【水樹奈々】切ないのに心が温かくな
る絶妙な温度感

歌手デビュー15年目に突入した水樹奈々が、2015年最初のシングル「エデン」をリリース。これまでとは違う、やわらかい印象の表題曲を中心に、多彩な表情を見せる全4曲を収録。更なる活躍を予感する、チャレンジの詰まった作品になった。
取材:榑林史章

表題曲「エデン」はとてもやわらかくてやさしいメロディーで、ビートはバンドサウンドというギャップも魅力的で、今までならアルバム曲になっていたであろうタイプの曲ですね。

これまでの水樹のシングル1曲目は、16分音符でたたみ掛けるように攻める曲が多かったので、私としてはこれを表題曲に掲げるのは、大きなチャレンジでした。でも、この曲の持つ絶妙な温度感…冬の空気、切ないのにどこか心が温かくなるような感覚、激しいのにやわらかいという、何とも言えないメロディーに胸を撃ち抜かれてしまったんです。一度聴いてから、ずっと頭の中でループするほど強く惹かれるこの気持ちには、きっと何かがあるはず!と直感を信じて、1曲目にすることを決めました。

歌声にもやさしく温かく包み込むような雰囲気を感じました。

冬のピンと張り詰めた空気の中に、ふわりと雪が舞い降りてくるようなイメージです。雪ってとても不思議で冷たいのにフワフワと温かく感じたり、やさしく輝いて見える。そんな温度感で私も歌えたらと思いました。周りには嵐のように激しいバンドサウンドが流れているのですが、その中にスッと立っているような…台風の目の中心で、真っ直ぐに凜と、でもやさしく包み込むような表現ができたら良いなと思いました。

タイトルの“エデン”は『エデンの園』のイメージですね。

タイトルは理想を追い求める、青く若い恋愛をイメージしています。大人になるといろいろ考えすぎて、なかなか真っ直ぐぶつかることができなくなるもの。まだ子どもだったな、若かったな、と過去をかえりみながら、真っ直ぐに人を愛した時の気持ちは忘れずに持ち続けていたい…そんな想いを込めて歌詞を書きました。実は制作中にインフルエンザにかかってしまい、病院に向かう車の中で、Aメロの歌詞が浮かんだんです。前回は階段から落ちた瞬間に歌詞が浮かんだし、最近はどうもそういうことが多くて(笑)。追い込まれた時って、何かすごいエネルギーが生まれるのかもしれませんね(笑)。でも、毎回だと身が持たないので、体調と怪我には気を付けます!

ミュージックビデオは真っ白なニットの衣装がとても清楚な雰囲気で、女性らしいかわいらしさにあふれていますね。

曲の世界観とリンクさせてシンプルなかたちを目指しました! 衣装も作り込まず、私が普段着ていそうなものを選んでいます。ピュアな気持ちを表現するには、やはりシンプルな白のワンピース!と即決でしたね。メイクはモテ系女子がテーマで(笑)。カッコ良い方向性とは違った、ソフトで女性らしい水樹をたくさん見ていただけると嬉しいです。

かたや2曲目の「No Limit」はアッパーのドラマチックなサウンドで、水樹さんの王道ナンバーといった感じの楽曲ですね。

アニメ『DOG DAYS』第三期のオープニングテーマです。第一期の「SCARLET KNIGHT」、第二期の「FEARLESS HERO」ではストリングスを使った荘厳でファンタジックな世界を表現していたのですが、今回はそこに空を勢いよく駆け抜けるようなキラキラ感をプラスしたくて、デジタル系のサウンドを採り入れました。歌詞はオフの日に温泉に行って書きました。新月の日で、露天風呂から眺めた夜空は、星がとてもきれいで幻想的で…2番の歌詞にシリウスという一等星が出てくるのですが、実はシリウスは英語で“ドッグスター”と呼ばれる星なんです。これは『DOG DAYS』にぴったりだ!と思って使わせていただきました。

もう2曲は、アニメ『クロスアンジュ 天使と竜の輪舞(ロンド)』のために制作したもので、アッパーの「終末のラブソング」は新エンディングテーマ、バラードの「Necessary」は同アニメ第5話の挿入歌としてオンエアされた楽曲という。

