【高橋 優】聴こえ方が変わるアルバ
ムでいい

タイトルは直球 “リアルタイム・シンガーソングライター”。ただただ、自分の意識に向き合い問いかけ続けた心の軌跡。高橋 優が導き出した偽りのない“表情”11本!
取材:石岡未央

すごく良いアルバムですねぇ。自分が女の子だったら抱かれたいって感じだね(笑)。

告白ですか(笑)。ありがとうございます。

直球なタイトルですけど。

自分として一番名乗ってきた言葉だったんで、思い入れの強い言葉になってるし、改めて言えるモノにしたいなって。

魂が入りまくりだけど、特に意識したことって?

絶対に手を抜かないってことですね。自分の根本から言葉を発する、心の一番深いところのモノをできる限り探すということ。今はもう、まっさらな感じなんです、出し切って(笑)。一番自分らしい表情で作って集まったものが11曲ある。

なんか、高橋 優プレゼンツの体育祭のような感じがして…。出場者も全員“高橋 優”で、人生観というか、感情の各キャラクターが全力の曲技でうねり回ってる。たくさん表情があるよね。

はい、怒ってるだけではなくなりましたね(笑)。笑ってるような場面、悲しそうなことや、誰かと寄り添ってる感じとか…。その体育祭のイメージは、なんか楽しくていいですね。

支え合い、立て合いというか、ほんとに素晴らしく曲順のバランスが良いしね。

入念にあらゆるパターンを聴いて、悩みましたね。引き立て合うってことをシングルになった曲たちにもやってもらっていて、初めて聴いた人が代表曲はこれだって選んでくれればいいかなって。

聴く度に、好きな曲が変化していくんだよね。どれがシングルでもいいって感じがよく分かる。でも、作家能力ありきだとも思うし…天才なんですかねぇ(笑)。

天才、いただきました(笑)。聴いてる人の環境の違いで、聴こえ方が変わるって改めて気付いたんですよね。だから、曲が生まれ変わってくれればいいって思ったんです。

「少年であれ」が、すごい意外だったんだよね。勝手なイメージだけど、高橋 優らしからぬというか…。

えっ、なんでですか?

ある意味、無責任なこと言ってたりするじゃない。自分で決めればって、軽く投げやってるというか。自分がこうなりたいのか、言われたかったのか…突き詰めて抜けた先にあるのかな?

抜けてはいないけど、突き詰める中で苦しくなる瞬間があって、もっと掘り下げたいと思う一方で、フッと力を抜きたくなるんですよね。その時に出てきた歌詞ですね。この曲の側面は、いろんな人にあると思うんです。自分を大事にしたいけど、その必要性を感じられてない人たち、そんな方々に対して歌いたい。で、半分はそういう自分自身にも送りたいと思ってる。自分も“お前の代わりはいくらでもいる”って言われてるような気がした時があって。“また言われたね、オレら”って曲にしたかったというか(笑)。半ば被害者意識だし、哲学めいたものは薄れたかもしれないけど、こういう歌があってもいいっていう願いがあるんですよね。最近生まれてきた感情なんですけど。

新境地っていうことだ。アルバム全体的には、ストリングス系が目立つような…「メロディ」とか。

『メロディ』は歴史が深くて、実は10年前から歌い続けてる曲なんです。この曲だけは、引き出しにしまっておこうってタイミングがなかった。で、ようやくかたちに…

ずっと寄り添ってきた曲なんだね。

人に例えたら、かなりツライ道を辿って来たっていうか。才能はあるのに認めてもらえなかった時間が長過ぎた(笑)。路上ライヴでも、お客さんがいようがいまいが必ず歌ってた曲なんで。

感慨深いというか。改めまして…になるわけでしょ。

ほんと…ストリングスが入った時は感動しましたもん! ずっと弾き語りでやってきた曲だったので、この曲を成長させてくれるものなら、“頑張ってきた奴なんで、よろしくお願いしますよ”って気分で、ほんとに嬉しかったんですよね。僕の中では相変わらずリアルタイムな気持ちが入ってるし、傷だらけのギターも持ってるし、歌うことしかできないって面が今でもある。10年前から変わらない思いが詰め込まれてるんです。

切ない歌に聴こえるのは、そういう深い思い入れがあるからなんだね。で、「サンドイッチ」なんですが(笑)。つまみ(珍味)ですかって感じがあるけど、このポジション絶妙だよね。内容は、日常で誰しも一回は感じたことあるし、やったこともあるしで

そうですね、舌打ちする方もされる方も…

最初「靴紐」が好きになって、で、表現悪いけど、昔風なちょっと安い感じのシンセの音あるじゃない? あれが曲の表情を豊かにしててすごく良くて。

それは、僕も思ってたけど口に出してなかった一個ですねぇ(笑)

そのあと「サンドイッチ」でピアニカが出てくる流れ最高だね。

そう言われてうれしいです。なんかスッキリした気持ちになりました。

「虹と記念日」は、80年代のニューミュージック的な雰囲気感じて。あれって、声を加工してるの?

ダブルヴォーカルなんですよ。重ねてます。

わざとエッジを出さないようにしてるってことかな?

そうですね。他にも、ファルセットやコーラスワークって、かなり手の込んだ作品なんですよ。これを作った頃に聴いてたのが、ビーチボーイズで(笑)。そっちの時代のモノを、なんか雰囲気出してみようって。フワッとしたロードムービー的な、画質の悪い映画が流れてるような景色を徹して作った感じで。

いろんな曲がタイムスリップさせてくれるよね。選ばれた言葉たちや感覚、景色が受け手の記憶に響いてくる。

表情は詰め込めたので、聴いてる人の心情やシチュエーションによって聴こえ方が変わるアルバムでいい。自由に聴いてもらいたいなって。そこに僕のメッセージが入ってるにせよ、強い言葉ほどライトにしたかったし。ほんと胸を張って、聴いてください!って言えるものができたと思ってます。

個人的な感情なんだけど…全部聴き終えた時に、“高橋 優って、やさしい人なんだなぁ…”って思ったんだよね。言葉のチョイスは違うのかもしれないけど、なんか、やさしいなぁって。

名前が“優”なだけに(照笑)。でも、やさしいって何だろう?ってことは、この名前をもらった以上、今までもだけど一生考えていくテーマのひとつだと思ってます。だから、聴いた後にやさしいって思ってもらえるのって、すごい嬉しいですね。
リアルタイム・ シンガーソングライター
    • リアルタイム・ シンガーソングライター
    • 通常盤
    • WPCL-10938
    • 3150円
高橋優 プロフィール

タカハシユウ:1983年12月26日生まれ。札幌の大学への進学と同時に路上で弾き語りを始め、08年に活動の拠点を東京に移し、10年7月21日、シングル「素晴らしき日常」でワーナーミュージック・ジャパンよりメジャーデビュー。13年11月には日本武道館での単独公演を成功させた。デビュー5周年迎える15年7月にはベストアルバムをリリースし、同月25日には秋田県の秋田市エリアなかいちにてフリーイベントを開催。高橋 優 オフィシャルHP

OKMusic編集部

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