【Poet-type.M】日本ってどの音楽も
生んでいない分、どの音楽にも足を着
けないで済む

門田匡陽のソロプロジェクト、Poet-type.Mが4部作の第一弾となる『A Place, Dark & Dark -観た事のないものを好きなだけ-』をリリース。1年を通して“夜しかない街の物語”を描きながら、それぞれ多彩なサウンドに挑む門田のこだわり=美学を訊いた。
取材:山口智男

周囲に対する苛立ちや違和感と決別して、“帰る場所のない美しさの翻訳”を追求しようとPoet-type.Mをスタートさせた門田さんのモチベーションは、また苛立ちや違和感になってきたんじゃないでしょうか? BURGER NUDSの再結成ライヴで披露した「LESSON」という新曲でも《皆 同じ詩 唄ってやがる 気持ち悪い》と歌っていましたよね。

実はBURGER NUDSと、例えば今回の作品に入っている「救えない。心から。(V.I.C.T.O.R.Y)」で表現している違和感には違いがあるんです。BURGER NUDSの場合は怒りなんです。それに対して、「救えない。心から。(V.I.C.T.O.R.Y)」はもっと客観的なもので、Poet-type.Mという存在も含め、日本の音楽を外から見ているんです。“帰る場所のない美しさの翻訳”にはいろいろな歩き方があって、そこに対して違和感を持つこともそのひとつのルートです。誰がどう見たって、握手券を売って成立する今の音楽シーンが正しいわけがない。それについて、今回僕は“A Place, Dark & Dark”という題名でおとぎ話を作っています。そういう前提で、架空の街の物語を聴いてもらうことによって、リスナーが“おや!?”と感じてくれたらいい。そこで歌われていることはおとぎ話なんだけれども、今、日記のような歌を歌っているアーティストや、とにかく騒ごうぜ!とやっているアーティストよりも断然リアルだってことに気付いてもらえればと思っています。

今回は4部作の『春盤』ですが、架空の街の物語を春夏秋冬の4部作で語るというアイデアはどんなところから?

そこでやろうとしている本当の意味でのリアリズムの追求は、年間を通してやって初めて分かってもらえるんじゃないかって気がしたんです。アルバム2枚というやり方もあったかもしれないけど、時間をかけて楽しんでもらいたかったし、そのほうが分かりやすいと思ったから、架空の町の四季を感じてもらおうと考えました。それに、それだけやらないと収まりがつかない。実は『A Place, Dark & Dark』は群像劇で、BURGER NUDSとGood Dog Happy Menの時に歌っていたキャラクターや街の景色もどんどん出てくるんですよ。だから1枚じゃ絶対終わらないことは分かっていました。

『春盤』の6曲はどうやって選んだのですか?

『冬盤』までの曲はある程度書き溜めてあって、その中から最初に聴いてもらったほうがいいだろう曲をピックアップしました。音楽的にはPoet-type.Mの中で一番80’sっぽい曲を集めました。それは歌詞のドラマとは関係なく。これから4枚出すにあたって、一枚一枚、音楽的なテーマはバラバラになると思うんですけど、今回は一番春らしい音楽性って何だろうってことを考えました。それが最近のUSインディの80’sリバイバルが一周した感じだったんです。

ソロプロジェクトということを考えると、バンドサウンドにこだわる必要はないと思うのですが、今回、バンドで再現可能なサウンドになっている理由はライヴで演奏することを想定して?

僕はずっとバンドしかやってこなかったから、バンドサウンドしか作れないんです。自分が作る音楽に関してはバンドサウンド以外に夢を感じられないんですよ。ひとりで完結できる音楽なら家でひとりでやってればいいじゃんって僕はなっちゃうんです(笑)。それにいろいろな音楽を…『春盤』は80’s、『夏盤』はこれ、『秋盤』はこれ、ってやっていく上で一番ダサいのは作家臭くなること。器用にいろいろなジャンルの音楽をやってますって一番カッコ悪いじゃないですか(笑)。バンドサウンドという枷(かせ)をあえてひとつ作ったほうが道に迷わないで済むんです。

その枷が逆に門田さんらしさにもなりますよね。

そうですね。ソロプロジェクトとして始まっているし、曲のデモはもちろん一曲一曲丁寧に作りますけど、メンバーにやってもらうパートに関しては、僕は何の注文もしていません。

前回のインタビューで言っていた“先進的なオケ”を作るにあたっては、今回、どんなことをやったのでしょうか?

最後に入っている「楽園の追放者(Somebody To Love)」やその前の「泥棒猫かく語りき(Nursery Rhymes ep3)」のような
曲を作る人は「救えない。心から。(V.I.C.T.O.R.Y)」は作らないと思うんですよ。それが僕の中ではキーになっていて、80’sというテーマはあったけれど、「泥棒猫かく語りき(Nursery Rhymes ep3)」を入れることが大事だったんです。ガチガチに80’s風の1枚を作るなら絶対に違う方法論があるんです。でも、1枚を通してどこにも足を着けていない感じは、僕がPoet-type.Mをやる上でひとつのテーマになっていますね。

アシッドフォークとインド音楽が入り混じった「泥棒猫かく語りき(Nursery Rhymes ep3)」、ブギの「楽園の追放者(Somebody To Love)」ともに80’sっぽいという意味ではちょっと違いますよね。

そういうバラエティーが大事なんです。それが日本っぽい。日本ってどの音楽も生んでいない分、どの音楽にも足を着けないで済む。僕がミシシッピの人間だったらブルースをやるしかない。ロンドンの人間がこれをやったらザ・ビートルズとデヴィッド・ボウイから逃げられませんよ(笑)。でも、日本ならいろいろな色を付けられる。とっ散らかったパレットのまま出せるんです。そこが日本人の一番面白いところ。

4月1日には独演会も予定されていますね。

『春盤』の曲をアコースティックバージョンでやります(笑)。それはそれでちょっとチャレンジでもあるんです。そこで一番聴いてもらいたいのは、その編成でもいい曲はいい曲だってところ。そこをみんなに聴いてほしい。いいメロディーさえあれば、どんな編成でもできるんです。誰が聴いても、これは分かりづらいってならないようにすることが大事なんです。そこに背を向けちゃうと、これをやる資格はない。特にメロディーを作る時はそこを意識していますね。
『A Place, Dark & Dark -観た事のないものを好きなだけ-』
    • 『A Place, Dark & Dark -観た事のないものを好きなだけ-』
    • PtM-1030
    • 2015.04.01
    • 1620円
Poet-type.M プロフィール

ポエトタイプドットエム:2014年に再結成した3ピースロックバンドBURGER NUDSのメンバーであり、現在活動休止中のGood Dog Happy Menの門田匡陽のソロプロジェクト。13年10月2日に初のフルアルバム『White White White』をリリース。15年1月31日に独演会『A Place, Dark & Dark -prologue-』を開催し、その独演会を皮切りに1年を通して“夜しかない街”の物語を春夏秋冬に分け、音楽で綴っている。16年4月17日には『A Place, Dark & Dark』最終話となる独演会『God Bless, Dark & Dark』の開催が決定している。Poet-type.M オフィシャルHP

OKMusic編集部

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