【怒髪天】30年、バンドでやりたくね
ぇことをやったことないから、後悔は
ひとつもない!

今年1月には初の日本武道館公演を敢行。30周年記念イヤーにますます活気づく怒髪天が、3枚組記念ベスト『問答無用セレクション“金賞”』をリリース。生きるヒントや名言満載、増子直純(Vo)の金言の数々を聞け!
取材:フジジュン

怒髪天30周年アニバーサリーイヤー記念盤『問答無用セレクション“金賞”』を聴いて、改めて怒髪天のすごさを再確認したのと同時に、“パンクって人生を歌うジャンルじゃなかったよな?”と思って。考えたらすごいことやってますよね。

そうだよな。パンクロックが生まれた時は、若者の音楽だったから、演ってるのも若いヤツしかいなかったわけだけどさ。それがだんだん歳とって、年齢相応のリアルを歌っていくと自然とそうなるよな。不満や理不尽なことは大人のほうが多いからね。あとはブルースや演歌でしか使われなかったモチーフを、ロックにも転嫁できるんだってことを提示したというか。お題目としてのパンクって、もはやコスプレになっちゃってるじゃない? 原宿歩いてる女の子がエクスプロイテッドのトートバック持ってたりさ(笑)。もともとパンクなんて女子供の触れていいもんじゃなかったんだけどな。

ワハハ。今、30年の音楽人生を振り返っていかがです?

楽しかったよ。今も楽しいし、楽しかったからこそ続いてきたと思うし。これが仕事だったら続かなかったよ。“ここから30年間鳴かず飛ばずだけど、よろしく!”って言われたら、嫌だって言うよ(笑)。もともとパンクバンドから始まってるから、バイトしながらバンドをやるのが当たり前だと思ってたしね。世間様にツバ吐いて金貰おうなんて、とんでもない話だから。それが段々、思うこともあって、やってくるうちにロックだパンクだってお題目にとらわれなくなって。完全に自分の物差しできたから、それがパンクだロックだって物差しと合わなくてもいいわけ。自分の持ってる、怒髪天っていう物差しに合えば、それが最高なんだよ。

現実に飲み込まれそうになったことはないですか?

ないね。俺は今まで、バンドでやりたくねぇことを一個もやったことないから。バイトだなんだで、やりたくねぇことを山ほどやってんだからさ、バンドくらいは譲りたくないじゃない。そうやってきたから、バンドに関しては後悔することひとつもない! これやっとけば近道だったかな?ってこともない。普通にやってたら、これくらいかかるよ。

武道館のMCでも“ズルいことしなければ、これくらいかかる”と語っていて、すごく染みたし、励みになりました。

それは本当。ブースター付けたら、後から外れちゃった時に余力で進むしかないけど、俺たちはチャリンコと一緒だからさ。漕ぎ続ければ、遅くても進むんだから。才能のあるバンドでも自分で潰れちゃったりいろいろあるじゃない。でも、俺はバンドのために生きてるってことを念頭に置いて、あらゆることを決めてきたから。それだけのことだよ。

30周年記念盤はどんな聴き方をしてほしいですか?

去年、武道館に向けて、いっぱいプロモーションもやって、そこで知った人も多いから、何から聴いたらいいか分からない人に“これと新譜があれば大丈夫”ってものをあらためて出したいと思って。今回はそれぞれのリード曲とその頃ライヴでやってた曲を単純に入れてくっていう、分かりやすいアルバムになってる。今まで好きでいてくれた人には、未発表音源や配信限定、廃盤になってる曲の再録を入れてあるし。39曲で2500円ってあり得ないでしょ!?  一曲100円切ってるんだよ!

30周年だからサービスしますけどね(笑)。

ほんとだよ! これでCD買わないとか言われたらゲンコツだよ(笑)。

ワハハ。一番古い曲だと95年リリースの『痛快!ビックハート維新'95』に収録されてた「江戸をKILL」の再録も収録されてますが、旧譜も改めて聴き直したりしたのですか?

したよ。「江戸をKILL」なんてBPM(1分間に刻む拍の数)遅かったり、今よりキーが低かったりしたんだけど、原曲の雰囲気を壊したくないから、そのままのキーで歌ったりして。当時、全然評価は受けてなかったけど、やってることは何も変わってない。演奏力と歌唱力に関しては年数差し引いたくらいしかないけど、やりたいことや本質はまったく変わってないことも確認した。

過去楽曲を聴いた時、例えば「サムライブルー」とか、当時の録音だからこそ滲み出るものがありますよね。

そりゃ何年もやってるから、今のほうが上手くできるよ。でも、「サムライブルー」なんて、バンド再開したばっかりのさ、あの空気感とかさ、拙い感じもいいじゃない。ワールドカップのタイアップでも取ったら、あっさり再録すると思うけどね。最悪、英語版もあるかも知れない(笑)。

心売ってるじゃないですか!(笑) で、坂詰克彦ソロデビュー作「今夜も始まっているだろう」はフザケましたね。

よく出したよね? いろいろ考えた結果、アルバムには入れられないって話になって、“じゃあ、シングルで”だって(笑)。こんなの最悪、買い取りだよ! 坂さんにはもう、これ持ってスナック回ってもらうから。歌もすごいでしょ? 課長のカラオケだもん(笑)。たまにさ、ちょっと儲かると、出馬するかレコード出すかする人いるけど、それと一緒だよ。

ダハハハ! でも、またひとつ良い武器ができましたね。

これで本気で歌って上手くなったら、坂さんのひとり営業もできるからね。でも、面白がりながら、曲は本格的だったりして。ゲラゲラ笑ってやれるのが最高だよね。

最後に30周年以降の怒髪天について聞かせてください。

日本武道館をやって、“次は東京ドームですか?”とか言われるけど、次は海外かな。いまさらね(笑)。でもまぁ、いつも通り、良い曲作って、良いライヴやって、健康に気を付けて、一日でも長く、このメンバーでバンドやっていきたいなと思ってる。みんなにできる一番の恩返しは、解散しないことだと思うんだわ。そこで解散する要因があるとしたら、誰かが死ぬことくらいだと思うから。だとしたら、やっぱり健康に気を付けること! まぁ、坂さんくらいだったら、死んでも死んでないことにして続けていくと思うけどね(笑)。
『問答無用セレクション“金賞”』2014年07月02日発売Imperial Records
    • TECI-1404 2700円
    • ※初回プレス盤スペシャルスリーブ付
    怒髪天 プロフィール

    ドハツテン:1984年頃に札幌で結成。88年に現在のメンバーとなり、91年にアルバム『怒髪天』でメジャーデビュー。“R&E”と称する“リズム&演歌”というまったくオリジナルな音を追求。ちなみに、ここで言う“演歌”とはスタイルとしてのそれではなく、あくまでもスピリットを指す。人生という名の巨大山脈に裸一貫で立ち向かい、気合と根性と情熱でガシガシ登る…そんな男精神を綴り、あらゆるジャンルを怒髪天のフィルターを通しギュッと圧縮した、汗臭くコクのある楽曲を生み出している。オフィシャルHP
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