取材:高木智史
またひとつTHEイナズマ戦隊が成長した
今作は“ザッツ・イナズマ戦隊”な世界観がありながら3曲目の「情熱」など新しい可能性を感じました。それは韻踏合組合をフューチャリングしていますが…。
上中
俺らの高校の先輩で、ヒップホップ界で有名な方たちなんやけど、何か一緒にやりましょうよって感じで話したら乗り気で書いてくれてね。リリックが良いでしょ!
ホントに良いですよね。このリリックが入ることで「情熱」の裏側まで曲のストーリーや世界観が分かるというか。
中田
どういうふうな形になってるかって僕はまったく想像できなかったんですよ。でも、聴いてみるとヒップホップって言葉が直接くる感じっていうか…で、丈弥の歌も心にズバッと入ってくるものだから、すごく良い感じにミックスされて歌の世界観が広がっているなと思いましたね。
前回のインタビューでもコラボレーションという形でありながらもイナ戦としての核を持つことが重要だとおっしゃっていましたが、この曲に関しての核は歌ですよね。歌の芯がぶれていないからイナ戦の熱さ、情熱を感じました。
中田
一緒に飲みに行った時に、韻踏合組合のER-ONEさんが“アンダーグラウンドだけでなく、俺らとしてはメジャーのフィールドでもやっていきたい。もっと多くの人に言葉を伝えたいんや”って言ってて、そういうところは一緒だなと思いましたね。
上中
イナズマ戦隊としても、韻踏合組合としてもそういう核を持って歩み寄ったことで芯のある良い作品が作れたんだと思うね。
そして、その後「かきすて魂」とアルバムは進みますが、一見、あまり聞かないフレーズですね。
上中
この“かきすて魂”は“恥をどんどんかいていけ!”っていう俺の信念。30代になったということもあるけど、そんなん関係あらへんって感じで…己を持って恥をかくというのは、いずれ自分に返ってくるものがある。例えば俺の話だと、デビュー当時は今みたいに喋れなかったけど、恥をかいて、自分を曝け出すことで、今の自分があるというか。アホでいることは最高やでっていうことですよ。
「かきすて魂」だけでなく、全曲曝け出し具合が半端ないですよね。一見、格好悪い歌詞であったりとか、「テレパシー」のような過去の自分に立ち返ったことで自分を曝け出したり。
上中
そんな歌詞を書けるようになったこと、みんなでその音を作っていけたことで、またイナズマ戦隊が成長したのかもしれんね。臆病な奴ほど着飾って、いいように見せるからね。でも、そうじゃないと。着飾らなくても…俺の愛読書は『レオン』やからね…ね。
上中
(失笑)。“イナズマ戦隊・上中丈弥”っていうものをこれまでの活動である程度確立して、自信になってる部分があるから、今はどこを見られても恥ずかしくないというか。
丈弥さんは歌詞であったり、歌で自分を曝け出していると思うのですが、演奏面ではどのように自分を今作で曝け出したと言えますか?
山田
そうですね…やっぱり自分がやってきたことしか出せないと思うんですよ。分からんことはできないし。これまでにやってきたことを確実にというか、“このギターを弾かせたら、俺が一番輝ける”っていうものを詰め込んでるつもりですね。
「あの日のバラッド」とか間奏でギターが泣いててすごく山田さんらしさを感じました。
山田
泣いてるね。好きなんですよね、ああいうのが。音で泣いてるし、聴いてくれた人が、俺が弾いてるところの顔とかを想像してもらえたらうれしいですね。そこのカッコ良さはギターで演出できるところだから自信を持っていますね。
そのギターもイナ戦の核ですよね。いろんな曲調の曲があるけど、ロックバンドとしての醍醐味もすごく感じました。
上中
そうやね! ギターがカッコ良くないバンドなんてバンドじゃないからね。
山田
楽曲にしても、ライヴにしても、他のバンドと勝負できるところはこの12年間で培ってきたものだからね。実際、俺より上手いギタープレイヤーはいっぱいいるけど、魂の部分で絶対負けへんっていうものは持ってる。そういう部分は断言できますね。
そういう主張はすごく感じました。中田さんはベースにおいていかがですか?
中田
「えっちらおっちら音頭」は自分を一番曝け出したかと思いますね。この曲は僕が作ったんですけど、始め全然曲ができなくて、どうしようかな?って思ってて。武雄から、“俊哉は祭りが好きやから、祭りみたいな曲作ってみたら?”って言われて、それも僕のひとつのルーツなんかなって思ったんですよ。
ヒロさんの曝け出したところは?
久保
日々の生活の自分がそのまま演奏に出ると思うんですよね。だから、普段から良くしようって思ってて。日常の僕が磨かれていくことで、演奏も良くなるから、まだ成長途中ですけどね。そういう部分が“曝け出している”ということなのかなと思いますね。だから、同じ曲でも今日やるのと明日やるのでは違ってくると思う。人間的に成長してゆけば、イナズマ戦隊としてくっきりしてくるというか、これからのバンドの奥行きになるんじゃないかと思いますね。
各プレイ面や楽曲ごとに聴き応え満載で、ラストの「オマエだけを」でさらにイナズマ戦隊が前に進んでいくような力を感じました。
上中
これは名曲やね。自分でいうのもあれやけど。構成もすごくシンプルだし。これは伊東ミキオさんの鍵盤、女性コーラスがすごく開けてる感じを出してるというか。教会みたいなイメージでね。歌ってることはすごく狭いんやけど、そのことで、“対おまえ”みたいな感じというか。これは、みんなに聴いてほしいね。