【沢井美空】10代にしか歌えない“セ
ンチメンタル”

これまで4枚のシングルで、数々の泣けるラブソングを披露してきた沢井美空。待望の1stアルバムには恋愛のみならず、自分自身に真摯に向き合った曲がパッケージされている。“どうしても10代のうちに出したかった”と語る、その理由とは?
取材:清水素子

デビューから2年。ようやくの1stアルバムですね。

はい。実は私、どうしても20歳になる前にアルバムを出しておきたかったんです。だから、ギリギリ間に合って本当に良かった(笑)。

今年9月の誕生日で20歳になりますもんね。しかし、なぜそんなこだわりが?

やっぱり10代の時にしか歌えないことって、絶対にあるじゃないですか。大人でも子供でもない10代の女の子が思っていること…例えば、恋愛に対してだったり、夢に向かう気持ちだったり。そういったリアルな心情をギュッと詰め込みたいっていうのが、高校時代から思い描いてきた“理想の1stアルバム”像だったんです。私、すごくネガティブで…20歳のラインっていうのが、とっても怖いんですよ。

20歳が怖い?

20歳をすぎたら大人だから、誰も助けてくれないんじゃないかって。でも、10代だからって子供扱いされたり、そのせいで歌っていることに説得力を感じてもらえないのも、自分の想いを発信して、伝えていくべきシンガーソングライターとしては、逆に嫌なんです。感情の起伏が激しい人間だから、もう、その両方を行ったりきたり!

1曲目の「HELLO」なんて、まさにそういった葛藤について歌っていますよね。

そうですね。シングルは恋愛ソングばかりで、自分の弱いところだったり、リアルな心境をあまり書いてこなかったから、このアルバムではちゃんと自分と向き合いたかったんです。おかげで歌詞を書いている時は、すごく辛かったですね。正直な想いを言葉にすればするほど、自分の中の認めたくない部分が見えてきてペンが進まなくなって…私、超面倒臭い女なんですよ。ちょっとのことでひどく落ち込んで、ドン底までいってから這い上がってくるタイプ(笑)。

もしかして曲を書くことで、そんな自分を励ましている部分もありません?

そうなんです。10曲目の「イエローカード」なんて、消えてしまいたいほど落ち込んだ時に、もうひとりの自分が“自分を変えられるのは自分だけ”って元気付けてくれる設定で書き進めましたし。ネガティブな自分を包み隠さず曲に書くことで消化して、また前に進むことができるんですよね。そこでタイトルを考えた時、19歳の私を一番ズバリ言い表している言葉が“センチメンタル”なんじゃないかと思ったんです。感傷的で、ちょっと押されただけで崩れてしまうというか。アルバムに収録されてる恋愛ソングを改めて聴いてみても、やっぱりどこかに弱さがあって、センチメンタルにつながっているって感じたんですよね。

でも、意外と主人公の女の子たちに迷いはなくて、ちゃんと答えを見付けられているから、逆に沢井さん自身は強いんじゃないかとも思ったんですよ。

確かに恋愛観を人に話すと“サバサバしてるね”って言われたりはします(笑)。あとは1曲の中で気持ちが変化していく歌詞が好きだから、曲の最後には答えを出したいのかも。

楽曲自体も今回は骨太じゃないですか。「小悪魔BOY」みたいにエレキギターの利いたロック感の強い曲も目立つし。

今までの作品ではピアノの音だとか、バラードっぽい印象が強かったと思うんですけど、実は頭の中に曲が生まれてくる段階では、もっといろんな楽器の音が鳴ってるんですね。もともとロックな曲も好きだし、ずっとやってみたかったので、この機会に挑戦したかったんです。バンドのレコーディングにも立ち会って、それを踏まえた上で歌入れに挑んだら、すごく気持ち良くて! アルバムにはいろんなタイプの曲を入れたいと思っていたので、歌詞の面でも曲調の面でもそれを叶えられたのは、すごく幸せでした。付属のDVDにはライヴ映像も収録されているので、それを観て気になった方には、6月3 0日に地元の大阪梅田MANBOCAFEで行なうスペシャルライヴに、ぜひきていただきたいです。

そんな盛りだくさんな1stアルバムの中で、特に思い入れの深い曲を挙げるなら?

ラストの「砂時計」ですね。デビューしてから2年、その間に立ち止まったり、悔しいこともたくさんあって。ひとりでもがいているような気になっていたけれど、家族や周りのスタッフと話すうちに“これはひとりで見れるような夢じゃなかったなぁ”って気付いて、一気に書いていった曲なんです。砂時計をひっくり返して、時をつなぐことはいくらでもできるのに、自分の中の何かが邪魔をしてひっくり返せない。そんなイメージから膨らませていって、書き上がった時にはすごく達成感がありました。重たい曲だけれど、素直な想いを吐き出したことで、レコーディングでは気持ち良く感情を込めて歌うことができましたし。この一枚を作り終えたことで、また新たな視点で作品を作っていけるような気がします。

具体的には、どんな作品を作ってみたいと考えてます?

歌詞では20歳のラインを越える瞬間を書きたいのと、曲で言うならピアノの低音がガーッ!と鳴ってるピアノロック調の曲。もちろんピアノ以外にギターも練習したいし、機材を揃えられたら打ち込みもやりたいし、もっと明るい曲も聴いてほしいかも。特に今は旅行にいきたくて、いろいろ調べたりしてるから、テンションが高いんです(笑)。

今度は“センチメンタル”とは、違うベクトルでもやってみたいと。

はい。弱虫すぎたので、そこはちょっと卒業したいかもしれないですね。それこそ20歳になれば強くならざるを得ないし、人生経験も増えて、もっとたくさんの人に共感してもらえる曲が書けると思うんです。そう考えると20歳のラインもポジティブに捉えられるかな(笑)。
『センチメンタル。』
    • 『センチメンタル。』
    • SRCL8277~8
    • 2013.06.05
    • 3000円
沢井美空 プロフィール

サワイミク:1993年9月16日生まれ、大阪出身のシンガーソングライター。“音楽で気持ちを表現したい!”という気持ちから、作詞作曲活動を開始。聴き手の心に訴えかける歌詞、美しい旋律、耳に残る柔らかな歌声が魅力。11年5月にシングル「あたし、今日、失恋しました。」でメジャーデビューを果たし、13年6月に待望の1stアルバム『センチメンタル。』を発表。その後、TVアニメ『キルラキル』のエンディングテーマ「ごめんね、いいコじゃいられない。」など、アニメタイアップなども手がけるようにもなり、15年3月に2ndアルバム『憂鬱日和。』をリリースした。沢井美空 オフィシャルHP
Sony Music Records

OKMusic編集部

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