【American Short Hair】
取材:ジャガー
前作の1stフルアルバム『にや』は、それまでのバンドの歴史を詰め込んだバリエーション豊かな作品だったが、今作は“愛”という普遍的なものをテーマにコンセプチュアルな作品を目指したという。ずっと、人の心に残るものを一番に考えて歌いたかったと全作詞曲を担当する迫水秀樹(Vo&Gu)は語ってくれた。
愛って漠然としたものですけど、家族、友情、恋人…人間誰でも持ってるものだから、そういうものを歌いたかったんです。聴く人それぞれが忘れかけていた何かを思い出したり、または生み出してくれたらいいなって。この作品を聴いた日が、その人にとっての“愛の誕生日”になるというか。聴くたびにその誕生日を迎えて、温かい気持ちになってほしい。
今作を創るにあたって、最初に浮かんだメロディーと言葉の響きを大切にしたとのこと。
仮歌で浮かぶ言葉とメロディーがあるじゃないですか。昔は、この仮歌だと自分が歌いたいことと違うから、別の歌詞を乗せたいっていうことで無理矢理変えてたりしたんですよ。でも、『あいこねアップルパイ』とかは特に“アップルパイ”ってフレーズが浮かんだので、その音の響きを大事にしたくて、素直に出て来たもので広げていった感じですね。『世界が拍手』も歌詞とメロディーラインがひとつになって出て来たものを広げていったので、今回はそういうのが多かったです。
また、ここまでしっかりとしたメッセージを提示するのは、同バンドにとっては珍しいことだ。そうなったきっかけとして、アメリカのワシントンD.C.でのライヴを挙げてくれた。そこで何を思ったのだろうか?
確かに、昔だったらこんなに発信してなかったでしょうね。今年の春、アメリカのワシントンD.C.でライヴをやる機会があったんですけど、それがすごく大きいんですよ。内容も充実していたし、会場も盛り上がったんですけど、何かが自分の中で足りなかった。それが気になってて、帰国後に人種関係なくその場にいる全員がひとつになれる曲を作ろうと思ったんです。そこから生まれたのが『世界が拍手』で。“拍手”って世界共通だから、きっとその場にいる人たちみんなで沸き上がれるんじゃないかと。海を渡った交流のおかげで壮大な感覚が生まれて、その生まれたものを残した状態で書き上げました。すごく盛り上がってるんだけど、最後にもうひと盛り上がりできるような曲になったと思います。ライヴをやるごとに“発信していきたい”って気持ちが自分の中で強くなってますね。