【新山詩織】新山詩織の“根”を刻ん
だ1stアルバム

初めて曲を書いた15歳から高校卒業を目前に控える現在まで、シンガーソングライターとしての歴史を詰め込んだ1stアルバム『しおり』がついに到着。繊細に揺れる心と大胆なロックスピリッツ――。両者が絡み合う本作から、新山詩織の根幹と進化を感じてほしい。
取材:清水素子

写真を見ても、ずいぶん雰囲気変わりましたね。今までは淡いイメージが強かったのに、今回はバッチリ、カメラ目線。

特に意識したわけではなく、自然にそうなったというか。実は最近、親からも“だいぶ変わったんじゃない?”って言われてて、常に斜め下を見つめてた昔に比べると、確かに前向きになれてるなぁとは思います。でも、新山詩織の一番根っこの部分は変わってなくて、それはこのアルバムを聴いてみても感じたことなんですよ。

変わったのではなく、広がったと言ったほうが正しい?

うん、そうですね。哀しくてもがいているばかりじゃなく、ちょっとだけ希望を持ったりとか、自分自身の想いを吐き出すだけじゃなく、自分以外の主人公を設定して書いた曲も今回は入ってて。そうやって曲も歌詞も幅広くなりながらも、仕上がった歌詞を読むと、自分と重なる部分が多いんですよね。結局は新山詩織なんだってところから“しおり”というアルバムタイトルもわりとすぐに決まったし、漢字とかも当ててみた結果、ひらがなが一番しっくりきたんです。

あとは本にしおりを挟むように、シンガーソングライターとして歩いてきた3年間に刻まれた楽曲を、ここに集めているとも解釈できるわけで。まず、幕開けの「Looking to the sky」は、デビュー前の路上ライヴでも歌われていた曲ですね。

この「Looking to the sky」は絶対に1曲目だって決めてたんですよ。イントロのアコギのフレーズを聴くと“きた!”って感じるし、“今日はダメでも明日は行ってやる!”っていう気持ちをほんとにストレートに書いているから、これが最初にくることでかなり響くんじゃないかな。あと、中3の時に生まれて初めて作った曲「だからさ」は、今までアコースティックでしかやってこなかったのを、初めてバンドバージョンで収録しました。曲を作った時からバンドでやってるところを想像してたから、ついに出せて嬉しいですね。その次に作ったのが5曲目の「たんぽぽ」で、高校に入学したりと環境の変化の中で空っぽな気持ちを覚えつつも、ちょっとでも強くいたいなぁっていう想いが芽生えた曲なんです。で、デビュー後に歌詞を書き換えていた時、撮影中に誰もいない空地で見つけたたんぽぽのことを思い出して、あの花のように自分も力強く立っていたいなぁと、曲名に名付けたんです。

《大したことじゃない 少し空っぽなだけ》と歌う無常観には、ある種の“らしさ”を感じました。対照的に「Everybody say yeah」「午後3時」と最近作られた曲は、従来の新山詩織になかった斬新な曲で、しかも恐ろしくふり幅が広い!

温度差がありますよね(笑)。「Everybody say yeah」みたいなライヴ曲もアルバムには入っていたほうが、聴いてくださる方も楽しいだろうと考えたんですよ。だから、歌詞も考えて書くというより、ライヴで盛り上がることを念頭に置いて、歌録りでもコーラス隊の方と同じ部屋で一斉にワッ!と歌ったから、ちゃんとライヴ感が出てるんじゃないかなぁ。シングルのカップリングではわりとロックな曲をカバーしてきて、“あ、自分こんな歌い方もできるんだ!”っていう発見もあったから、最後のフェイクも思うがままに、バッ!と歌えました。

内向的なメンタルと対照的に、ロックスピリッツに根付いた思い切りの良さは、新山詩織の大きな魅力ですよね。一転、続く「午後3時」はアコギ2本によるラブソング…でいいんですか?

