L→R 前田啓介(Ba)、藤巻亮太(Vo&Gu)、神宮司 治(Dr)

L→R 前田啓介(Ba)、藤巻亮太(Vo&Gu)、神宮司 治(Dr)

【レミオロメン】レミオロメンの新た
な歴史の幕開けとなる
初のセルフプロデュース作品

4thアルバム『風のクロマ』からオリジナルアルバムとしては約1年半振り、通算5作目となる『花鳥風月』をリリースするレミオロメン。バンド結成10周年を飾るにふさわしい、初セルフプロデュースの新作ついて話を訊いていこう。
取材:土屋恵介

小さな幸せに感謝して
ありがとうを伝えていきたい

ベストアルバム『レミオベスト』後のオリジナルアルバムですが、制作はどのように進んでいったのですか?

藤巻
前作『風のクロマ』は自分たちがどういうものを音に込めていくかをすごく模索したアルバムで、善くも悪くも膨らんだ作品になったんですね。そこから次のステージに向かって何を歌っていくのかを考えた時に、まず本当に自分たちがやりたいことを3人で見つけなきゃいけないんだってことが浮かんだんです。自分たちが責任を持って音楽をやっていく中で、見えてくるものを音楽にしていこうと。

それが初のセルフプロデュースにもつながったのですか?

藤巻
そのきっかけになったのは、サポートキーボードとしてライヴを一緒に回ってくれている皆川(真人)さんと一緒に作った「Sakura」で。正式にはさいたまスーパーアリーナでのライヴが終わった後ですね。これからは自分たちの音楽にもっと責任を持っていかなきゃいけないんじゃないかって思いを、プロデューサーであり、音楽的なパートナーである小林武史さんに話したら、その感覚を理解してくれて“それがいいと思う。ちゃんと作品に思いを込めて来いよ”って温かく送り出してくれたんです。そこからが新たなスタートを切った感じです。

実際にセルフプロデュースを行なってみていかがでしたか?

前田
スリリングで楽しかったですね。それは、全てにおいて常に自分たちで選択していく楽しさだったり。そういう意識が、音にも言葉にも色濃く出たアルバムになったと思います。
神宮司
制作は楽しかったですよ。最初は自分たちだけでやる怖さもありましたけど。でも、皆川さんやトーレ・ヨハンソン、いろんなレコーディングエンジニアさんとコラボしていくことで客観的な見方も踏まえつつ、だけど基本は自分たちでやっていくってスタンスが楽しめる要素のひとつでしたね。いろんな楽器を使ったり、音にもこだわったり、セルフプロデュースならではの追求ができたんじゃないかな。

自分たちのやりたいことをきちんと注ぎ込めたと。

藤巻
音に関して言えば、今回は最初からメロディーと歌詞がある曲が多かったから、どこに向かえばいいのか見えやすかった。アレンジにしても無駄なことは減っていったと思います。「小さな幸せ」は3人だけで作ったものだし。

今までは歌詞が先にあることが少なかったのですか?

藤巻
そうですね。今回は歌いたいことが先にあるものを作りたいって思いもあったんで、ひとつのテーマが次の曲のテーマを生んでいったから、言葉が出てきやすかったと思います。

現実を受け入れつつ前に向かっていくという歌詞が多いですが、そういうマインドになったきっかけは?

藤巻
最初にできた「花になる」は、起きたことは起きたことだし、今までの自分たちを受け入れていこうって歌なんですけど、その時は受け入れるってことがすごく大事な気がしてたんです。目の前のことをさらっと歌う大事さに気付く中で、次に「花鳥風月」って曲が生まれました。

「花鳥風月」は日常の中にある、そこはかとない幸せが歌われていますよね。

藤巻
スーパーに行くといろんな野菜があって全部違うかたちや色をしていて、生き方もさまざまだよなって思えたことにすごく救われたりする。些細なことだけど、実はそういうところに幸せがあるんじゃないかってことにこの曲で気付かされました。歳をとるとか、時代の流れとか、常に世の中は変わり続けるけど、月が出たり、風が吹いたり、花が咲いたり、鳥が飛んだり…変わらないものは絶対ある。人間はそこに小さな幸せを見つけることができるし、感謝して“ありがとう”を伝えて生きていけたらいいなって、すごくシンプルなところに立ち返れた大事な曲ですね。

