【泉 沙世子】絶対的な味方だよ、と
いう思いを込めました

心に語りかけてくれるような、歌。そのメッセージの優しさと強さは、聴く人ひとりひとりを温かく包み込んでくれる。「境界線」はシンプルで、だからこそ純度がとても高い、あなたや私のための歌です。
取材:竹内美保

「境界線」は泉さんの温かさがじんわり伝わる楽曲ですね。

この歌は“大きな無償の愛”をイメージして書いたんです。以前からふわっとした構想があったんですけど、主題歌のお話をいただいた『さよならドビュッシー』という映画の主人公が持っている孤独感がその構想にはまって、そこから書き上げていきました。軸になるのは…本当にどうしようもなく辛い時って、人との間に線引きをしてしまうことがあると思うんですけど、そんな時に弱い部分やズルい部分とかどんな部分を出しても、“私は離れないよ、絶対に味方だよ”っていう思いです。で、その無償の愛というのは、しんどい時に私自身が欲しかったものなんですよね。私、心のどこかに不安が常にあって…“本当はこうやねんけど、これを出したら嫌われるかな”というような。それがすごく怖くて、その素の自分を見せた時にも絶対に離れないっていう絶対的な味方というか、大きな愛が欲しかったんです。ですから、私にとってすごく大事な歌なんです。

《あなたを責めない》というフレーズがありますけど、これを言ってもらえたら泣いちゃいます。

もうちょっとで心がグチャってなってしまいそうな時って、相手を責めてるつもりがなくても…例えば、愛情を持っての注意かもしれないし、アドバイスなのかもしれないけれど、何でも責められているように受け取ってしまうことがあるじゃないですか。本当に攻撃されているような。そこで守りに入ってしまうから、どんどん壁が厚くなって、線をガッチリ引いてしまって、ますます弱さを見せないようにしたりとか。

精神的に弱っている時って、特にそうですよね。

ですね。それがどんどん悪循環で、もう壁にも押し潰されそうでアップアップになって。だから、責めないで何でも受け入れて、絶対に離れないっていう…難しいことではあるんですけど、一瞬でもそういう安心感が持てれば…と思うんです。

今、泉さんがおっしゃったような精神状態にある人がこの曲を聴いたら、この曲がそういう心の拠りどころになると思います。自分が一番しんどい時にこの曲に出会っていたらなって、私も思いますし。

あー…ありがとうございます。すごく嬉しいです。これ以上逃げ道がないってところまで行った時に、“堂々と逃げる”とか“堂々と投げ捨てる”ってこともできる…そこにパッと気付けたら、だいぶ楽になるんじゃないかなっていう思いもあって。それは《あなただけは潰れちゃいけない お願い自分を見捨てないで》という部分に込めてあります。

“あなただけ”という言葉は強く響きますね、すごく。

歌っている時も一対一で、私は“みんな”に歌っているんじゃなくて、“あなた”に歌っている、ということを意識しました。だから、ほんとに歌を作るというより…人間を作るじゃないけど、そういうイメージでできた曲ですね。

歌声にも体温を感じます。温かくて、ちょっとキュンとするような。

今回、歌というよりは、しゃべっているというか、朗読というか、そういうイメージで歌いました。曲を作る時に、ピアノ1本でも、もしかしたら声だけでも成り立つぐらいのイメージを描いていたんです。音でガーっと押すのではなく、声が先にスーっと届くような。だから、アレンジも声があって、それをふんわり支えるような感じになっています。

もう1曲の「アイリス」は、自分を鼓舞するきっかけになってくれるような曲ですね。

これは私と同年代ぐらいの女の子を想像して書いたんです。『神戸コレクション/東京ランウェイ』のテーマソングのお話をいただいて、“『神戸コレクション』に来るような女の子ってどういう子かな? 自分との共通部分ってどこかな?”って考えて、そこから書き始めました。で、最初はやけにポジティブになってみたり、それが気持ち悪くてやけに哀愁が漂うものになったり、どっちにも極端に振り切ったりもしたんですけど、最終的にいつも通りのネガティブな部分もありつつ、少しポジティブに前向きに、という方向で作っていきました。恋であったり、夢であったり、自分の目標とすることに対して、先にできない理由を挙げちゃったりするズルい部分もあるけど、でもそれで諦めるんじゃなくて、ちょっとずつでもいいから進んで掴みにいくぞっていう気持ちを描いています。サビの部分に関しては、聴いてくれる人と一緒に合唱できるようなものをイメージしていて。この歌は“私から聴いている人に”という目線ではなくて、私が私に歌うことによって、聴いてくれる人が自分自身に向けて問いかけてもらえるんじゃないかと思いますし、そうすることによって、その思いがどんどん強くなる…そういうふうになればいいなと思っていて。だから、ぜひ一緒に歌ってほしいですね。

差し色のように入るコーラスも素敵でした。

これは苦戦しました(苦笑)。でも、コーラスを入れることによって一気に鮮やかになるので、すごく面白いですね。

ところで、《前へ前へ前へ 一歩踏み出せ》の部分は、ランウエイを思い起こしたのですが。

おぉー! なるほど! それはイメージしていなかったですけど、それ、いいですね。

(笑)。では、最後に2013年のビジョンを教えてください。

一番はやっぱり、よりたくさんの人に私の歌を聴いていただいて、声を覚えてもらいたいなって。例えば、新曲を出した時に、名前を見なくても“あ、泉 沙世子が新曲を出したんや”って分かってもらえるようになりたいな、と思います。
境界線/アイリス
    • 境界線/アイリス
    • KICM-1432
    • 2013.01.30
    • 1050円
泉 彩世子 プロフィール

イズミサヨコ:1988年、大阪生まれ。キングレコード創業 80 周年企画『Dream Vocal Audition』にて、1万人を超える応募者の中から圧倒的な歌唱力と存在感でグランプリ(with賞)を受賞し、12 年11月にシングル「スクランブル」でデビューを果たした。


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