【新山詩織】音楽でだけ伝えられる“
本当の私”

17歳の現役女子高生シンガーソングライター、新山詩織が鮮烈デビュー! 変わらない日常で“変わりたい”ともがく思春期の焦燥と決意を歌った1stシングル「ゆれるユレル」で、その痛いほど研ぎ澄まされた感受性に触れてほしい。
取材:清水素子

初めてオリジナル曲を作ったのが中学卒業間際。資料には“もやもやした気持ちのやり場がなくて衝動的に”とありますが、いったい何があったのですか?

特別な何かがあったわけじゃないんです。ただ…なんとなく学校に通って、同じ毎日をすごしているのが嫌になったというか。そんな想いで家に帰ったら自分しかいなくて、誰にも気持ちを吐き出せなかったから、代わりに思ってたことをバーッ!と歌詞に書いたんです。で、一緒にギターをガーッ!と掻き鳴らしたら、ちょっとだけ気持ちが軽くなって、曲ができたっていう…。

じゃあ、曲を作ろうと思って作ったわけじゃない?

全然。私、昔から考えても仕方ないことを深く考えて、ひとりで抱え込んじゃう癖があるんです。周りに自分がどう思われてるのかが、すごく気になっちゃって…きっと人に嫌われたくないんですよね。みんなに好かれるわけなんてないのに、どうしてそんなこと気にするんだろう?って自分が嫌になっちゃったり、そのせいで疲れちゃったり。

感受性が強いんですね。その分、引っ込み思案?

たぶん。だから、人前で何かをするのはずっと苦手でした。それがギターをやってたお父さんの影響で軽音楽部に入って、学内発表会でギターを演奏した瞬間、“こんな気持ち良いことあったんだ!”ってびっくりしたんです。でも、もちろんコピーバンドだったし、オリジナル曲を自分が作れるなんて考えたこともなくて。あの日だって、もし家に誰かいたら曲を作ることもなかっただろうから、あれは私にとって大きな転換点だったんだなぁ…って、今、振り返ると思います。

ええ。引っ込み思案だった女の子が、高校ではストリートライヴまでやるようになるんですから、すごい変化です。

心の中ではグチャグチャ考えてるくせに、パッと見は静かで大人しい子に見られがちなんで、“本当の私はそんなんじゃないのに”っていう反抗心みたいなものが、ずっとくすぶってたんです。そんな私から見ると、周りを気にせず路上で自分の気持ちを歌ってる人たちは、ひとつの憧れで。それで挑戦してみたら、回を追うごとに緊張もせず、家で歌うのと同じ感覚で歌えるようになったんです。今でもライヴハウスやレコーディングで歌ってる時だけは、何も考えないで歌の世界に入り込めるんですね。歌の中でだけは自由に自分を表現できる。その開放感に、たぶん病み付きになったんです。

デビュー曲「ゆれるユレル」でも“本当の私はどこ?”と歌っていますし、詩織さんにとって音楽は自分を追求する手段であり、唯一の表現場所であるのかもしれないですね。

はい。高2でオーディションに応募したのも、有名になりたいとかでは全然なくて、変わらない日常を過ごしてる自分を何か変えたいと思ったからだし。きっと自分の中に理想像みたいなものがあって…でも、それが本当に“本当の私”なのか、実ははっきりとは分かってないんです。変わりたいけど変われなくて、自分が本当は何をしたいのか、どこに行きたいのか探し求めて、ずーっと揺れてる。そんなイメージから“ゆれるユレル”ってタイトルを付けたんです。そうやって繰り返し揺れながら、これからも“本当の自分”を探り続けていくんだろうなぁって。

