【氷室京介】『KYOSUKE HIMURO LAST
GIGS』2016年5月23日 at 東京ドーム

取材:池田スカオ和宏

 この4大ドームツアー『KYOSUKE HIMURO LAST GIGS』を最後に、無期限のライヴ活動休止に入ることを明言していた氷室京介。その最終公演が5月23日に東京ドームにて行なわれた。

 氷室自身、これまで以上にステージや会場との共有感を楽しんでいるように映った、この日。集まった5万5,000人のひとりひとりが、このツアー最多となる全35曲を、終始一緒に熱唱した。

 客電が落ち、ステージ左右のスクリーンに過去のライヴ場面をフラッシュバックさせた映像が流れ出す。大歓声の中、ステージに現われた氷室。1曲目の「Dreamin'」を皮切りに頭の9曲はBOØWY時代のナンバーが歌われた。1曲目から会場中も大合唱。のっけからとてつもない一体感が生み出されていく。続けて、スリリングさがたまらない「RUNAWAY TRAIN」、土着性あふれるビートが特徴的な「BLUE VACATION」を、まずは熱唱。

 “35年の歴史の中、みんなに聴いてもらいたい曲をたっぷり用意してきた。最後まで楽しんでほしい”と、これからの長い夜に思いを馳せさせるMCのあとも、ドライブ感を会場に呼び込んだ「ハイウェイに乗る前に」、カウパンクノリのビートで会場を躍らせた「BABY ACTION」、“BOØWYの数あるアルバムの中、作品的にも当時の自分たちの心持ちや背景、意欲も含め、バンドがプロとして確立していく上でも大好きな作品だった”と告げると、そのBOØWY4枚目のアルバム『JUST A HERO』の中から、「ROUGE OF GRAY」「WELCOME TO THE TWILIGHT」「ミス・ミステリー・レディ」の3曲が続けて歌われた。

 続いては、歌がじっくりと会場中に染み渡るように広がった「IF YOU WANT」、《もうあれ程誰かを 大切に想う事 二度とはないだろう》のリリックも、この日はなおのこと胸に響いた「LOVER'S DAY」と、今春発売のベスト盤『L'EPILOGUE』収録のナンバーが歌われた。

 愛しさを会場中に広がらせた「CLOUDY HEART」(BOØWY)以降は、BOØWY時代のナンバー、自身の楽曲がブロック毎で披露された。「PARACHUTE」においては歌唱後、同曲の作詞者でもあるGLAYのTAKUROとL.A.にて、B'zの松本孝弘を交え3人で焼き肉を食べた際について言及。TAKUROからの、今後ライヴを行なわないことへの遺憾を込めた、今後の身の振り方への問いに、“還暦にはアルバムを作るよ”と答えたと、場内に和やかさをもたらせる。続けて語られた、“時間はかかるだろうけど、待っていてほしい”の締めのひと言には、今後もしっかりと続いていくであろう、会場と氷室との強いアライアンスを感じた。

 “ここからは後半! ビキビキにいくぜ!!”との煽りのあとは、場内にさらなる一体感を培わせた「BANG THE BEAT」を始め、怒涛のヒムロック王道ナンバーが連射される。手拍子と大合唱の中、楽曲の完成を見た「WARRIORS」、中でも、「ONLY YOU」「RENDEZ-VOUZ」「BEAT SWEET」「PLASTIC BOMB」のBOØWY疾走ナンバーの連射には、会場中も合わせて熱唱。この場にいる全員が拳を天に力強く突きあげ歌う場内の光景も印象的であった。

 特効も交わりさらに沸騰する場内とともに、「WILD AT NIGHT」「WILD ROMANCE」と、盛り上がりナンバー2連発を経て、本編最後は“この歌から始まりました!”とのシャウトのあと、ソロデビューシングル曲「ANGEL」が誇らしげに、気高く歌われた。

 1回目のアンコールにて、まずは“この東京ドームでは、区切り区切りでやらせてもらったけど、今日が一番最高だね”と告げた氷室。東京ドームでのライヴ回数の男性ソロアーティスト最多を誇る彼だが、3デイズは今回が初。最後まで自分の限界の先に挑み続ける、まるでアスリートのような彼のストイックさを改めて思い起こさせた。

 ンバー紹介のあとは、人気ナンバーやヒットナンバーが次々と飛び出した。“懐かしいヤツをいくぜ!”と言って放たれた「NO.NEW YORK」(BOØWY)では、いわずもがな場内も大合唱。氷室も嬉しそうにサビの部分では客席にマイクを預ける。

 ダブルアンコールでの鉄板の人気ナンバー4連発を経てのトリプルアンコールでは、さらに熱狂の火に油を注いだ「SEX & CLASH & ROCK'N'ROLL」、ラストは「B・BLUE」(BOØWY)を会場とともに歌い切り、満場からの温かい感謝の拍手の中、“やり切った”とでも言っているかのような満足そうな表情とともに、氷室京介は、ゆっくりとステージを去っていった。

