【佐藤史果】私にとって歌はなくては
ならないもの

R&B等のブラックミュージックの影響が強く感じられるものの、その声にはやさしい包容力がある佐藤史果。そんな彼女に歌に興味を持ったきっかけから、シングル「All for you」のこと、さらには“自分にとって歌とは?”の質問にも答えてもらった。
取材:石田博嗣

歌い始めたきっけかけが、小学校3年生の時に出会ったゴスペルだったそうですね。

はい。両親がいろんなジャンルの洋楽を聴いていたんで、物心付いた時には音楽が好きになっていたんですね。で、Lauryn Hillが好きだったこともあって『天使にラブ・ソングを2』っていう映画を観たんですけど、ゴスペルを歌っているシーンがあるじゃないですか。そのシーンがものすごく衝撃的だったんです。“何なんだ、この楽しそうな音楽は!? このゴスペルっていう音楽をやってみたい!”って(笑)。それでゴスペルを習うようになったんです。3カ所ほど場所は変わったんですけど、高校1年生ぐらいまでやってましたね。

では、歌手になりたいと思った動機は?

音楽に携わるお仕事をしたいっていうのは、ほんと幼少の頃から思ってたんですけど、ゴスペルに出会うまでの私はものすごく引っ込み思案だったんですね。人前で歌うのなんてとんでもなかったし…何でもそうだったんですけど、人前でやるってなると萎縮しちゃって何もできなくなるんです。だから、“私なんてダメだ”ってずっと思ってたんです。でも、ゴスペルを習うようになって、そこのリーダーっていうか、ディレクターがいつも隅っこで歌っている私のことをすごく気に入ってくれて、演奏会で『Oh Happy Days』のソロを歌ってみないかっておっしゃってくださったんですよ。私は“絶対に嫌です”って泣きながら断っていたんですけど、3カ月ぐらいずーっと説得し続けてくれたんで、さすがに断り続けるのも悪いと思って、“じゃあ、分かりました。練習の場所で一回だけなら歌ってみます”って言ったんです。で、勇気を振り絞って歌ってみたら…その時って私は小学校4年生になるぐらいで、周りは30代後半の方がほとんどだったんですけど、その方たちが拍手をくれて、涙してくれたんですね。その光景を見た時に、初めて人に認められたと思ったんです。それと同時にものすごい快感を覚えて…経験したことのない感動をしたっていうか、“私にでもこんなことができるんだ!”と思って、“歌手にならないと”って決心したんです。

そして、念願が叶ってシングル「All for you」でデビューという。

デビューが決まった時は、ほんとうれしかったです。もちろん歌手になるために頑張ってきたんですけど、デビューシングルが出せるって決まった時は“まさか私がデビューできるなんて! すごい!”って(笑)。でも、まだ歌手としてのスタートに立ったばかりというか、“ここからなんだな”っていうのも思いましたね。

そのデビュー曲「All for you」なのですが、曲をもらった時にどんな印象を受けましたか?

初恋の曲だと思ったんです。だから、自分の初恋の経験を重ねながら歌いました。カップリングの2曲もそうなんですけど…今、私は19歳なんですね。少ないながらも歌のテーマが実経験できていることだったので、自分とリンクさせやすかったですね。なので、現在進行形で初恋をしている人はもちろんなんですけど、初恋の経験のある人は、その時の思い出とか気持ちを思い浮かべながら聴いていただけれるとうれしいです。

やはり歌う時には抑揚を付けたりして、声にも表情を出すことを意識しました?

最初はそうですね。まずメロディーをちゃんと覚えて、しっかりと自分の中に染み込ませてから、気持ちを入れたり、テクニックの部分を意識しました。特にサビは、どうやったら聴いた人が振り返るか…“なんだ? 今の言葉は!”みたいになったらいいなと思って、その人の気持ちにどうすれば入り込むことができるのかを考えて歌いましたね。テクニックはもちろん必要なんですけど、気持ちが入っていないと伝わらないので、そのバランスにこだわったというか、そこは周りのスタッフさんにも聴いてもらいながら歌いました。

続く2曲目の「ポケット」は?

すごく大きな愛をテーマにした曲だと思うんですけど、この曲の主人公はゴスペルに出会う前の自分に似ているなって。《何もかも中途半端》っていうフレーズが最初にあるじゃないですか。私自身がそうだったし、サビにもあるんですけど、“何をやってもダメだ”って実際に思っていたので。だから、“夢があったら諦めないで、信じて努力すれば必ず叶う”っていうことを、その頑張っている姿を誰かが見ているっていうことを、歌に込めてレコーディングしました。

確かに、主人公の意志の強さを感じる歌声でした。

私自身もこの曲はものすごく好きなんで、たくさんの方に聴いていただければなって思ってます。特にネガティブな気持ちになっている人に届けて、勇気を持ってもらいたいです。

3曲目「始まりの合図」はどうでしたか? 切なさと儚さがあるけど、力強さを感じる歌でしたが。

『ポケット』と『始まりの合図』は精神面の曲だと思うんですね。で、『始まりの合図』はちょっと大人な曲で、人生における出会いをテーマにしていると思うんです。人生って出会いと別れがあって、また新しい出会いがあるっていうふうに、すごくたくさんの出会いと別れを繰り返すじゃないですか。で、それを経験して自分がステップアップするっていう。だから、別れって辛くて、悲しくて、うまく前に進めなくなってしまうことだけど、それで終わりじゃないし、今からが新しいスタートなんだって思って、そういうメッセージを歌に込めました。

なるほど。ちなみに、この3曲のコーラスも自分で?

そうです。ゴスペルをやっている経験が活かせました(笑)。私の解釈だけじゃなくて、周りの人からもアドバイスをもらってやっていたし…特に『ポケット』はコーラスがたくさんあるんですけど、ちゃんと自分が表現したいようにできたかなって思っています。

本作は3曲3様なので、いろいろな角度から自分を見せれたという感じですか?

はい。私の内面にあることを歌っている3曲なので、このシングルを聴いて“あっ、こういう人なんだ”って知ってもらえればいいなって思います。今は楽曲を提供してもらって、歌詞も書いていただいているんですけど、作詞の勉強をしているし、作曲もやりたいと思っているので、ゆくゆくは自分の楽曲を出せるようになりたいと思っています。

頼もしいですね。そんな歌なのですが、史果さんにとってどういうものですか?

呼吸ですね。呼吸しないと人って生きられないじゃないですか。それに私自身が歌で変わることができたし、私にとって歌はなくてはならないものなので、歌がなくなってしまうと私自身もなくなってしまいます(笑)
佐藤史果 プロフィール

サトウフミカ:透明感あふれるハーフトーンヴォイスとブラックミュージックが持つ豊かなフィーリングを併せ持ったヴォーカルが集めるニューカマー。2011年4月にシングル「All for you」でデビュー。オフィシャルHP

OKMusic編集部

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