L→R 恵梨香(Cho&Gu&Harp)、千晶(Vo&Gu)

L→R 恵梨香(Cho&Gu&Harp)、千晶(Vo&Gu)

【ひいらぎ】ライヴにそのまま持って
いけるようなものにしたい

結成10年にして、待望の1stアルバムを完成! 多感な時期をともに過ごし、音楽を通じて感じ合ってきたことをパッケージした本作について話を訊いた。
取材:ジャガー

ひいらぎは結成10年を迎えたわけですが、振り返ってみるといかがですか?

恵梨香
ダラダラした10年ですけど(笑)…短かったですね。音楽を始めた中学2年生って、人格が形成される時期だと思うんですよ。その時期に音楽活動を始めて、途中辞めた時もありましたけど、ひいらぎをずっと続けてきたからこの性格なんだろうなって思います。
千晶
変な感じですよ。家族でもないし、友達でもないし、かと言って仕事仲間ってだけの関係でもないし。お互いに恋の話だったり、成長過程とか、いろんな面を見てきてるんで、不思議な関係ですよね。

そんなふたりのこれまでの軌跡を凝縮している印象を受けたのが今回のアルバム『地平線と秋の空』で。“地平線”という言葉も北海道で育ったからこそ浮かんだワードだと思いますし、経験談をもとにした楽曲も多いこともあって音楽活動だけでなく、これまでの人生全体が糧となって生まれた作品なんじゃないかと。

恵梨香
北海道ってちょっと車を走らせると地平線が見えるんですよね。だから、変わらないものの象徴として、自分の中では地平線が浮かんで。で、変わるものの象徴はいろんな表情を見せる秋の空を持ってきました。
千晶
ちなみに1曲目の「地平線」は、一番最初にアルバムに入れることが決まった曲でもあって。路上ライヴとかでも歌っていた曲だし、お客さんとの距離感が縮まるんですよね。シングルでは結構バラード調が続いていたので、見えにくかった自分たちが大事にしている原点が分かる曲を最初に聴いてもらいたかったんです。

すごくアットホームな雰囲気が伝わってきます。今作では、千晶さんも「僕らの明日」で丸々1曲作詞作曲をされていますね。

千晶
去年の年末ぐらいから“アルバムで曲を書いて入れられたらいいよね”っていうやんわりとしたプレッシャーがありまして。そこから作り始めて、やっとアルバム制作期間中に1曲できたって感じです。全部の作業が初めてだったので、新鮮で楽しくできたと思います。

作り手が変わると雰囲気も変わりますね。こういうポジティブな雰囲気は千晶さんらしい。

千晶
メロディー…あとは言葉の選び方も全然違いますしね。確かに、自分の曲はめっちゃポジティブですね。今回はアルバム自体もライヴにそのまま持っていけるようなものにしたいっていうのがあったから、明るい曲がいいかなと意識して書いたので、みなさんに手拍子してもらえたらいいなって想像してました。

アルバム全体を通して、前半は外へ向けたメッセージを歌っている曲が多く、後半になるにつれ内面を描いた曲へと変化していますが、例えば「二人の記憶」「あの頃の私は。」といった恋愛の曲は、ひいらぎには珍しいですよね?

恵梨香
ここまで自分の恋愛を赤裸々に歌ったことはないです。実は、レコード会社と契約した直後にスタッフの人から“ひいらぎって恋愛の曲歌うと笑っちゃうよね”って言われて…。
千晶
そんな嫌みな感じではなくて、こそばゆいみたいな言い方だったと思うんですけど。
恵梨香
それがずっと引っかかって…うちら恋愛の曲は歌っちゃいけないのかなぁって(笑)。でも、アルバムだし、いろんな面を出していけたらいいなと思って入れてみました。

「二人の記憶」は失恋直後の生々しい痛みを感じますが、続く「あの頃の私は。」の軽快な入りからしてだいぶ吹っ切れた様子ですが。

千晶
まさしく狙い通りで。
恵梨香
もし、好きだった相手が「二人の記憶」を聴いて、まだ俺のこと好きなんじゃないかって思われるのがすごく嫌で。そうじゃないんだよっていうのを「あの頃の私は。」に込めました(笑)。振り返ると笑い話だし、当時も散々みんなに止めなさいって言われてた相手なんですけど、なぜかのめり込んでしまってたんです。

