【READ ALOUD】オリジナリティーとポ
ピュラリティーの融合形 華麗に鳴り
響く新感覚サウンド
オリジナリティーにあふれたサウンド、心地良いグルーブ、胸の奥に真っ直ぐ飛び込んでくる歌声を届ける最新作『アカンサス』。無限の可能性が渦巻く本作についてメンバーに語ってもらった。
取材:田中 大
ラテンとかオーガニックなサウンドの要素がさりげなく香るのが、まずすごく印象的だったのですが。
クワタ
ラテン色の強い曲は、例えば「月と太陽」ですね。こういうビートをやっているバンドって意外と日本にはいないのかなと、スタジオに向かう車の中で思ったんです。UKインディーとか、洋楽ではやっているバンドがいますけど。
「タイムトラベラー」とか「BGK」でも、そういうテイストがほのかに漂っていますよ。
クワタ
そのへんはビートによって出ているんでしょうね。
貝吹
4分打ちを根底に残しつつ上半身で16分、みたいなことをやっているんです。今までの僕らの曲は4分打ちが多かったんですけど、今回のようなリズムパターンもここから広がっていけばいいなと思っています。
クワタ
今のミュージックシーンって何でもありなイメージがあるんです。昔だったらなかなか受け入れられないようなサウンドであっても、流行に関係なくオリジナリティーが受け入れられるようになっていると感じるので。そういう状況に勇気をもらっている部分もありますね。
みなさんが多感な少年時代に聴いた音楽って、どの辺りになるんですか?
クワタ
同年代でよく聴かれていたのはBUMP OF CHICKENとかASIAN KUNG-FU GENERATIONとかになるんですかね。そんな中、僕はひたすらガンズ・アンド・ローゼズ、ディープ・パープル、レッド・ツェッペリン、マイケル・シェンカーに心酔していたんです。
遠藤
僕はスティーヴィー・レイ・ヴォーンとか、ブルースロックが好きなんです。今回がそういうものっぽいのかと言えばちょっと違いますけど、僕らのいろんな好きなものが自然と入っているのかもしれないです。
「朝」のギターソロ、良かったですよ。
遠藤
これはめちゃくちゃいいソロです(笑)。ドラムのコングから“ギターソロっぽくないのにして”と言われて、すごく悩んで考えたんですけど。ギターではなくて、ピアノとかストリングスのイメージで弾きました。
秋澤
この曲の歌詞はコングが書いたから、思い入れとイメージがあったんだと思います。
ギタリストにギターソロっぽくないものを求めるって、結構な無茶振りですけど。
クワタ
そういうことがお互いに多いバンドです(笑)。
遠藤
何やってもヴォーカルのユウキの声が突き抜けてくれるんです。だから、アレンジしたい放題のバンドにもなっているんだと思います。
秋澤
歌が図太いから、バックで何をやってもちゃんと成立できるっていうことですね。
今回、亀田誠治さんのプロデュースですけど、その点に関してはいかがでしたか?
クワタ
僕らは音楽のルーツが全員違うので、セッションをするとごった煮になることが多いんです。でも、亀田さんはそれぞれの色を崩さずにひとつにつなげてくれて。さりげないひと押しでつながったりするんですよ。4人の個性をひと括りにしてくれたのが嬉しかったです。
秋澤
僕は亀田さんのベースが好きなので、今回、すごく勉強になりました。例えば「タイムトラベラー」のAメロからBメロになるところでガラッと雰囲気が変わるんですけど、その境目で4拍だけオカズっぽいフレーズを亀田さんの提案で入れたらすごく良くなって。感動しました。この曲は歌詞に毒付いている雰囲気があるので、サウンドもそういうものに沿った独創的な感じになったと思います。
歌詞もいいですよね。例えば「月と太陽」は夢を語り合った友への気持ちや、自分の人生をじっくり見つめている様子が、“月と太陽”っていうモチーフを通じて伝わってきます。
クワタ
ありがとうございます。僕はもうすぐ29歳なんですけど、周りは結婚したりして普通の幸せを手に入れるようになっていて。僕は音楽をやっていますけど、“自分の幸せって何なのかな?”って深く考えちゃうことがあって。でも、“やっぱり自分の幸せは音楽。何度も悩むくらいだから、結局これしかないんだ”と。この曲や「君の声を思い出す」や「風が吹くから」は、最近の自分の一番のリアルですね。“月と太陽”っていう言葉はコングが出してくれたんですけど。
貝吹
程良い距離で追っかけ合う関係は、月と太陽みたいだなと思ったので。
粋な表現ですね。
秋澤
コングはロマンチストなんです。
貝吹
こう見えて(笑)。
(笑)。サウンドはもちろん、歌詞の面に関しても特色と味わいがすごくあるバンドだと思います。
クワタ
“READ ALOUD”(読み上げる、朗読する)っていうのはバンドの方向性も示しているんです。だから、歌詞も手紙のような感覚で読み上げてほしいです。
今作を振り返っていただきましたが、改めてどんなことを感じていますか?
遠藤
発想がすごく広がりました。だから、今後作る作品も面白くなるはずですよ。このミニアルバムを作ったことによって、バンドとしての自由度がさらに増したと思います。
クワタ
自分たちでもこれを作ってみて、いろんな幅があることに気付きました。“金太郎飴を切ったらいろんな違った表情が出てきて、桃太郎になってた”みたいな(笑)。僕、デヴィッド・ボウイも好きなんですけど、彼って作品ごとにいろいろ変わるんですよね。確固たるものを持ちつつも、スタイルにはまったくこだわらない。毎回過去の自分をリセットして、新たな自分を模索しているんですよね。自分たちもアーティストとして、新しい自分を模索し続けたいと思っています。