【kevin】英語じゃ伝わり切らないも
のが日本語にはある
異色の経歴を持つ、実力派男性シンガーkevinがカバーアルバム第三弾『kevin’s cover vol.3』をリリース! 今回には童謡「赤とんぼ」も収録するなど、さまざまな面から彼が大切にしている“日本語”の魅力を引き立てたアルバムになっている。
取材:キティエンターテインメント
小学校4年生からアメリカンスクールに通い、大学時代はアメリカで過ごし、卒業後は日本でレーベルスタッフとして働いていたとのことですが、音楽に関わる仕事を始めたきっかけと、そこからアーティストに転身した経緯は?
もともと、家族みんな音楽が大好きだったから、いろんなジャンルのCDが家にたくさんあったんです。洋楽はTHE BEATLESからCARPENTERS、邦楽だと海援隊、ザ・フォーク・クルセダーズ、かぐや姫、加山雄三さん…あとは、兄たちが聴いていた槇原敬之さんや尾崎豊さんとか、いろんな世代、ジャンルのものが常に流れていた。中でも「渡良瀬橋」(森高千里)と「悲しくてやりきれない」(ザ・フォーク・クルセダーズ)は小さい時から聴いていたのですごく好きでした。学生の時は聖歌隊にも入っていて、歌うことも好きでしたね。それで音楽業界やアーティストがどう成り立っているのかということにも興味があったので、レコード会社に就職してスタッフの道を極めようと思ったんです。そこで仕事をしてアーティストと触れ合っていくうちに、“なんか活き活きしてるな~”と思って、やっぱり自分でも歌いたくなって。そしたら、あるイベントで歌う機会があって、それをたまたま観に来ていた今の事務所の人が声を掛けてくれたんです。
そして、アーティスト活動を始め、現在はライヴハウスで定期的に『kevin’s night』というイベントを開催していると。
普段ライヴハウスに行かないような人たちからすると、ライヴハウスってロックなイメージというか、音が大きくて人がギュウギュウでゆっくり音楽を聴けない…みたいな印象があると思うんです。でも、ゆっくりとリラックスをして音楽を聴けるようなライヴを作っていきたくて。フォークソングとか歌ってみたいんですよね。さだまさしさんの曲とか、「神田川」(かぐや姫)とか…僕の好きなメロディーなんです。それをみんなで歌ったりしてみたいです。
そのライヴで披露しているカバー曲が話題を集め、今回カバーアルバム3枚目となる『kevin’s cover vol.3』をリリースされたわけですが、数々の楽曲をカバーをする上で、意識していることはどういったことでしょうか?
できるだけ歌の邪魔をしないシンプルなアレンジにして、言葉がスッと心に入ってくるようにしたいなっていうのは1枚目の『kevin’s cover』の時からありました。崩しすぎると意味が変わったり、伝わらなかったりするだろうから。フェイクとかは使わず、シンプルなアレンジにこだわるっていうのは、僕が好きな森山直太朗さんに影響されているのかもしれないですね。彼を知ったきっかけは高校1年の時で、当時は洋楽にハマっていたんですけど、たまたま友達から森山さんを勧められて聴いてみたんです。そしたら衝撃を受けて…。彼の詞は古風な日本語を使っていたりするんですよ。そこで改めて日本語の美しさというのを感じたんです。聴いてるだけで頭にイメージできるし、曲の意味というか、自然と絵が見える。歌詞だけじゃ伝わらないものが、彼の歌い方やメロディーから伝わってくるのが面白くて。それまで日本語の曲はあまり聴いてなかったんですけど、そこからずっとリピートして聴いていたので、再生リストが洋楽と森山さんの曲だらけになっていました(笑)。
今回のカバーアルバムは“秋冬”をテーマに制作したとのことですが、童謡の「赤とんぼ」が収録されているのはひとつの注目ポイントかと。この曲を歌われて、いかがでしたか?
童謡って子供の頃から聴いてる曲だと思うので、崩してしまったら違和感を感じる人もいると思うんですよね。なので、なるべく崩さずに自分を出して伝えるっていうのが難しかったです。それに童謡って日本語の美しさとか歌詞が一番伝わりやすいと思っていて。テンポもゆっくりだし、「赤とんぼ」って歌詞がすごく少ないんですよ。抑揚はより強く意識しましたし…。“童謡”というまた違うジャンルに飛び込んだような感覚でした。
これまでの3枚にも共通してなのですが、日本の楽曲を選曲しているのはどういった理由からですか?
今回のアルバムの中では、20代くらいの若い子たちだと「赤とんぼ」とか「クリスマス・イブ」(山下達郎)は知ってても、他の曲は聴いたことのない人がほとんどだと思うんです。だけど、聴くと不思議と懐かしい気持ちになるのは、やっぱり日本語のあのメロディーと節回しがそうさせるんですかね。洋楽には聴いていて懐かしいって思わせる、こういった気持ちはないんじゃないかと。例えば、若い子がTHE BEATLESを聴いても、懐かしさではなくて“あ、名曲だね~”くらいの感覚なんですよね。そういう不思議なものが邦楽にはある。世界共通というか、いろんなところで日本語の美しさやメロディーは伝わると思うんです。“哀愁漂う”とかは言葉としてはあるかもしれないけど、日本語の“哀愁”と英語の“哀愁”はイコールじゃないと思うし、英語じゃ伝わり切らないものが日本語にはある。それを大切にして伝えていきたいと思って歌っています。
確かに、日本語の美しさが際立った楽曲だけではなく、懐かしさや温もりにあふれた一枚になっていますね。
収録されている曲を知っている方もそうでない方も聴いてて懐かしく、人恋しくなると思うんです。自分もこの曲をレコーディングした当日は、気付いたら親と生まれて初めてってくらいの長電話をしていました(笑)。これから年末にかけて忙しい日々を過ごしてる方が多いと思うので、ぜひこのアルバムを聴いて、その瞬間だけでも故郷や家族のことを思い出していただきたいです。
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