L→R MICRO(MC)、U‐ICHI(DJ)、KURO(MC)

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【HOME MADE 家族】今持ってるものを
出し切れた
三位一体のアルバム

HOME MADE 家族が約1年半振りに作り上げた6枚目のアルバム『AKATSUKI』。これまで彼らが培ってきたもの、そして震災を通じて感じた新たな思いが楽曲の端々に詰まりまくっている。そんな3人のエナジーが伝わる作品について話を訊いた。
取材:土屋恵介

震災があって改めて音楽の尊さ
音楽をやれる喜びが分かった

新作『AKATSUKI』はHOME MADE 家族が次の一歩を踏み出した、力強さを感じさせる作品となりました。アルバムを作っていく時、どんな思いがありましたか?

KURO
これほど、正直に音楽に向き合った作品はないかもしれないですね。もちろん、これまでも一生懸命やってたけど、やっぱり3.11があって、今まで聴いてた音楽も違って聴こえるし、これから歌うことも考え直さなきゃいけないと思えたし。実際、音楽イベントの中止とか、音楽が拒絶される風潮があって、僕らが信じてやってきたものが今一番必要じゃないのかも?と思えたりでショックでしたね。でも、そうじゃないはずだって思いを抱きつつツアーを始めたんです。そしたら、音楽を待ち望んでる人がたくさんいると分かったし、チャリティーをやってみて、希望があると思えたんです。ツアーで感じたこと、もう一度音楽に向き合ったことが、一曲一曲込められたアルバムになりましたね。

自分たちの音楽に対して、3人で語り合いました?

KURO
たくさん語りましたね。一曲ごとのメッセージにしろ、たくさん3人で話し合いながら作っていったんです。
MICRO
震災が起きて、改めて音楽って尊いものだと思ったし、その上で音楽をやれる喜びが分かって、3人のやりたいことが合致したんです。なので、今までで一番楽しく制作できました。今回アッパーな曲が多いけど、それはメッセージの伝え方、みんなの背中の押し方が、必ずしも“頑張ろう”とか言葉じゃなくてもいいと思ったからなんです。僕らが楽しいと思う楽曲を作って、それをライヴで観たり、聴いたりした人たちが笑顔になる。そういうメッセージの届け方もある。いつも以上にみんなで楽しむツアーになればって、そこまで想像しながら制作しましたね。
U-ICHI
トラックは変に統一感を持たせるより、一曲一曲の個性を活かしたものにしたんです。今まで、わりと決め込んで作るスタイルが多かったけど、まずやりたい音をひたすら作った。でも、曲作りって本来こうだよなって思えましたね。ずっと作り続ける中でいろんな知識が入ってきたけど、それは置いといて、純粋に楽しみながら自信のあるものを作れたなって。

確かに、歌もラップも音も、全てが突き抜けるパワーがありました。では、アルバムの柱になる曲はありましたか?

MICRO
やっぱり「スターとライン」ですね。この前のツアーでも完成形じゃないまま歌ってたんです。そこにツアーで感じたものを反映させて完成させたんですよ。「スターとライン」が“AKATSUKI”ってタイトルを引っ張ってくれたし、他の楽曲を集めてくれた感覚がありますね。

「スターとライン」の歌詞は、迷いがありながらも明日に進んでいく思いが書かれてますよね。

KURO
MICROの作ったメロディーに言葉をはめた時“スターとライン”って言葉が降ってきて、歌詞をバーッと書いたんです。“スターとライン”をカタカナとひらがなに分けたのは、輝いてる人を見ることで自分も頑張れる、僕も頑張ることで、僕の存在や背中が誰かの励みになる。輝く空の星のように自分もなりたいと思うなら、足下のラインを一歩越えることが“スタートライン”なんだよって意味を込めたくて、その表記したんです。
MICRO
U-ICHIのトラックを聴いて、哀愁があふれていて力強かったんで、言葉をぶつけるようなサビが合いそうだなってメロディーを付けたんです。あと、歌詞の2番目のサビは、ライヴでやってた時は違ったんです。“今日から輝くんだ!”っていう前向きさが、ライヴを経過してできたのは良かったと思いますね。
U-ICHI
トラックは、「FREEDOM」がアガるロックだったけど、それとは違う切り口のロック感を出そうとしたんです。あと、これは曲調は違うけど、デビューした頃のテンポ感で、このくらいのBPMは僕らと相性がいいなと改めて思いましたね。