アルバムの1曲目はシングルにもなった「Starting Over」ですが、良いことも悪いこともあるけど精いっぱい生きていこうとするメッセージがバンドにも合っているなと。ベストアルバムを出して1発目の作品ですし、またここから始まるぞっていう改めて踏み出すような印象を受けました。

藤巻
この曲はアルバムに向けてというわけではなく、ベストを出すちょっと前にできたんです。次へのマニフェストというか、そういう気持ちで行かなきゃいけないってことを強い言葉で素直に書いた曲ですね。結果的に、この曲で言ってることを今回の12曲がちゃんと表現してるなって感覚はあります。

タイトル通りのシンプルな「ロックンロール」、ドリーミーでメロディアスな「虹をこえて」、ゆったりとしたポップな「Tomorrow」、3人だけで録ったフォークテイストの「小さな幸せ」など、サウンドはバラエティーに富んでおり、歌詞もそれぞれのシチュエーションはあるんだけど、アルバムで伝えたいことが一貫してるのはすごく感じます。あと、演奏面でも「花になる」などは、変則的なビートでポストロック感が入ったり、細かい部分までこだわっていますが。

神宮司
これはアルバムで一番大変でした。1日中ドラムを叩いてたけど、できなさすぎて諦めそうになって(笑)。亮太くんがデモの段階でリズムパターンを作ってきたけど、ドラマーの感覚じゃない急なリズム変化があったんです(笑)。僕には思い付かないパターンだし、それを自分の中に取り入れるのに時間がかかりましたね。テクニック的にも難しくて…で、ずっとひとりで録ってたけど、みんなでやったらいいかもしれないってことで、せーので合わせてみたらすごくいいテイクが録れたんです。やっぱり全員一緒に演奏するとグルーブ感も出て良かったので、大正解でした。帰りは、“肩の荷が下りた~!!”って(笑)。

(笑)。あと、曲作りやレコーディングで面白かった楽曲はありますか?

藤巻
「ありがとう」は最初の段階では打ち込みだったけど、ビートの跳ね方が全然決まらなくて、スタジオでハンドクラップと足踏みのビートをみんなで録ったんです。
前田
僕らとスタッフとで“パーティーしてるみたいな感覚になるといいね”ってやったんですけど、また(神宮司)治の足がいい音するんですよ。
神宮司
音が重なって分からないでしょ(笑)。
前田
分かるって(笑)。最後のコーラスもみんなで録って、それをトーレに送ったら、スウェーデンのタンバリンスタジオの家族の人たちも音を入れてくれて、さらにかわいくなりましたね。あと、「大晦日の歌」。サビが“そば”始まりでびっくりしたけど、いい意味で引っかかりがあるなって。この匂いを、カツオだしをもっと引き立たせるために、結構いい音で録ろうって意気込んでスタジオに入ったけど、なんか雰囲気が出なくて。みんなで話をしていくうちに“大晦日はこたつにみかんに年越しそばがあって、好きな家族がいればそれで幸せ。全然リッチじゃなくていいよね”ってことになってこの味になったんですけど、それも面白かった。

レミオロメンでいることが
これからもすごく楽しみ

では、『花鳥風月』全体としての印象はどういうものですか?

藤巻
次に向かう確かな一歩が踏み出せたと思いますね。これは僕らにしかできない作品だと思うし、そういうものを積み上げてく、これからのすごく大事な入口に立てた気がします。あと、このアルバムは地方感と東京の都会感の対比があるようなアルバムなので、都会で働いてる人にもリアリティーがあるだろうし、山梨出身の僕らだから分かるけど、地方に住んでいる人にもリアリティーがあると思う。その両方にちゃんと届けられたらいいですね。
前田
このアルバムは、すごく春を感じますね。大変な嵐が来るかもしれないけど、夏が待ってる気がするというか。これから、もっともっといけるぞって予感がします。
神宮司
ほんとにみんなに近い存在のアルバムなので、聴いてくれる人が何かしら共感できる部分があると思うんです。30歳になる男として、僕が聴いててもいろんなイメージが沸いたし。12曲がひとつの塊になっているというか、すごく流れのあるアルバムですよ。全部が同じ目線だし、場違いな曲もないし、全部の曲が手に収まるものなんじゃないかと思っていて。これはぜひ、みんなに直接届けたいですね。

