【泉 沙世子】きっかけになれる歌、
求められる人を目指したい
その情感豊かな歌声、大胆さと繊細さを併せ持つ独特の存在感。『Dream Vocal Audition』でのパフォーマンスは、本当に鮮烈だった。要注目!の魂のシンガーソングライター、泉 沙世子ーーついに堂々のデビュー!!
取材:竹内美保
グランプリ受賞者3名の中からトップを切ってのデビューですが。そのお話を聞いた時、どのように受け止めましたか?
ちょっと予想外だったので、“えっ、そうなんだ!?”という感じで驚きもありました。でも、プレッシャーというよりは、ワクワクソワソワする気持ちが強かったです。
その気持ちのまま、ご自分のペースで進んでいけましたか? 正式なデビューが決まってからの道のりは。
はい。曲も歌詞もすっと書けたので、すごく納得のいくものができましたし、プロの方々の手をたくさんお借りして、本当にお気に入りの作品ができました。
すっと書けて納得のいくものができたということは、歌いたいことや作りたい曲が早い段階で見えていたのですか?
もともと自分の悩んでいる部分とか、弱い部分を見せることで、聴いてくださった人に“安心”という意味での共感をしていただけるような曲を作っていきたい思いがずっとあったんです。で、『スクランブル』は『カラスの親指』という映画のイメージソングのお話をいただいて書き下ろした楽曲なんですが、それに合わせて書いたというよりは、もともと自分が書きたかったことがすごくストーリーとリンクしたので書きやすかった、というのはあります。
とはいえ、言葉や表現の吟味はされたのでは?
満足していない状況だったり、後悔している過去から抜け出したい、前に進みたい気持ちに相応しい言葉として、原作にも出てくる《飛びたい》という表現をサビ頭に選びました。そして、“飛びたい”という感情がなぜ出てくるのかを考えた時に、渋谷のスクランブル交差点で感じた人波に溺れるような、モヤっとするような感覚を思い出して。そこから抜け出して飛びたい、というイメージを描いて、書き上げていきました。
《生き直す》という表現がありますよね、歌詞の中に。“やり直す”ではないところにも泉さんの思いが象徴されているような。
耳馴染みがない言葉なので、メロディーに乗せた時にうまく伝わるのかなということも考えたんですけど、“やり直す”というすっと流れる言葉ではなくて、本当に覚悟を持ってリセットしたり、前に進みたいという、より強い気持ち…引っかかりのある言葉が欲しかったんです。“この言葉じゃないと嫌だな”と思って入れた言葉なので、そう言っていただけるのはうれしいです。
2番と3番のサビで“覚悟”という言葉も出てきますし、この言葉じゃないと嫌だというお気持ちもすごく分かります。
ざっくり捉える人にとっては“どっちでもええやん”というものであったりするのかなと思うんですけど、ニュアンスが微妙に違う部分というのは大切にしたいので。やっぱり“この言葉を使いたい”“この言葉がいい”っていうものを選んで表現していきたいですね。“やり直す”ってどこか過去とつながっている気がしてしまって、しんどいような気がするんですけど、“生き直す”だと本気でヤル気になれるというか、“やってみようかな”と思える希望がある…可能性を感じられると思って、この言葉を選びました。
レコーディングに対しては、どのような姿勢で臨みましたか?
すごく豪華なオケだったので、最初歌入れする時は“オケのノリに合わせないと”みたいな気持ちがあったんですけど、そうするとすごく難しくて…。でも、ディレクターさんが“自分の好きなように歌って”って言ってくださったので自由に歌ってみたら、“それ、いいじゃない!”って。普段通りに思ったまま歌ったことで、いい結果を生んだみたいです。
これだけゴージャスなアレンジだと、いろんな音に引っ張られそうですもんね。
オケを録っている現場にお邪魔したんですけど、“何人来るんやろ? ミュージシャンの方”って思うくらい入れ替わり立ち替わりで(笑)。しかも、すっごいカッコ良い演奏をなさるので、“これ、ほんまに自分が作った曲なんかな?”みたいな。実は、この曲ってメロディーと歌詞だけだと結構重めなんですけど、すごく新鮮な、でも私がしたいことはまったく崩さずにアレンジも演奏もしていただけて…本当に大好きな一曲になりました。
カップリング「飛行機雲」は泉さんの大好きなウルフルズのウルフルケイスケさんとタッグを組まれていますね。
憧れのウルフルズさんのウルフルケイスケさんがアレンジを手掛けてくださるということを聞いた時は、本当に漫画のように驚いて泣いて(照笑い)。すごくワクワクしました。で、出来上がったアレンジは“あっ! ウルフルズの匂いがする!”という音だったんですけど、そこに自分の声が乗っかると自分のものになる…それがさらにうれしくて。
こちらの歌詞も自分自身と対峙されていますね。
これは高校生くらいの時の自分に向けて書いた歌なんですけど、小さな悩みでもすごく真剣に聞くような気持ちで歌える曲が作れたらなと思って書きました。だから、応援歌みたいな歌詞ではあるんですけど、実は自分が誰かに言ってほしいこと、悩んでいる時に聞きたかった言葉を歌にしています。
では最後に、このデビュー作で泉さんと出会うみなさんへ言葉をいただけますか。
過去に後悔したこととか、今の状況に満足していないとか、夢を追いかけたいという思いであったり…そういういろんな思いを持った、全ての“前に進みたい”という気持ちを抱いている人に伝わればと思います。落ち込んでいる時に立ち直るきっかけになりたいという気持ちもありますし、そういう時に求められるような人になっていきたいなという思いがあるので、その思いが音楽を通して届けばうれしいです。