【藤岡みなみ&ザ・モローンズ】次の
フェーズへの期待を込めて、初期衝動
を出し切った
約1年に及んだ三部作を締め括るミニアルバム『まるで、』。この3作を経てやっと本質が見えてきたというバンドの行く先にさらに期待が高まる一枚だ。
取材:高良美咲
昨年2015年は作品のリリースやワンマンライヴなど、藤岡みなみ & ザ・モローンズが2013年に結成されてから一番活動の幅を広めた一年だったと思うのですが。
ネロ
ほんとに濃い内容の一年でした。最初の頃は3人だけでビジョンを考えたりライヴを決めたりしてたのですが、CDを出し、ワンマンライヴをやったりしたことで、いろいろと関わってくれる人たちが増えて、“さぁ、次はどうする?”“次は何を仕掛ける?”って常に尻を叩いてくれて、3人だけだとすぐにサボって動きを止めてしまう僕らを動かしてくれました。これはほんとにありがたかったです。
4月20日にリリースするミニアルバム『まるで、』は、これまでにリリースしてきた『はじき』(2015年3月18日)、『S.N.S』(2015年7月29 日)の三部作を締め括る作品ですね。
藤岡
約1年の間に出したこの3枚は、曲が生まれた順に収録されているわけではなく、CDを出す前からあった曲たちをパズルのように並べ替えて作りました。時代性やモローンズの歴史的な意味で、この3枚は並列な部分があると思って三部作と呼んでいます。次のフェーズへの期待を込めて、初期衝動を出し切った感じ!
三部作を締め括る『まるで、』は、どのような一枚にしようと?
藤岡
名刺代わりの1枚目、徐々に本音を出した2枚目を経て、定番で直球な「脱水少女」と変化球な「end roll」が同時に成立する世界観を目指しました。ポップなのもアンニュイなのもどっちも私たちなんだけど、それをうまく伝える在り方を模索してきて、辿り着いたひとつの場所がこの3枚目です。
「脱水少女」はこれまでの作品には収録されてこなかった楽曲ですが、このタイミングで収録した理由は?
藤岡
「脱水少女」は1stにも2ndにも入れようとしてきたのですが、なんとなく、まだ違うかな…と思って先送りにしていました。王道っぽい曲なので、下手に出すとバンドの奥行きが伝わらない気がしてビビっていて。“今ならいい”と思ったというよりも、お客さんやCDショップの方の反応などを感じていく中で、“そんなにビビらなくていい”と気付いたという感じですね。細かいアレンジや歌詞に出てくる登場人物の心の機微やなんかは、聴き手には実はめちゃくちゃ伝わっていたらしいです。
「休前日 is the best」はポップでキャッチーなメロディーで、“休前日”(土曜日および祝祭日の前日)をテーマにしたストーリーも面白味がありました。
藤岡
アルバムを作った後に気付いたんですけど、このアルバムの裏テーマは“死”とか“終わり”なんです。曲調はいろいろありつつも、全曲終わりについて考えている…。「休前日 is the best」も“終わり”についての曲です。私、そろそろ出家するのかな?
とつとつと歌い上げる歌が印象的な「end roll」は、スローな楽曲かと思えば曲間での各楽器のせめぎあうような展開も印象的でした。
ヒロヒロヤ
最初にイントロのフレーズを思いついて、そこから発展させていきました。特にゴールは決めておらず、フィーリングで作っていきましたね。結果、いい楽曲になったと思います。
今作には“まるで、”と名付けられたわけですが。
藤岡
“まるで、○○○”のように、後に続く言葉が隠れています。答えはないんですけど、自分だけの形容詞を持つ、ということ自体をテーマにしました。本棚の前で撮ったジャケットも、“世界を形容する”というシチュエーションに併せて私が好きな場所を選びました。もうひとつ、“丸を付ける”“全部とりあえずOK”という肯定の意味も重ねています。好奇心とやさしさが同居するアルバムになればいいなと思いました。
中でも思い入れのある楽曲、印象深い楽曲はありますか?
ネロ
初めてデモを聴かせてもらった時に、「脱水少女」の“校長”から始まる歌詞に驚きました。そんな始まりの歌詞、聴いたことない! そして、青春がテーマの歌詞にストレートな8ビート! この組み合わせは普遍的に名曲に決まってる!
ヒロヒロヤ
「休前日 is the best」。ライヴでやろうとして、リハで試したけどハモリが上手くいかず、スタジオで爆笑したので。
藤岡
「キャノットレコード」です。実はモローンズで一番最初にできた曲かもしれないです。原型は2012年にできていたのですが、この4年でしっくりくるまで何度もリアレンジし、歌詞も変えました。結果、一番今のモローンズらしい曲になっていると思います。
今作で特に聴きどころなどがあれば教えてください。
ネロ
例えばこれ!って言い表せるジャンルがないんだけど、最後まで聴いたら、“モローンズ”って括りにはまると思います! 中央線のようないい意味で、いなたい感じからオシャレな感じまで。全てひっくるめてモローンズって思ってもらえたら嬉しいです。
作り終えたことで改めて何か得られたものはありましたか?
ネロ
ほんとにいろいろな人たちから応援してもらってるんだなぁと改めて感じました。自分たち3人だけではなく、みんなのやさしさや助けをもらって活動できていることを実感しました。綺麗事のようで恥ずかしいですが…。
藤岡
セルフプロモーションについてはあえて考えずに、やりたい音楽だけやってきたために、あまりにジャンルが広すぎて自分たちでもアイデンティティーが分かりにくかったけど、この3作を経てやっと“これがモローンズなのかも”という自画像に出会えた気分です。
今作を通して初めて出会う人や、これから出会う人たちに藤岡みなみ & ザ・モローンズがどんなバンドなのかを説明するとしたら?
ネロ
いつまでも中学生みたいに、かわいいおじさんふたりと、それを冷めた目で見守りつつ、最終的には乗っかって許してくれる、頼れるフロント女子の不思議な3人ですかね…とにかく気取りのない3人!
ヒロヒロヤ
ポップでキャッチー、まったりとしていて、それでいてしつこくない。
藤岡
中央線沿線の住人のように、明るく社交的に見えて実は鬱屈としたものを隠し持っている大人の青春。
今作のリリース後には、6月14日の渋谷CLUB QUATTROでのワンマンライヴを含め、ライヴを数本予定していますが、どのようなライヴにしたいですか?
ネロ
観てもらったら絶対楽しくさせることできます! 嫌なことや悩みごとはモローンズが責任を持って吹き飛ばしてやるぜ!!
藤岡
新しいフェーズを感じさせるライヴにします! モローンズはライヴバンドなので初めて来たらびっくりすると思います。
- 『まるで、』
- MRNS-003
- 2016.04.20
- 1620円
フジオカミナミ&ザ・モローンズ:2013年、“日本のインド”・高円寺で結成された、男女混合3ピースバンド。15年3月にリリースした1stミニアルバム『はじき』がTOWER RECIRDSのタワレコメンに、約1年に及んだミニアルバム三部作を締め括るミニアルバム『まるで、』はHMVのエイチオシに選出されるなど、各方面で注目を集めている。藤岡みなみ&ザ・モローンズ オフィシャルHP