セットリスト

  1. DREAMIN'
  2. RUNAWAY TRAIN
  3. BLUE VACATION
  4. ハイウェイに乗る前に
  5. BABY ACTION
  6. ROUGE OF GRAY
  7. WELCOME TO THE TWILIGHT
  8. ミス・ミステリー・レディ
  9. "16"
  10. IF YOU WANT
  11. LOVER'S DAY
  12. CLOUDY HEART
  13. LOVE & GAME
  14. PARACHUTE
  15. BANG THE BEAT
  16. WARRIORS
  17. NATIVE STRANGER
  18. ONLY YOU
  19. RENDEZ-VOUZ
  20. BEAT SWEET
  21. PLASTIC BOMB
  22. WILD AT NIGHT
  23. WILD ROMANCE
  24. ANGEL
  25. <ENCORE1>
  26. The Sun Also Rises
  27. 魂を抱いてくれ
  28. IN THE NUDE
  29. JEALOUSYを眠らせて
  30. NO.NEW YORK
  31. <ENCORE2>
  32. VIRGIN BEAT
  33. KISS ME
  34. ROXY
  35. SUMMER GAME
  36. <ENCORE3>
  37. SEX & CLASH & ROCK'N'ROLL
  38. B・BLUE
BOØWY プロフィール

80年代以降の日本音楽シーンに絶大な影響を及ぼしたグレイトなビートロック・バンド。GLAYやLUNA SEAなどミュージック・シーンを席捲したモンスター・バンドも、彼らの存在なしでは考えられなかっただろう。
81年、氷室京介(vo)と布袋寅泰(g)を中心に結成。「暴威」と名乗っていたことからもわかる通り、活動当初はニューウェイヴ/パンク色が濃厚であった。やがて、高橋まこと(dr)が新加入し、松井常松(b)との最強のリズム隊が誕生。82年には「BOΦWY」と改名して、アルバム『MORAL』でデビューを果たす。が、ライヴにおける定番ナンバー「NO N.Y.」や「イメージ・ダウン」など、佳曲揃いの秀逸な作品であったにもかかわらず、セールス的にはふるわなかった。しかし、85年に発表された3rdアルバム『BOΦWY』より、がらりと風向きが変わる。歌謡曲的なウェット感すら漂うメロディ、ストイックなまでにエッジの効いた8ビート・サウンドが明確化——そして、以降も『ジャスト・ア・ヒーロー』『ビート・エモーション』といった傑作を次々にリリース、絶大な人気を獲得していく。その性急なまでのタテノリ・ビートは、ロックに飢えたキッズの心を完全に掌握。とくに、布袋のシンプルでいて超メロディアスなギター・プレイは、多くの男子中高生がギターを手にするきっかけとなったといえよう。だがしかし、最高傑作と名高い『PSYCHOPATH』リリース後の88年、人気絶頂のさなか解散。7年にわたる熱い活動に終止符を打つ。Boowy オフィシャルHP(レーベル)
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氷室京介 プロフィール

キング・オブ・ビートロックの名をほしいままにするNo.1ロック・ヴォーカリスト。
BOOWYのメンバーとして、82年にデビュー。ナルシスティックなヴォーカル・スタイル、性急なまでのタテのりビート、布袋寅泰による鋭いカッティング・ギターで、日本を代表するロック・バンドとなる。がしかし、人気絶頂の88年に東京ドーム公演を最後に解散。その後すぐさまソロ活動をスタートさせた氷室は、同年、1stアルバム『フラワーズ・フォー・アルジャーノン』を発表する。同名SF小説に触発された、ロマンティシズム漂う詞世界も聴きどころ。バンド時代とはまったく異なるアプローチで、ソロ・アーティスト氷室京介を強烈にアピールした。翌年には、『ネオ・ファッショ』をリリース。政治、戦争、環境、愛……人類や全世界をテーマとした壮大かつディープなコンセプト・アルバムであり、へヴィな作家性と高度なポップ性が同居した傑作アルバムに仕上がった。
90年代に入ってからも、軽々とヒットを連発していくヒムロック。93年発表のアルバム『メモリーズ・オブ・ブルー』は、ポップ性を全面に打ち出した自他共に認める最高傑作で、160万枚ものビッグ・セールスを挙げた。また98年には、約4年ぶりに全国ツアーを敢行、全13公演で21万人動員という記録を樹立している。現在ロサンゼルスに在住。——日本のシーンを俯瞰的に見据えつつ、「アメリカン・ロックのテイスト」と「日本独自のメロディ」の新しい融合を試みている。氷室京介 オフィシャルHP(アーティスト)
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氷室京介 オフィシャルYouTube
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