そういう意味では、自分たちの“スタートライン”のBPMにも被ってるんですね。アルバムはギター音や、ロック感が全体的に多いですね。

U-ICHI
それは、力強さを出したかったし、今までやってこなかった音に挑戦したかったからなんです。

3人が知恵を振り絞って
一枚の絵を描いたような気がする

ラテンのグルーブで持っていく「So So Hot !!!」、パワフルな4つ打ちチューン「情熱のスイッチ」、ロックンロールとエレクトロがミックスした「BODY PARTY」など、まさにライヴ映えするアップチューンが多いですね。「STAY GOLD」は自分たちの歴史と心の中にある変わらない気持ちを歌う、ワンループで押してくトラックのドラマチックなナンバーですね。

MICRO
トラックはKUROの弟が作ったんですけど、カッコ良くて音に引っ張られて、このタイトルと内容が出てきたんです。震災の影響で音楽の大事さを改めて思えたからこそ、昔を振り返ることができた。インディーズの頃は、みんなバイトしながらやってて大変だったけど楽しかったし、アグレッシブに動いてたんです。その頃の自分たちが今の僕たちを見て、“もっと頑張れるでしょ”って言う瞬間があったかもしれない。”いや、やってるよ”とも言いたいし。あと、音楽の尊さを知ったからこそ、あの時の情熱を忘れちゃいけないし、忘れてるつもりもない。それを今あえて言いたかったんです。これって大事だよなって。
KURO
熱い曲なんだけどジーンとくる、僕的には泣きの曲だと思ってるんです。昔の必死にやってた時の気持ち、それが僕らの原点だし、まさにお金じゃなくて大切な宝物だなって。やっぱり本当の金は磨いてなきゃいけないんだと思いますね。

アルバムには、さわやかな「No.1」、温かいメロディーのミッドチューン「僕はここにいる」といった楽曲も入ってます。ソウルフレイバーのサウンドの上で、過去現在未来を力強くラップする「ギフト」は、今まで以上に広い視点で作られた曲ですね。

MICRO
こういう曲は初ですね。U-ICHIのカッコ良いトラックにKUROがテーマとサビを乗せて、これは間違いない曲になるなと思いました。こういうテーマって、今の年齢になったから歌えると思うんです。僕らは「サルビアのつぼみ」とかで、親に対するラブソングとかは結構歌ってきたんです。今度、次の世代にパスするってものを書くにあたって、自分の書くバースは今回一番時間がかかりましたね。トラックの世界観は崩さず、未来の子供たちに自分たちがバトンをパスしていく、ちゃんとしたメッセージを残したい。そのバランスを考えていくと時間がかかってしまった。この歌は意味も深いし、音の響きもカッコ良いし、すごくヒップホップだし。自分たちの軸でありながら、新しいとこに一歩行けたのがすごくいいなと思います。
KURO
やっぱり大人がちゃんとしないとなって思いますね(笑)。自分たちが今ここにいるのは、誰かが作ってくれた礎の上に成り立ってるし、僕もそういう意味での“ギフト”をもらったからには一生懸命やらなきゃいけないし、その“ギフト”を次の世代に受け渡さなきゃいけない。ずっと、つながってるものだよってことを訴えたいと思いましたね。

「ほんと、自分たちがしっかりしなければ、今の世の中いろいろ怖いなと思うところがありますからね。

KURO
そうしたことも比喩できたし、大事なメッセージを込められた曲になったのは良かったと思います。
U-ICHI
こういうトラックを、ずっと作りたかったけどなかなかできなかったんです。それがやっとできてうれしかったですね。今回ロックっぽいものが多かったので、ガツンとヒップホップなものもやりたかったし。熱さと哀愁とが上手く出るトラックができて良かったです。

まさに、アルバムのキモになる曲ですよね。で、最後はディスコなパーティチューンの「Rolling Stone」で締めると。

KURO
最後はアガっていこうと。“自分たちは転がりながらやっていくぞ”っていうショー・マスト・ゴー・オンな姿勢が出た曲です。

今のHOME MADE 家族の思いが存分に詰まった作品を作り上げてみて、どんな思いがありますか?