その思いを実現させるべく、バンド史上最長、全47都道府県を回る全国ツアーが5月から始まるわけですが。

前田
全部で62本。初めて行く県も9つあるんです。しかも北海道は稚内、そして南は沖縄まで。これはやりますよ~! アルバムの中で描かれてる生活が稚内にも沖縄にも東京にもあると思うので、それを生で届けられるのが楽しみですね。ライヴを観た後にこのアルバムを聴くと、また違う感覚になれると思うので頑張りたいですね。
藤巻
今年結成10周年で地に足の着いたアルバムができたし、ちゃんと自信を持ってその作品を伝えに、僕らが全国に余すことなく届けていくことに意味があるって思いから、全47都道府県を全て回ることにしました。
神宮司
40本回った時も長かったけど、みなさんにしっかり伝えたいんで、楽しんで回りたいです。個人的には、できればいろんなところでゴルフがやりたいけど…時間がないかな(笑)。

では、今年結成10周年ということで、この10年で得たものをそれぞれ教えてください。

藤巻
全てが糧になるってことじゃないかな。それを糧かと思うかは、その時の姿勢だと思うし。どんなことでも人生のプラスにしていく力が人間にはあるのかなってことですよね。僕らは音楽を糧に、そこに向かっていけたらなって思うんです。それは10年かけた中で思えたことですね。
前田
もちろん大変な時もあったけど、それ以上に楽しい時もあって、単純にもっと3人で音楽をやってみたいんですよ。ここからどんな景色が広がっていくのか、どう見えるのか楽しみですね。本当、現実を受け入れられるようになった10年目って感じです。これまでのアルバムごとの自分たちも全部僕らだし。その時々の状況や環境やテンションとか、いろんなものが毎日善くも悪くも変化するから、それを全て楽しんでいくしかないんだっていうのは、今すごく感じてます。"楽しめない時もあるよね~""トンネル長いよね~"って時もあったけど、だからこそ今回のようなアルバムを作れたわけだし。踏ん張ってるだけじゃなく、肩の力を抜いて見えるものもあるなと。すごく楽しみですね、これからもレミオロメンでいることが。
神宮司
どういうスタンスでやっていけばいいか、今できることは何かとか、10年経ってやっと分かってきたかな。やっぱり、10年くらいかかるんですかね。音楽やり始めて、音楽業界に入っていろんなことを経験して、それを踏まえて今から再スタートできる。それにも10年かかるんだなって。だから、これからの10年はもっといろんなことができると思うんです。伝えたいこともまだまだいっぱいあるし、もっと楽しんでいけるんじゃないかな。
レミオロメン プロフィール

00年12月に、小・中・高と同級生だった藤巻亮太(vo&g)、前田啓介(b)、神宮司治(dr)によって結成。バンド名に特別な意味はなく、ジャンケンで勝った順に1文字、2文字、3文字出してゆき言葉をつないだものだという。03年3月にリリースした1stミニ・アルバム『フェスタ』がレコード店のインディーズ・チャートで軒並み上位を記録し、その名を広く轟かせる。8月にはシングル「電話」でメジャー・デビューを果たし、以後1stフル・アルバム『朝顔』、シングル「3月9日」、アルバム『ether [エーテル] 』などをリリースし、05年3月9日に新人バンドとしては異例の日本武道館公演を成功させた。そして、彼らの代表曲として国民的ヒットを記録した「粉雪」を05年11月にリリース。
彼らの持ち味は、日本語の感触に重きをおいた詞作と、3ピースによるシンプルでありながらダイナミックなバンド・アンサンブル、そして、ノスタルジックなメロディだろう。「粉雪」の後も「太陽の下」「蛍/RUN」「夢の蕾」などスケールの大きい楽曲を次々と生み出し、トップ・アーティストとして活躍を続けている。レミオロメン オフィシャルHP(アーティスト)
レミオロメン オフィシャルHP(レーベル)
レミオロメン オフィシャルYouTube
Wikipedia
藤巻亮太 オフィシャルTwitter

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