3曲目の「終末のラブソング」は歌謡曲の要素が入ったメロディーで、聴いた瞬間にスッと身体に馴染む感覚がありました。愛をテーマに歌詞を書かせていただいたのですが、まだ未熟な主人公がさまざまな葛藤を経て、夜ひとりになった時に、ふとこぼれる本音のようなものを表現できたらと思いながらレコーディングしました。4曲目の「Necessary」はアニメの主人公の頑なだった心がほどけていく、とても大切なシーンで流れた楽曲です。主人公が初めて感じた恋の気持ちを、松井五郎さんが素敵な言葉で綴ってくださいました。「終末のラブソング」とはまた違った、女性らしさがあふれている曲になっています。

そして、夏のスタジアムライヴと初のシンガポール公演を収録したライヴ映像作品『NANA MIZUKI LIVE FLIGHT×FLIGHT+』も同時リリースされるという、ファンにはうれしいお年玉ですね。

『LIVE FLIGHT』は本当にいろいろなことがあり、私にとってとても特別なツアーになりました。実は横浜スタジアムでは、暑さで機械にトラブルが起きて、オープニングで私が乗った飛行機が不時着してしまって…。ライヴは常に危険と隣り合わせであることを改めて実感したと同時に、大事故にならないよう、迅速に対処してくださったスタッフのみなさんへの感謝の気持ちでいっぱいになりました。シンガポールは初めてのソロライヴ…しかも、英語でのMCもあって本当にドキドキの連続で。現地のみなさんのアツイ声援をビシビシ感じ、とても感動しました。特典映像も満載ですので、みなさん、せひたっぷり味わってください!

「エデン」のリリースの直後には、さいたまスーパーアリーナで初のアコースティックライヴ『NANA MIZUKI LIVE THEATER 2015-ACOUSTIC-』が開催されますが、こちらはどんなステージになりそうですか?

どの曲も全てイチからアレンジし直していて、この曲がまさかこういうかたちに?というものや、この曲はこういうアレンジで聴きたかった!という直球もあったり、とても面白い構成になっています。これまでのライヴで披露してきた、アコースティックコーナーのイメージとはひと味違うものになると思います。

2013年の『LIVE GRACE 2013-OPUS II-』では、アルパにチャレンジしていましたが、何か楽器にチャレンジする予定はありますか?

また違ったチャレンジをしています! 他にもいろいろなサプライズを用意しているので、ぜひ楽しみにしていただければと思います! 普通のアコースティックではつまらない!と私がまたいろんなヒラメキをぶつけてしまい(笑)、スタッフのみなさまには大変なお力添えをいただくことになってしまったのですが、これを全てかたちにすることができたら、ライヴの新しいかたちとして何か生まれるのでは!?と、みんなめちゃくちゃ気合いが入りまくっています。サポートバンドのチェリーボーイズのみなさんも“面白いね! やろうやろう!”とノリノリで協力してくださって。いろいろなことを詰め込んだ結果、いつものライヴ以上に大変なことになっていますが(笑)、リハーサルから、本当に楽しくて仕方がありません! オリジナルバージョンでは気付かなかった曲の一面に触れることもたくさんあって、それをみなさんに聴いていただくことを想像して、本当にワクワクしています。タイトルに“THEATER”と付けたことにも意味がありますので、その部分も楽しみにしていてほしいです!

では、最後に2015年の展望をお願いします。

「エデン」もそうですが、シンプルな軸にあるものを強く太くすることが、可能性を広げることにつながると思っています。歌手デビュー15年目に突入する区切りの年なので、たくさんのチャレンジを取り入れながら、同時に土台となる基礎を大切にしていきたいです!
「エデン」2015年01月14日発売KING RECORDS
    • KICM-1567 1296円
    • ※初回製造盤:特製カラーケース
『NANA MIZUKI LIVE FLIGHT×FLIGHT+』2015年01月14日発売KING RECORDS
    • 【Blu-ray】
    • KIXM-185~8 8316円
    • ※初回特典:SPECIAL BOX&デジパック仕様
    • 【DVD】
    • KIBM-483~8 8316円
水樹奈々 プロフィール

ミズキナナ:声優、歌手として高い人気を誇る。声優としてのデビュー作は1997年のプレイステーション用ゲーム『NOёL〜La neige〜』門倉千紗都役。歌手としては2000年12月にシングル「想い」でデビュー。09年6月に発売された7枚目のオリジナルアルバム『ULTIMATE DIAMOND』で声優として初のオリコンチャート1位を獲得し、11年12月と16年4月には東京ドーム2デイズライヴも大成功に収めた。水樹奈々 オフィシャルHP

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