L→R 大橋卓弥(Vo&Gu&Harmonica)、常田真太郎(Piano&Cho&Organ&Other instruments and total sound treatment)

L→R 大橋卓弥(Vo&Gu&Harmonica)、常田真太郎(Piano&Cho&Organ&Other instruments and total sound treatment)

【スキマスイッチ】“ポップス”って
聴く人が決めることかもしれない

デビュー10年の栄光の軌跡を、2枚組30曲に濃縮した初のオールタイムベスト『POPMAN’S WORLD』がいよいよ8月21日にリリースされる。ポップとは? 名曲とは? そして、スキマスイッチとは? 10年分の思いを込めて、大橋卓弥(Vo&Gu)と常田真太郎(Piano& Cho)、大いに語る!
取材:宮本英夫

結局、どっちが何をやっても スキマス
イッチの手柄だから

10年分の思いが詰まったベストということで。

常田
目次みたいなものですよね、ベストって。ただ、人によって“昔の曲は尖ってたからライヴでやりたくない”とかよく聞くんですけど、ウチに限ってはそれがないんですよ。

あ、そうですね。デビュー当時の曲も普通にやってるし。

常田
“この時はこうだったな”というのは、もちろんありますけど。嫌な思い出として捉えているものはなくて、“この時は若かったね”という話で終わるだけ。

幸せなベストですねぇ。

常田
ベストという名のオリジナルアルバム。10年かけてこのアルバムを作ったという気持ちもあります。

私事ですけど、僕がおふたりに会ったのはわりと遅くて、デビュー3年目の2005年なんですよ。で、当時のインタビューを読み返したら、“この曲はどっちが作ったんですか?”ってしつこく訊いている。“作詞作曲:スキマスイッチ”という謎を解き明かしたかったみたいで。その節は失礼しました(笑) 。

大橋
でも、訊かれないより、訊かれたほうが嬉しいですよ。例えば僕も、“レノン=マッカートニー”だったらどっちが書いたのかな?とか、そういう興味があるし。で、その答えを濁すのも楽しいし(笑)。

あははは。確かに。

大橋
本当は言いたいんですけどね。“ここはシンタ(常田)くんで、この部分は僕で”って、細かく言いたい気持ちもあるけど、あえて言わずに想像してもらおうと。そういうちょっとした駆け引きは楽しいですね(笑)。でもね、あの頃よりも“どっちがどの部分を作った”ということに対するこだわりはなくなりましたね。

おおっ。それはかなりの変化かもしれない。

大橋
もっと言うと、あんまり覚えてないことが多い(笑)。
常田
本当にそう。
大橋
“これ、どっちがどうだっけ?”って。昔はもっとはっきりしてたんですよ、役割分担が。それがなくなってきて、ふたりの真ん中で作ってる感じというか。
常田
何年か前に、“結局、どっちが何をやってもスキマスイッチの手柄だから”という話をしたことがあって。そうだなぁと思うんですよ。もちろん、いいものを作りたいという意味では相変わらずライバル心はありますし、悔しさもありますけど。それがないと、一緒にやる意味がないんですよ。“チクショー、いい曲書くな”と思って、“じゃあ、俺はこういこう”というのは、相変わらずありますね。それがゆえに曲が完成すると“できたー!”というのが、すごい喜びですね。その達成感をハンパなく感じてるんで、過程はどうでもいいということになってるのかもしれない。

で、その最初の時に“あなたにとってポップスとは?”という、非常に大雑把な質問もしてるんですよ(笑) 。そしたらシンタくん、いいこと言ってます。“聴く人によって受け取り方が変わって、聴くたびに印象も違って、何度も聴きたくなるものがポップスだと思う”と。

常田
分かったような口利いてますね(笑) 。でも、目指すところはそこですね。ポップスというより、名曲とは?というほうが正しいかもしれないけど。でも、このベストのタイトルも“POPMAN’S WORLD”ですし。

そうなんですよ。やっぱりスキマスイッチはずっと“ポップ”がキーワードなんだなと。

常田
そこに対する気持ちはブレてない。全員に受けたいというよりは、人に聴いてもらいたいという気持ちでずっと曲を作り続けているので。まず、相方に聴いてもらいたい。向こう側にいるスタッフに聴いてもらいたい。その向こうにいるリスナーに聴いてもらいたい。究極のことを言うと、僕は無人島に行ったら、音楽はやらないと思うんですよ。誰も聴いてくれないから、面白くないなと思っちゃう。

ああー、なるほど。

常田
自分のためにやってはいますけど、それが“みんなが楽しい”というものにつながらないと意味がない。それは最初から思ってましたし、ここ最近さらに強く思うことですね。そこが僕にとっての“ポップス”につながってると思います。

最新曲は、シングルでリリースされたばかりの「HelloEspecially」。これはどんなふうに?

常田
シングルにするしないにかかわらず、“10周年ソングを作りたいね”という話をしていたんですよ。そういう曲でありながら、“どうですか!”みたいな曲ではなく。

すごく軽やかな曲ですよねぇ。

常田
卓弥がデモを作ってきて、それが本当に軽やかでいい曲で、それをふたりでいじってる時にTVアニメの話(『銀の匙Silver Spoon 』エンディングテーマ)をいただいて、シングルとして出せることになったんですけど。10周年記念なので、書きたいことはみなさんに対する“ありがとう”という思いを込めたかったんですけど、もっと自分たちらしくするならば、“やぁ、こんにちは。調子はどう?”みたいな感じにしたほうがいいのかなと。それで、“今までいろいろあったけど、また明日も頑張ろうね”という曲にしようと。

なるほど。

常田
ただ“頑張ろう”という言葉は、今まで言ったことがなかったんで。

なかったですねぇ。スキマスイッチでこんなストレートで前向きな歌詞、初めて見ました。

常田
(笑)。でも、そういうことを言える曲だし、今言わなくてどうするの?と。“それはスキマスイッチらしいかどうか?”という話もしたんですけど、意味があるなら使えばいいし、作りたくて作った曲だから、関係ないんじゃないの? と。
大橋
もともと、コーラスで持っていく曲にしたかったんですよね。みんなで歌ってる雰囲気の曲がいいなと思って。ビートルズの「HELP!」みたいな、ああいうのも好きなのにやってないなと思って、そこから考えた曲ですね。

非常に軽快でさわやかで。

大橋
いろんなことをやってきて、アレンジを詰め込んでコテコテにする感じも10年の中でやってきて、ここ最近はシンプルなものに惹かれるというか、その流れから出てきた曲。あと、いわゆる“派手でシングルっぽい”というのをやめたかったんですね。日本の音楽シーンの傾向としてそれがあると思うんですけど、洋楽はシンプルにギター1本とか、カントリーっぽい曲とか、作りたいから作った曲を、“いい曲だからシングルにしよう”という風潮があると思ったので。“こういうシンプルな曲って、絶対に日本人は好きだと思う”と思ったんですよね。それもあって、さらっとした曲を作ろうという気持ちが強かったです。

逆に言うと、いかにもシングルっぽい曲を作ろうと意識した時期も、この10年の中にはあった?

大橋
ありましたね。マスタリングの時に、“シングルだからヴォーカルを大きくしよう”とか、ありますからね。でも、その時必ずふたりで話したのは、“アルバムが本当の音だから”って。もちろん日本のシングルの傾向が悪いとは思わないし、でも“どっちもあっていいのにな”と思うので。

OKMusic編集部

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