていて新しい感覚があったのですが、どう捉えていますか?
田淵
トライしたのはほんとにたまたまですね。パソコンでこういうバージョンも楽しいねってやってたことがきっかけなんです。音楽を作る過程の最初はいつも楽しむことからで、“こういうメッセージを伝えたい”って思って作るんじゃなくて、“これって良くない?”“これって楽しくない?”っていうシンプルな考えで作ってる。だからさっき“本能が詰まった”って言われたのが“オオーッ”って思って…それ、いただきます(笑)。
どうぞどうぞ(笑)。音の鳴り方だったり、曲の個性だったり、それはUSGの“本能”がそうさせたものだと思うんです。でも、それには意図としてる部分もあるだろうし、それが“知性”に当たるかと。
田淵
“知性”という言葉はアルバムを作った後から出てくるものだと思うんです。このアルバムができた後に“じゃあ、これで今の音楽シーンで何をやるの?”っていうところで、僕らの“知性”が必要になってくるんじゃないかなと。あくまで音楽に取り組む姿勢やプロセスについては、“本能”に従うままです。それが結果的に“知性を感じるねえ”って言われることはうれしいですね。
「箱庭ロック・ショー」のような初期の曲も収録されていて、それも“本能”を語る上で必要ですよね。ミニアルバム『新世界ノート』(06年8月リリース)の最後に入ってた曲ですからね。
斎藤
『新世界ノート』でも最後の曲だったし、ダジャレですけど“箱庭”が“SQUARE GARDEN”だったりして…
…ほんとだ! 全然気付かなかった!
すいません…。
斎藤
(笑)。この曲を作った時は“自分たちの代表となる曲だよね”みたいに言ってて。だから、そんな曲も1stアルバムには必要不可欠だと思った。この曲ができて4年くらいになりますけど、その間ライヴで演奏していて、知らず知らずのうちに自分たちのグルーヴが確立してて、ちょっとごちゃっとしている感じで再録したというか…細かいニュアンスだけど、そこにバンドの本質がある気がして。それはこの曲に教えてもらいましたね。
鈴木
まったく同じフレーズでも、当時は叩きながら考えてなかったようなことを今回はいろいろ考えてるなって思いました。当時はわりと体が感じるままに叩いていたというか、むしろ演奏にいっぱいいっぱいだったんですよね。けれど、今回は叩きながら他のふたりは何をしているかなとか…体当たりでやってた前作と比べて、今回は体当たりの気持ちは忘れずに広い視点からも曲を表現できたかな。
最後は「クローバー」で締め括っていますが、個人的にすごく好きな曲です。なんだか大きな力を感じました。
田淵
イエイ! この曲は自分たちにとって特別な曲なんですよ。できた時に今後の人生で自分のコンポーズ作業において何か重要な役割を担う1曲に仕上がったなあと感じたんです。どの曲でもできた時には“いい曲ができた。良かった”という感情はあるんですけど、そこにプラスアルファそういう感情があったなと。この曲があることで3年後俺が苦しんだり、楽しんだりするのかなって。人生の伴侶じゃないですけど、苦楽をともにするっていう感じですかね(笑)。「箱庭ロック・ショー」で作品を締め括って、その次にまた進んで行く感じをこの曲で表現できるかなと思って入れました。
1曲目の「カラクリカルカレ」ような攻撃性のある曲もUSGの本質としてグッとくるけど、こういうメロディックでポップな楽曲に最近すごく惹かれます。
田淵
全部の曲においてポップであること、良いメロディーであることは貫いてることなので、まずそこは伝わってほしいですね。ロックバンドがジャーンってやってて曲がすごいポップだったら面白いなって思うんです。そこが聴いてる人にも分かってくれたらうれしいですね。
このアルバムだけでなくUSGからは前へと進む力をすごく感じます。改めて緩むことのないUSGの原動力についてうかがいたいのですが?
田淵
“自分たちがやってる音楽に嘘はない”というのがまずあって、“他にこういうバンドいないでしょ”っていうものが自信になって、それが原動力になってるのかと思いますね。心のどこかで“これがロックの夜明けじゃ、これがJ-POPの新しい道じゃ”って絶対思ってるし。こういうものがポピュラーミュージックになったらめちゃくちゃ音楽の文化は面白いものになると思ってます。
鈴木
ふたつ思い付いたんですけど、悩んでるような時でもスタジオに入って音を出したら元気になるし、音楽に対して悩んでてもステージに立ってお客さんの笑顔を見れば俺が前向きにさせられちゃうし、音楽と接してる時って前向きになるんですよね。笑顔を見たら、もっと笑顔にさせてやりたいって思うから、それが前へ向く原動力になってるのかもしれない。あとは、USGの音楽に付いてきたら間違いないよっていつも思ってるんです。僕は音楽とともに死ぬっていうか、辛くても音楽は辞めないっていう気持ちがあって、覚悟みたいなものが原動力ですかね。
斎藤
とにかく音楽が好きで、それを伝えたいっていう気持ちが一番なのかな。