MICRO
ほんと“良いものできた! 早くみんなに聴かせたい!”って思いが強いですね。ファンの方はもちろんだけど、僕らを知らない人、昔好きだった人とか、あと“HOME MADE 家族ってこういうイメージだよね”って人にも、新しく聴けると思うんです。僕らって、ほっこりしたグループってイメージがあって、そこも自分らのいいとこではあるけど、それだけが全てじゃないし。とにかく新しい気持ちで聴いてもらえたらと思いますね。
KURO
ほんとに満足してます。次回作が大変だなって(笑)。それくらい今持ってるものを出し切れたんですよね。あと、3人がひとつに合わさった力強さってすごいなと改めて思いました。やっぱり、誰かひとり突出してるだけではダメで、3人がそれぞれ持ち場を最高に受け持って、かつ、擦り合せたのがこのアルバム。その強さを自分で感じたんです。なんか、3人で知恵を振り絞って一枚の絵を描いた気がして、その大切さにハッと気が付きましたね。三位一体のアルバムですね。今まで僕らを聴いたことがない人でも、ここから聴いてもらってもいいんじゃないかと思います(笑)。
U-ICHI
より多くの人に聴いてほしいですね。それだけの気持ちの入った楽曲が作れたなって。僕らもアルバムは6枚目だし、デビューしてからリリースは多いほうではあるんですけど、そのうちの1個と思わずに聴いてほしいなって。

“AKATSUKI”というタイトル通り、ここから新しい太陽が昇ってくような、グループとしてのターニングポイントになる作品のような気がしますね。さて、10月9日には第2回目の『家族Fes. 2011』が開催されますが。

MICRO
去年が土砂降りだったので、今年は晴れます(笑)。去年は大雨という特殊演出があって、途中中断しつつみんなが困難を乗り越えたところでの一体感が生まれたフェスだったけど、今年は普通にステージのパフォーマンスで、去年よりも大きな感動を生みたいですね。そのワクワク感がありますよ。今年もヒップホップからバンドなど、幅広いいいメンツが揃っているので楽しみです。期待してほしいですね。

そして、アルバムツアーがありますが、来年まで続くロングツアーですね。

MICRO
こういう長いツアーをやりたかったんですよ。今って音楽が手軽になってきてるじゃないですか。どこでも聴こうと思えば聴けるし。その分、ミュージシャンは自分たちの足を使ってライヴをしていかないとなって。どんなに音楽が手軽になってもライヴはそうならない。自分たちが音楽の楽しさを届けていかないとなって。音楽業界の景気が良くないとか言っててもしょうがないし。だったら、自分たちで出向いて“いいね”と思う人をひとりでも増やすほうがいいと思うんです。もともと、僕らはそうやって来たんだし、直接届けていきたいんですよね。こういう状況は、むしろチャンスじゃないかなと思ってライヴをやりたいです。
KURO
いつもライヴの草案はU-ICHIが考えてくれて、それをみんなで修正していくんです。個人的には何ヵ所かでヒップホップ然としたことをやってみたいなって。ターンテーブル2枚使いとか、ヒップホップマナーのグルーブで作る盛り上げ方、曲と曲のつなぎ方とかをやりたいなって。今回、そういうことができそうな曲が多いので、いい流れを観せられるツアーにしたいですね。
U-ICHI
結構、『AKATSUKI』の一曲一曲って、強いものを持ってると思うので、それをさらによりよく観せられるライヴにしたいなと思います。もちろん、今までの楽曲も織り交ぜつつ、プラスアルファの面白さが見せられるライヴになったらなと思ってます。
MICRO
とにかく熱のこもったツアーにしたいので、ぜひ楽しみに待っていてほしいですね。
HOME MADE 家族 プロフィール

HOME MADE 家族は04年にアルバム『Oooh! 家〜!』でデビューすると、そこに生じるさまざまな弊害をものともせず、ひたすら我が道を邁進してきた。この個性の立った3人組が持つヴァイタリティは他のアーティストの誰もが見習うべきものだろう。
ファンキーでハスキーな声を操るMICRO、テナー・ヴォイスの速射ラップで聴き手の気持ちを鼓舞させるKURO(このふたりはバイリンガルでもある)の両人はスキルを素地にしてその上でオリジナリティとユーモアをダンスさせるようなラップを展開する。そのかけ合いも絶妙だ。さらにDJ U-ICHIが紡ぎ出す、メロディックさと力強さを一緒くたにしたような、満開な楽しさとホロ苦い哀愁を同居させたようなトラック群も耳に美味しい仕上がりだ。
大・中・小という身体的特徴が良く語られるこのヒップホップ・トリオだが、その音楽性の高さはU-ICHIの身長(約190cm)以上に群を抜いている。そんな彼らが約1年ぶりに完成させた2nd『ROCK THE WORLD』(05年)も聴き逃し厳禁のハイ・クオリティ作だ。オフィシャルHP
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OKMusic編集部

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