【新居昭乃】心を自由に遊ばせること
が、“作る”ということにつながって
いる

デビュー30周年記念のニューアルバム『リトルピアノ・プラス』が完成。2枚同時リリースされた『Red Planet』『Blue Planet』以来、4年振りのアルバムはタイトル通り“ピアノ”を意識した作品となった。
取材:田中隆信

デビュー30周年のアルバム『リトルピアノ・プラス』が完成しましたが、タイトルを含めて、今回の作品にはどんな想いが込められていますか?

親にピアノを買ってもらったのが5歳の時で、そのピアノで曲を作り始めたのが8歳の頃でした。それからずっとピアノを弾いてきましたので、ピアノに対する感謝もありますし、音楽に対する感謝もあります。実は今日(取材を行なった7月5日)がデビュー日なんですが、音楽活動を30年間やってこれたことへの感謝、そして聴いてくれている方への感謝の気持ちを込めたアルバムができればいいなと思って作りました。

ピアノが音楽を始める原点だったということですか?

そうですね。決して上手ではないのでタイトルにも“拙い”という意味で“リトル”と付けましたが、私の一番身近な存在で、ずっと友達でいてくれたので、本当に感謝しています。

アルバムのリリースはおよそ4年振りで、すでにシングルとしてリリースされた楽曲もありますから作った時期は違うと思いますが、いつ頃レコーディングされたのでしょうか?

レコーディングに関しては、今年のツアーのあと、1カ月ぐらいで行ないました。ツアーが終わってすぐにレコーディングに入ったので、ツアー中も曲を作っていましたし、音を作ってくれる保刈久明くんもずっとこもりっ切りでしたね。

個性的な13曲が収録されているだけに、曲順によってアルバムの印象も変わってくると思うのですが。

はい。インスト曲の「リトルピアノ」を1曲目にするというのは保刈くんとディレクターの井上ゆかこちゃんのアイデアなんです。私はこの曲は最後かインタールード的に中盤かなって思ってたんですけど、この曲から始まるという案を聞いて“すごくいい! それだ!”って(笑)。ですから、「リトルピアノ」を起点に、この曲が終わったあとに何が聴きたいかな?とか考えて、2曲目に「Stay」を持ってきたりしました。

CDショップなどで試聴する時、1曲目や2曲目など、最初のほうの曲を聴くことが多いので、序盤に何を持ってくるかも重要になってきますよね。

そうなんです。2曲目の「Stay」は60年代や70年代のポップロックみたいな曲なので自分の中では新しいというか、幻想的な雰囲気じゃない曲で始まるのが新鮮だなって。

その他、悠木 碧さんに提供した「サンクチュアリ・アリス」のセルフカバーも収録されていますね。

悠木 碧ちゃんの時は曲と歌詞は作りましたけど、音作りに関してはノータッチだったんです。アレンジは同じ保刈くんが手掛けていますが、碧ちゃんの世界になっていますよね。碧ちゃんは声優さんなので、物語の主人公になり切って歌っていて、私はどちらかと言うと語り部的に絵本を人に読んでいるようなスタンスで歌っているので、同じ詞曲でも印象は違うと思います。今回セルフカバーするにあたって、改めてピアノと歌だけのデモテープを作って、保刈くんに肉付けしてもらいました。

クラムボンのミトさんがベースで参加されていますが。

はい。ベースをかなりフィーチャーした音作りになっています。歌ってるようなベースなので、ほぼデュエットぐらいのバランスになっているから、聴いて楽しんでもらえると嬉しいです。他にも「冬の庭園」ではLÄ-PPISCHやMUTE BEATなどでも吹いているCodex Barbèsの増井朗人さんのトロンボーンが入っていて、世界観がちょっと変わりました。この曲ももともとは打ち込みで作っていた曲で、いつもだったらそのまま打ち込みのまま完成形にアレンジしてもらうんですけど、他の曲もそうですが、今回はピアノというのを意識してみました。そういう意味では、今回は新しいレコーディングの仕方に挑戦した感じですね。

リリース日の8月21日はお誕生日ということで、アニバーサリーらしい特別感がありますね。

誕生日にリリースするというのも、ゆかこちゃんが考えてくれました。お祝いという気持ちで聴いてもらえるとありがたいです(笑)。

今回のジャケットはどんな感じになりそうですか?

ちょうど出来上がったところです。表紙とブックレットの中の絵も私が描きました、レコーディング中に(笑)。

制作をしながら描かれていたのですか!?

はい。スケッチブックとか、ちゃんとしたものに描くと構えちゃうから、遊びというか、遊び半分で描いたほうがいいかなって思ってダンボールに描きました。自分が描いた絵がジャケットに使われるのも今回が初めてなんです。

11月には野外でのライヴも決定しましたね。

野外でのライヴも初めてです。その場の空気や風の音、鳥の声も含めて、全てが音楽になるような空間にしたいなって思っています。ちょうど日没の時間に開演して、始まる頃は空に明るさが残っているんですけど、気が付くと真っ暗という感じで。セットリストを決めるのはこれからですけど、今回のアルバムの曲はたくさん歌いたいですね。構成はカルテットとギターとピアノという感じになると思います。

最後に、改めてこの作品の聴きどころを教えてください。

曲を作り始めてうん十年(笑)、デビューして30年が経ちますけど、心を自由に遊ばせること。それが“作る”ということにつながっています。作るということに関しては、遊ぶ気持ちがないと自分もキューっとなってしまうし、作品も小さいものになってしまうので、なるべく遊んで仕事をしています(笑)。そういう気持ちがあれば、自分でも予想していなかったものが生まれてくる可能性もありますからね。いつまでも新しいことをやりたいと思える自分でいたいですし、このアルバムを聴いてもらって、そういう自由さが伝わったらいいなと思っています。
『リトルピアノ・プラス』
    • 『リトルピアノ・プラス』
    • VTCL-60430
    • 2016.08.21
    • 3132円
新居昭乃 プロフィール

8月21日生まれ、東京都出身。“幻想系の始祖”とも呼ばれる独自の音楽性で、海外での評価も高い。2006年パリ、ベルリンのソロツアーを皮切りに、サンチアゴ、香港、台湾、モナコなど海外でのライヴ、イベント参加を精力的に行なっている。また、CHARA、安藤裕子、種ともこ、PSY'S、LUNA SEAなど多数のアーティストのライヴやレコーディングでコーラス参加、手嶌葵、悠木碧等、他アーティストへの楽曲提供も多数。海外での評価も高く、ベルリン、パリ、香港、台湾でのソロライヴを成功させ、モナコで行われたイベントにも参加する等、 活躍の場を広げている。ファンメールは上記の地域以外にアメリカ、タイ、ポーランド、ブラジル等からも届く。新居昭乃 オフィシャルHP

OKMusic編集部

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