…そうなりますね。好きだからこそ近寄れない、上手く話せない女の子の歌で。私自身、中学の時に似たような気持ちを味わったこともあるし、同じような想いをしている人が少しでも動き出せるきっかけになればいいなと思って書きました。アコギは私とプロデューサーの笹路正徳さんとで、向き合って“せーの!”で弾いたので、変な恥ずかしさもあったけど、ずっと一緒に弾いてみたかったので良かったです。

もうひとつの未発表曲「17歳の夏」も、今までになく明るいトーンの曲で驚いたんですが、タイトルから察するに17歳だった去年の夏に書いたもの?

いえ、16歳の冬です(笑)。夏って得意な季節じゃないからこそ、17歳の夏は少しでも良い気持ちで過ごせたらいいなぁ…っていう願望を乗せて、自分なりに短いストーリーを考えながら書いていったんですよ。実際、17歳の夏は夏フェスにも出られたし、歌詞にもある《気持ちだけで 終わらせたくない》っていう想いを叶えられましたね。

有言実行の証みたいな曲ですね。そして、最後はさわやかに力強い2ndシングル「Don’t Cry」で締め括るという。この曲順が素晴らしい!

ありがとうございます。「Don’t Cry」はピアノで終わるから、そのままスーッと流れて、また再生ボタンを押してもらえたらいいなぁって。最初から最後まで気持ち良く聴けて、終わった時に充実感を感じられるように、一枚通してテンポ感や曲の雰囲気とかの並びには結構こだわったんですよ。デビュー曲の「ゆれるユレル」から最新シングル「今 ここにいる」に続く流れでも私の気持ちの変化が見えるでしょうし、この春には高校を卒業して新たな風景を見ていくだろうから、今後もひとつの気持ちに留まらず、いろんな場面での顔を表現していきたいですね。でも、根っこの部分は変わらずに。

その根っこを刻んだ1stアルバムを引っ提げ、待望の1stツアーも決まりましたが、どんなに大きなステージに立っていても、やはりワンマンとなると意気込みも違うのでは?

はい。ワンマンは新潟での1本しか経験がないので、また雰囲気も違うでしょうね。特に東京では、オーディションの決勝大会とデビューイベントの会場だった渋谷WWWに戻ってくるので、成長した姿をみなさんに観てもらえるように、かつ、本当に楽しいライヴにしていきたいです。今まで以上にエレキギターもかき鳴らせたらいいな(笑)。
『しおり』2014年03月26日発売Being
    • 【初回限定盤(DVD付)】
    • JBCZ-9006 3200円
    • 【卒業コラボ盤(小説ブックレット付)】
    • JBCZ-9007 3200円
    • ※初回生産限定
    • 【通常盤】
    • JBCZ-9008 2700円
新山詩織 プロフィール

1996年2月10日生まれ、埼玉県出身の女性シンガー・ソングライター。小学生の頃から父の影響で70~80年代のブルース、パンク、ロックを中心とした洋/邦楽を聴いて育つ。中学では軽音楽部に所属し、ガールズ・バンドを結成。中学卒業直前に、初めてのオリジナル曲「だからさ」を衝動的に完成させる。高校に入ると、ギターと歌のレッスンをスタート。さらに、新宿、大宮、池袋、渋谷などでストリート・ライヴを開始。高校2年の春、『Treasure Hunt 2012』に応募し、最終審査でグランプリを獲得する。メジャーデビューに向けて、創作活動、ストリート・ライヴのほか、念願だったバンド・セッションも行なうようになり、ライヴハウスでの活動もスタートさせる。2012年12月、“現役女子高生シンガー・ソングライター”としてアーティスト・デビューし、0thシングル「だからさ~acoustic version~」をメール・マガジン会員登録者にプレゼントした。2013年4月、シングル「ゆれるユレル」でメジャーデビュー。憂いのある独特の湿ったヴォーカル、ロックなサウンドを生かした楽曲がたちまち注目を浴びる。その後、コンスタントなシングルのリリースに加え、ラジオやライヴ・イベントへの出演、さらに大型フェス『JOIN ALIVE』や『ROCK IN JAPAN FES』への出演を重ね、着実にステップアップ。2014年3月、1stアルバム『しおり』を発表した。オフィシャルHP
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