【石崎ひゅーい】この作品を出して親
離れするみたいな感じ
“もうこの世にはいない母親”に向けられた感情の葛藤をコンセプトとした、音楽的にもロック×ニューウェイブ感豊かに、裸の魂をパンキッシュに曝け出した一枚。
取材:ふくりゅう(音楽コンシェルジュ)
気になる本作のコンセプトについて教えてください。
コンセプトアルバム的な作品って初めてなんです。もともとラストに収録した、ピアノ弾き語りの「卵焼き」と1曲目の「僕だけの楽園」が核になるなぁと思ってました。1曲目から4曲目までは、エッジーな感じでガーッといって、でもそれは5曲目の「卵焼き」を聴かせるためのお膳立てだったんだぜ、っていう感じにしたかったんです。
なるほど。
「第三惑星交響曲」もそうですけど、デビュー当時から自分が音楽を作る核として、母親ってモチーフをずっと歌ってきたんですね。でも、ずっとそこにいるわけにもいかないなって。なので今回、1枚全部マザコンな作品を作って、次に行くぞ!っていう。そのために本作は必要な作品なんですね。
ひゅーいさんの中で、なぜお母さんの存在がとても大きいのだと思いますか?
僕、一番影響を受けた人が母だったんです。音楽的にも人間的にも。芸術的な教養とかも、舞台を観に行かせてもらったり、家に流れてる音楽とか、全部含めてなんですね。
母と子という関係性以上に、ある種人生の先輩のような想いもあるんですね。
あと、料理が上手かったんですよ。男の人って絶対、母親の料理が好きだと思うんですけど。女の人には料理が上手くなってほしいなって思いますね。逆に言うと、かわいくなくてもいいから、料理が上手かったらそれでいいやってぐらい(苦笑)。ほら、メシうまかったら家に帰るから(笑)。
ですね(笑)。それが「卵焼き」につながるのですね。
今回の作品を作りながら、いろんなことを思い出して…。小学校5年の時、母の日に初めてカーネーションを買ってあげたらすごいキレられて。“なんでこんな花くれるの?”って。“母の日にはカーネーション”とか、そういう決まりごとが嫌いな母だったんですよね。他にも“ご飯がまずかったら食べなくていい!”とか、そういうことを言ってくれる人で。
パンキッシュなお母さんだったんですね。
要は“自分らしくいなさい!”ってことだったと思うんです。そういうことを芸術的に教えてくる人だったんですよ。それこそ「僕だけの楽園」での、自分好みな主張と対比な歌詞にもつながっていきますね。
「卵焼き」でのリアルな情景描写と、時間を止めるようなサウンドが、張り裂けんばかりに引っ張られたピアノ線のように感じました。
目標なんですけど、普遍的なことをちゃんと歌える歌詞を書きたいんですよ。「卵焼き」は、みんなと“同じ目線感”というのをとっても大事にして作りました。
本作『だからカーネーションは好きじゃない』を完成させてみていかがでした? 満足度は高い感じですか?
イメージとしてはこの作品ができたら、富士山の頂上まで登ってCDを天に向かって投げたいなと。そして、どこからともなく大きな鳥がやってきてCDを母親のいるところまで持って行ってくれたらいいなって思ってます。全曲とも母親に贈った曲なので、聴かせたいですね。この作品を出して親離れするみたいな感じですね。自分でもすごく良いミニアルバムができたと思うし、ここからがシンガーソングライターとしての勝負になってくるなって思っています。
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