【Poet-type.M】“夜しかない街の物
語”を通して歌う“別れの秋”

門田匡陽のソロプロジェクト、Poet-type.Mが1年をかけて取り組む4部作の第三章『A Place, Dark & Dark –性器を無くしたアンドロイド-』(通称『秋盤』)が完成。弦楽四重奏との共演他、前2作からのさらなる広がりとともに門田のメッセージはより辛辣なものになっている。
取材:山口智男

Poet-type.M、BURGER NUDS、Good Dog Happy Menという門田さんの3バンドが出演する『festival M.O.N –美学の勝利-』も10月24日の東京公演のみとなりましたね。

東京はファイナルだし、趣向を凝らして、名古屋と大阪に来た人も楽しめるようにするつもりです。デビューしてから15年、僕はギターロックの世界の端っこを歩いてきました。メインストリームになったことは1回もないし、誰もが知っている曲があるわけでもない。『festival M.O.N』はそれでもサバイブできた自分たちの15年間の縮図でもあるんです。だから、自分はストレンジャーだとか、エトランゼだとかと思っている人がいたらぜひ観てもらいたいです。自分は異質なものでありたい、違いでありたいという感覚って、やっぱりロックにはとても大事だと思うんです。『秋盤』の話にもつながってしまうんですけど、今はそんな感じがあまりしない。だから、今回こういうような内容にならざるを得なかったんです。

こういうような内容というのは?

まず音楽的にはマイナーキーで始まり、マイナーキーで終わってしまうものになりました。そして、全ての曲で歌っていることは“別れ”です。その別れは何かを信仰したゆえの、何かを強く信じてしまったゆえの悲劇です。そういうアンチ信仰とアンチ全体主義の一枚です。

確かにマイナーキーで始まり、マイナーキーで終わっているんですけど、その間の4曲はひょっとしたら3作の中で一番ポップなんじゃないでしょうか?

特に「あのキラキラした綺麗事を(AGAIN)」はポップですよね。これを作った時、非常に悲しいことがふたつあって、それに対する反動だったんです。そのひとつが『夏盤』の「ダイヤモンドは傷つかない(In Memory Of Louis)」のルイのモデルになった、僕が飼っていた猫が死んだこと。それが夏ちょっと前でした。普段から作り溜めている曲の中に「あのキラキラした綺麗事を(AGAIN)」があって、それを聴いた時、これを今、かたちにしないとダメだと思ったんですよ。ただ、アレンジを考える上でキラキラさせないと気持ちが持たなかった。他の3曲も同じ理由なんです。誰かと誰かがその曲の中で、もう二度と会わないであろう別れをしている。そういう曲を作る時は明るく作りたい。最期の時に悲しくはいたくないんです。それは自分の人間性の中の幼稚な部分でもあるんですけど、どんな別れであれ、そこには綺麗事が大事なんですよね。その4曲の中で別れを経験したキャラクターは自分が愛した対象に二度と会うことはない。でも、ずっとずっと自分の心の中では愛し続けるんでしょう。僕はそこの永続性に対する希望を持っていたいんです。平面的に見たら、ただの悲劇なんだけど、悲劇のあとにきっと物語が続いて、旅立ちを見送ったキャラは、その後もずっと旅立った誰かを、何かを思い続けながら生きていくんでしょうね。だからこそ、明るく表現したい。逆に1曲目の「だが、ワインは赫(Deep Red Wine)」はこれからのことを見据えて一番エナジーにあふれている。だから、まだマイナーキーにする余裕があるんです。

「あのキラキラした綺麗事を(AGAIN)」をはじめ、今回はダンスミュージックの要素もありますね?

『夏盤』にはなかった要素ですね。今回、音楽的にはふたつの要素があるんです。ひとつは僕が秋という季節に抱いているサイケデリックというイメージ。それをPtM(Poet-type.M)なりにやろうと意識したのが1曲目の「だが、ワインは赫(Deep Red Wine)」と6曲目の「性器を無くしたアンドロイド(Dystopia)」。それで1枚をまとめることもできたんだろうけど、夏盤でやった8ビートのニューウェイブ感がダンサブルになって「あのキラキラした綺麗事を(AGAIN)」に表れましたね。

1曲目と6曲目では弦楽四重奏と共演していますね。

ストリングスを使おうとは思っていたんですけど、入れ方は悩みました。実はストリングスが入っているポップソングってあまり好きではないんです。例えば、ビートルズの「A Day in the Life」のような入れ方じゃないと、ポップソングにストリングスを入れる意味ってあまり感じない。だから。「だが、ワインは赫(Deep Red Wine)」も僕が作ったデモではもっとビートルズライクだったんです。メロトロンもフレンチホルンも入れて、そういうサイケデリックサウンドをやる一環として、ストリングスも入れていたし。それを(共同でサウンドプロデューサーを務めた)楢やん(楢原英介)と研磨しながら、弦楽四重奏にして、他のものをカットしたほうがいいということになったんです。その結果、ビートルズと言うよりは現代的な、例えばベック的なサイケになったかなっていう気はしています。

『夏盤』の“Modern Ghost”“神の犬”に続いて、今回は“性器を無くしたアンドロイド”が登場してきましたが。

アンドロイドだから性器という観念はもともとないじゃないですか。でも、このアンドロイドたちは何かをなくしたと思っているんです。それを言葉にしてあげないと、何をなくしたか…つまり、自分の現在地ですね、それが分からない。僕はこの『A Place, Dark & Dark』を始めてから同じ立場のミュージシャンに対して、“そんな意識でやってんの!?”ってことをいろいろな言い方でずっと言い続けてきました。それが一周して“性器を無くしたアンドロイド”になってしまったんです。ロックって何なのかと言ったら、やっぱり“俺は人と違っていたい”という気持ちじゃないですか。それが僕がここで言っている“性器”です。それをなくしたアンドロイド…あえてその言葉を使っているけど、人間ですよね。そういう人間がうじゃうじゃいて、彼らのルールがルールになってしまっている。そういう気持ち悪い世の中に言いたいことが「性器を無くしたアンドロイド(Dystopia)」という曲なんです。
『A Place, Dark & Dark –性器を無くしたアンドロイド-』
    • 『A Place, Dark & Dark –性器を無くしたアンドロイド-』
    • PtM-1032
    • 2015.10.21
    • 1620円
Poet-type.M プロフィール

ポエトタイプドットエム:2014年に再結成した3ピースロックバンドBURGER NUDSのメンバーであり、現在活動休止中のGood Dog Happy Menの門田匡陽のソロプロジェクト。13年10月2日に初のフルアルバム『White White White』をリリース。15年1月31日に独演会『A Place, Dark & Dark -prologue-』を開催し、その独演会を皮切りに1年を通して“夜しかない街”の物語を春夏秋冬に分け、音楽で綴っている。16年4月17日には『A Place, Dark & Dark』最終話となる独演会『God Bless, Dark & Dark』の開催が決定している。Poet-type.M オフィシャルHP

OKMusic編集部

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