確かに、若干残念な恋をしてたのかなって思いました。

全員
(笑)。
千晶
でも、誰にでも起こりうることなんですよね。全部のシチュエーションが当てはまらなくても、共感できる部分は多いんじゃないかなって。
恵梨香
その頃は便利な女でも嬉しかったなぁ。

私をどんなかたちにしろ、求めてくれてるのね!的な(笑)。

恵梨香
必要なんでしょ!って。

そこまでなると、彼が大事なのか、求められていることへの優越感なのか、恋に恋してるのか、芯がブレまくって自分の気持ちが分からなくって…。

千晶
《残ったものはなんだだろうな?》って。

だからこそ、ちょっとした出来事にドキドキしている純粋な気持ちが詰まった「ビニール傘」に憧れる部分もあり。

千晶
あーそうかもね。
恵梨香
恋愛はドキドキするものでありたいんですよね。大人になっていくとドキドキしないじゃないですか。
千晶
うん、しないね。
恵梨香
中学生の時とかって、一緒に下校するだけで一大イベントじゃないですか。そういうのに憧れてたんですよ。青春時代を全部ひいらぎで過ごしてきたのもあって…。
千晶
なかなか恋には縁がなかったよね。

一転して、ギターのカッティングの力強さや千晶さんの低音が前面に響く「亡くすべきもの」も、これまでの印象とは違いますよね。

恵梨香
そうですね。こういう曲も以前からあったことはあったんですけど、なかなかやる機会もなかったので。マイナー調で千晶さんのパワフルな太い声が前に出る曲を作ることで、印象も変わるだろうし、他の楽曲も引き立つんじゃないかと。

メッセージ性が強いという意味では、「ゼロとイチ」も同じかなと思ったのですが。

恵梨香
これはメッセージというよりは自分の愚痴みたいなもんです。この先何でもパソコンひとつでできるようになってしまったら、クリックひとつでお経が読まれたり、週に何回クリックした人にはポイントが溜まって、お彼岸のシーズンに商品と交換できたり…そういうふうになってしまうんじゃないかって。家の電話にかけることも今じゃなかなかないだろうし。
千晶
親が出たらどうしようとか、あの緊張感ね。
恵梨香
なんか寂しいなって。特に自分たちは路上ライヴをやっているので、そういう人と人とのつながりが疎遠になっていくのがすごく寂しい。実際ライヴで歌っている姿を観てもらいたいし、その方が音楽をやってるんだって実感もあって。CDもデジタルですけど、CDを聴いてライヴに来てほしいなっていう思いもこの曲には含まれています。
千晶
そのきっかけとして、このアルバムがみなさんの元に届いてくれたら嬉しいですね。
『地平線と秋の空』2010年10月27日発売Sony Music Records
    • 【初回生産限定盤(DVD 付)】
    • SRCL-7400〜1 3500円
    • 【通常盤】
    • SRCL-7402 3000円
ひいらぎ プロフィール

千晶(Vo&Gt)、恵梨香(Cho&Gt)からなる、札幌・路上ライヴ発の女性アコースティック・デュオ。2000年10月、愛美を含む3人組アコースティック・ユニットとして“柊”を結成。2003年12月、東京にて初のライヴを決行。その後も路上を中心に積極的にライヴ活動を続けるが、2005年10月の5周年記念ワンマン・ライヴを最後に解散。2006年 10 月に活動を再開し、2008 年2月に<Sony Music Records>と契約。2009年2月にシングル「みず」でメジャーデビューを果たすも、2009年7月に愛美が卒業。千晶・恵梨香の2人で活動を開始し、2009 年8月にZepp Sapporo でワンマン・ライヴを行ない、新生・ひいらぎとしてスタートを切る。温かみのある歌声とサウンドに注目が集まり、2009年8月にリリースされた2ndシングル「かけら」が好評を得る。2010年10月、1stアルバム『地平線と秋の空』を発表。アニメ『夏目友人帳 肆』オープニングテーマの「今、このとき。」、アニメ『もやしもん リターンズ』 エンディングテーマの「最近」など数枚のシングルリリースを経て、2012年9月に2ndアルバム『ドーナツの穴』を発表。しかし、2013年11月の結成13周年記念ワンマン・ライヴ『いつもありが十三キュー!』ツアー最終日、札幌公演をもって惜しまれながら解散した。オフィシャルHP
恵梨香 Official Twitter

OKMusic編集部

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