ある意味、この曲が自分探しの第一歩ってことですよね。普段は周りを気にして自分を抑えがちなのに、そうやって弱さや迷いを曝け出せるのも、きっと音楽だからこそ。

そうですね。こうしてCDにして発表すれば、クラスメイトにだって聴かれるかもしれないけど、もう誰に何を言われてもいいから素直に書こう!って思えたんです。自分の中のネガティブな想いまで全部歌詞に入れて、“ 私はこういう人間なんです!”って歌い切ったことですっきりできたから、今は後悔も何もない。“アーティストっていうのは身を削っていくもの”とも言われているし、音楽をやる上で周りを気にすることは、もうなくなったから…うん、大丈夫。

頼もしい。歌声自体、パッと見の柔らかなイメージを裏切って、意外とドスが利いてますもんね。低音で斬り込める力強さは、ロックを歌っても似合いそうです。

最近、録音した歌を聴いても“あれ? 私の声って、こんなに低かったっけ?”ってびっくりします(笑)。ロック系の曲も自分には絶対に歌えないって思い込んでたんですけど、今回カップリングで大好きなTHE GROOVERSの「現在地」をカバーさせていただいたら、“こういう曲を、もっと作ってみたい!”って思えたので、すごく良かったですね。

オリジナルは20年前のリリースですが、詩織さんがTHE GROOVERSに惹かれた理由って?

最初にYouTubeで映像を見た時、立ってギターを弾いている藤井(一彦)さんの存在感だけで、すごくカッコ良くて!  自分自身の全てを音楽に入り込ませて演奏してるような、そんな感覚があったんです。そこから叶ったセッションだったので、ずっと聴いていた音が目の前で鳴ってるっていうのが、レコーディングでは夢のようで(笑)。大好きな曲を自分が歌ったらどうなるんだろう?っていう不安もあったんですけど、藤井さんも“4人目のメンバーのつもりで歌ってくれていいよ”と言ってくださったので、何も考えず思い切り歌いました。

さて、オーディションでグランプリを獲得してから1年。デビューを前にして今は、どんな想いでいます?

初めて経験することがいっぱいで、どうしたらいいのか戸惑うこともたくさんあったけど、歌うことが当たり前になった今は、自分が思うことをひたすら書いて歌うことで、どんどん前に進めている実感があるんです。だから、不安よりも楽しみのほうが大きいですね。自分にとって、その一瞬一瞬で歌ったものが全てだから、嘘偽りないリアルな想いを大声で歌っていきたい。その覚悟は、もう、できてます。
「ゆれるユレル」
    • 「ゆれるユレル」
    • JBCZ-6001
    • 2013.04.17
    • 1050円
新山詩織 プロフィール

1996年2月10日生まれ、埼玉県出身の女性シンガー・ソングライター。小学生の頃から父の影響で70~80年代のブルース、パンク、ロックを中心とした洋/邦楽を聴いて育つ。中学では軽音楽部に所属し、ガールズ・バンドを結成。中学卒業直前に、初めてのオリジナル曲「だからさ」を衝動的に完成させる。高校に入ると、ギターと歌のレッスンをスタート。さらに、新宿、大宮、池袋、渋谷などでストリート・ライヴを開始。高校2年の春、『Treasure Hunt 2012』に応募し、最終審査でグランプリを獲得する。メジャーデビューに向けて、創作活動、ストリート・ライヴのほか、念願だったバンド・セッションも行なうようになり、ライヴハウスでの活動もスタートさせる。2012年12月、“現役女子高生シンガー・ソングライター”としてアーティスト・デビューし、0thシングル「だからさ~acoustic version~」をメール・マガジン会員登録者にプレゼントした。2013年4月、シングル「ゆれるユレル」でメジャーデビュー。憂いのある独特の湿ったヴォーカル、ロックなサウンドを生かした楽曲がたちまち注目を浴びる。その後、コンスタントなシングルのリリースに加え、ラジオやライヴ・イベントへの出演、さらに大型フェス『JOIN ALIVE』や『ROCK IN JAPAN FES』への出演を重ね、着実にステップアップ。2014年3月、1stアルバム『しおり』を発表した。オフィシャルHP
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