【スネオへアー】嘘でも突き抜けてや
りたい!…って感じ

セルフタイトルを掲げる、約3年振りのアルバムが完成! 現在の自身の気持ちを投影したような幸福感に満ちた作品であり、シンプルなバンドサウンドによって躍動感あふれる一枚に仕上がっている。そういったものを作った真意に迫った。
取材:石田博嗣

ご結婚おめでとうございます! その幸福感がアルバムから感じられましたよ。

ありがとうございます(笑)。より今の気持ちを正直に歌っていきたいって思って…もちろん、いろんな感情があるんですけど、ただ楽しいだけでいいじゃないかって。今って辛い時代っていうか、先が見えない時代になっちゃってるんで。

だからこそ、こういう幸福感や温もりのあるアルバムになったと。

『家庭に入ろう』なんてダイレクトですからね(笑)。全体的なサウンドも、あまりギスギスとしたものは作りたくなかったんですよ。だから、エレキギターもあまり弾いてないですし、アコースティックなものでアレンジしていきましたね。別にエコについて歌うつもりはないんですけど(笑)、Bメロで歪んだギターが入ってくるような構成に飽きちゃってて。自分が音楽が好きだってところで、全開で音楽を楽しむっていうのが正しい姿勢なのかなって思っているので、そういう意味ではシンプルな構成でやっていくのが、今は一番盛り上がれるんですよね。

昨年出したミニアルバム『逆様ブリッジ』のインタビューの時に、いち音楽好きに戻れたとおっしゃっていましたが、そのモードがずっと持続しているという感じですね。

ああ、そうですね。子供が楽器を初めて手にした時って、音を出したいっていう衝動から、適当なメロディーを付けて歌ったりすると思うんですけど、そういうところから始まった感じですね。なので、そこからさらに突っ込んだ作業でした。とにかく、長く聴いてもらえるものを作りたかったんですよ。

長く聴いてもらうためには、どういうものを作ろうと?

まずは自分の中で鳴っている音を正直に出す…プロデューサー的な目線で客観視するよりも、いちシンガーソングライターというところで正直に自分の気持ちを出していくことが大前提だと。あとは、ずっとAORのようないいメロディーのものをやりたいと思っているんですね。いいメロディーって人によってさまざまと思うんですけど、自分がグッとくるもの…自分が盛り上がってないと、その波動っていうのは出ないですから。それが根本にありますね。だから、頭の中で考えたり、構築したり、ねじ曲げたりすることって必要じゃないと思っていて。自分の中から出てくるものをすぐに聴いてもらいたいっていう想いがあったので、よりシンプルに、ダイレクトにっていうものになったのかもしれないですね。

一緒に情熱というバンドをやられているサニーデイ・サービスの田中 貴さんが共同プロデュースとして参加されているせいか、バンド感や生々しさもすごく感じました。

合宿をやったんですね。僕が家で録り溜めていた細かいメロディーみたいなものを何十曲も持って行ったんですけど、“こういうの好きだったよね”とか言いながらいろんな音楽を聴き合ったり、実際に音を出したりして、デモの曲のアレンジを考えたりしたんで、それぞれが持っている良さが出るし、よりバンド的になっていると思いますね。ちゃんと共通した意識を持って制作に参加してもらいたいっていう想いがあったから…例えば、今回は激しい音色はあまり出したくないとか、シンプルな構成でアレンジを組み立てたいとか、そういう話をしながら作っていったから、輪郭があるんですよ。なんか、鉄を叩きながら強くしていったみたいな。より人の姿が見えてくる、手触り感のあるようなものをやりたかったんです。それが自分にとってすごく新鮮だった。家でやると打ち込みでやるんですけど、それを人力でやるから…パーカッションなんか必死でやってましたからね。メキシコのボクサーのような動きでしたよ(笑)。それを見て最初は“面白いけど、それはあり得ないな~”とか言ってるんですけど、そのうち“あれ? でも、この人力感は来るよね。いいじゃん!”ってなったり。

そうやって楽しんで作れたからこそ、奥様とデュエットする「家庭に入ろう」みたいな曲が入ってもいいだろうと?(笑)

大の大人が本気で楽しいんで作ったものにしたいっていうか、やるんだったらやり込んじゃおうって(笑)。先が見えない時代になっちゃって、そんなにいいことは起こらないって、みんな分かっていると思うんですよ。だからこそ、嘘でも突き抜けてやりたい!…って感じですかね。いずれ死ぬわけだから、流れている時間の中で“今”をより意識したい。いい事っていうのはそこで成立してるわけだから歌う必要はないと、今まで思ってたんですけど、現実が辛すぎるっていうか、不確かなものばかりだから、陰の部分を歌うっていうのが全然ピンとこないんです。むしろ、光の部分…楽しい気持ちとか、そういう方向になるような、自分の中にある気持ちを歌うほうが、今の時代の中では輪郭を帯びてはっきりと写る。やっぱり、陰のある言葉は聴きたくないってどこかで思ってるんですよ。辛いことばかりで嫌だなって。

7作目にしてセルフタイトルなわけですが、それだけ自分の想いを出せたということですね。

そうですね。あと、レーベルとマネージメントがなくなって、“これからどうしようかな?”って思っていた時に、キングレコードさんに声をかけてもらって、出せるとは思ってなかったアルバムまで出すことができたので、今の環境がありがたいし、発信できることがうれしいし、そういう気持ちでメンバーと制作をやってきたから、満を持してっていうか、図々しくも自分の名前を付けた…まぁ、そういうことですよね。ほんと、一枚目みたいな感じなんですよ。

いち音楽好きに戻ったことで、初期騒動みたいなものも詰まってますしね。すごく、吹っ切れているし。

僕は“重心が低い”って言い方をしてるんですけど、確かに吹っ切れていますよね。激しい音色とか、アンプでデカい音を出さなくても、やさしいメロディーや言葉であっても、その裏側にある気持ちを聴いてもらいたいですね。今まで聴いてくれていた人が『家庭に入ろう』を聴くとアホなことをやってると思うんですけど、“スネオのことだから何かあるな”って裏を読んでもらえると…そういう関係作りはしてきたつもりなんで、きっと分かってもらえると思ってます。
『スネオヘアー』2011年08月24日発売StarChild/KING RECORDS
    • 初回限定盤(DVD付)
    • KICS-91690 3300円
    • 通常盤
    • KICS-1690 3000円
スネオヘアー プロフィール

新潟県長岡市出身の渡辺健二による一人プロジェクト。2002年メジャーデビュー。自身の音楽活動の傍ら、YUKI、新垣結衣、坂本真綾らへの楽曲提供やサウンドプロデュース、サントラ/CM音楽の制作や映画出演などでも幅広く活躍。その独特の存在感は音楽界のみに留まらず、各界のクリエイターや俳優・タレントからも注目を集めている。役者としても、『犬と歩けば~チロリとタムラ』(2003年/篠崎誠)、『非女子図鑑』(2009/豊島圭介:エピソード「占いタマエ!」)、『つむじ風食堂の夜』(2009年/篠原哲雄)など多数出演。2015年6月、自身の作品を発表する場、新しいプライベート・レーベル「Tundra」を立ち上げ、アルバム『ツンドラ』発売(会場・通信販売限定発売中)。2016年5月には、9枚目のフルアルバム『0(ラブ)』をキングレコードよりリリース。オフィシャルHP
公式サイト(レーベル)

OKMusic編集部

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