L→R ササキジュン(Gu)、青山友樹(Dr)、きみコ(Vo&Gu)、アベノブユキ(Ba)

L→R ササキジュン(Gu)、青山友樹(Dr)、きみコ(Vo&Gu)、アベノブユキ(Ba)

【nano.RIPE】有終の美と新生の片鱗
 現メンバーでの最後のアルバム

5枚目のアルバム『スペースエコー』が完成! 年内をもって脱退する、アベノブユキ(Ba)と青山友樹(Dr)が参加した最後のアルバムながら、新たな可能性を見出した、深くて広い一枚になった。そんな作品について、きみコ(Vo&Gu)が語る。
取材:榑林史章

この4人のnano.RIPEはかけがえのない時

今作はいつもとは違う部分が結構あって。例えば、アルバムタイトルはこれまでだと、“○○の○○”と付けられていたことに対し、“スペースエコー”と定番を覆したものになっていますね。

正直なところ、思い浮かばなくて(笑)。“宇宙の○○”では幼稚だし、変に考えすぎても日本語のバンド名やライトノベルのタイトルっぽくなりそうで。音的にもシンセが入っているので、カタカナでインパクトを持たせたほうが合ってると思ったんです。“スペースエコー”は宇宙の心臓みたいなイメージもありつつ、“音の鳴る空間”という意味で、ライヴハウスやCDをイメージしてもらえるといいと思います。

ピアノやシンセが入った曲や、ダンスロックっぽい曲もあったり、サウンド面でも幅が広いアルバムですね。

前作の『七色眼鏡のヒミツ』以上に、いろいろな楽器を入れることを恐れず作りました。5周年の集大成であるベスト盤『しあわせのクツ』を出したことで、アニメやCMなどテレビから流れてくるぼくらのイメージがすごく分かったんですよ。それは悪く言うと雰囲気の似た楽曲が多いということだけど、ある意味ではぼくらが確立してきたnano.RIPEらしさでもあり、武器でもあるというか。その部分は大切にしつつ、もっといろいろやってもいいんじゃないかということが、改めて分かったんです。そこで『スペースエコー』では、タイトルの付け方も含めて、もっと新しいことをやっていこうということが、まず最初にテーマとしてありましたね。

1曲目にインスト曲の「SN1998A」が入ってますが。

ライヴでは毎回オープニングSEでインストとナレーションを流しているので、そういうライヴの始まりをイメージしました。タイトルについては…リードトラックの「ルミナリー」が、星の誕生から消滅までを人の人生に重ねて歌ったものになっていて、歌詞には超新星爆発を意味した言葉も出てくるんです。それで、超新星爆発は英語で“Super Nova”で、その年の最初にあった超新星爆発はA、ふたつめはBと表記するんです。つまり、“SN1998A”というのは、1998年の最初の超新星爆発という意味なんです。1998年はあたしがササキジュンと出会った年なので、その時にnano.RIPEが始まったという意味を込めています。

今回は特に後半ですが、終わり感がちょっとあって。バンドはゆくゆくは終わるもの、いつか訪れるゴールを見据えてやっていくという、覚悟や決意みたいなものも感じ取れました。それは、やはりメンバーのアベノブユキさんと青山友樹さんが抜けるということが影響していますか?

アルバムの新曲は書き下ろしばかりではなく、『七色眼鏡のヒミツ』前後から書き溜めていたものとか、そうなる前にほぼ出来上がっていて。脱退が決まってから歌詞を書いたのは「ディア」だけなんです。なので、nano.RIPEがあたしとササキジュンのふたりになるという意味合いを感じさせる曲が多くなったのは、自分でもちょっと不思議です。でも、きっとこのタイミングでアルバムを聴いたら、みんなそう感じるだろうなって。

そもそも、どういう経緯でおふたりが脱退することに?

少し前からメンバー同士のメールやLINEで、そういう話は出ていたんです。実際にそう決まったのは、アルバムのレコーディング直前でした。きっとnano.RIPEが5周年を迎えたとか、ノブが30歳になったとか、いろいろな節目が重なったことで、考えて結論を出したんだと思います。あたしとササキジュンは1998年からnano.RIPEだけをやってきて、今後もそれしかできないし、これに賭けていく覚悟があるけど、ふたりにはまだ別の可能性や選択肢があるので、本人たちの意志を尊重しようと。メンバーの脱退は何度かあったけど、毎回ショックだし、落ち込むし、片腕や片足をもがれるような気持ちになるけど、そういう経験をするたびに、“自分は続けるんだ!”と意志が固くなるんですよ。辞めるという選択肢は、あたしにはもうないんだなって。万が一、ジュンが辞めると言ったとしても、あたしはひとりになってもnano.RIPEという名前を背負って続けていくと思うし。この4人でやったnano.RIPEは、かけがえのない時間だった。それは今後の財産になってる。ノブが作曲した曲もあるので、それはnano.RIPEの曲として、あたしたちの責任として、ずっと歌っていきたいと思っています。

そういう少々複雑な気持ちを抱えながらのレコーディングは、苦しくはなかったんですか?

最初はそうなるだろうと思ったけど、お互いを理解した上で、じゃあいいものを作ろう!という気持ちになっていました。逆にゴールが見えていたので、すっきりした気持ちでしたね。それぞれの人生に向けての大きな一歩として、むしろ前向きにレコーディングができました。脱退が決まってから何本かライヴをやっていて、その時はお客さんにお知らせすることができず少し心苦しかったですけど…。年末に向けてのツアーがこの4人では最後なので、一本一本全員悔いを残さないようにやっていきます。みんなの心配を払拭して、来年以降のnano.RIPEに期待が持てるツアーを心掛けます。

しかし、リズム隊のメンバーチェンジがよくありますね。

そ、そうなんですよね(苦笑)。でも、2ndアルバム(『プラスとマイナスのしくみ』)のツアーの時はサポートドラマーを入れて回ったし、レコーディングも河村カースケさんや玉田豊夢さんに叩いてもらって。あれがすごくいい経験になっているので、今後ふたりでやっていくとしても、きっと新しい音楽の試みができるだろうと期待しています。もちろん、ずっとやっていきたいと思う方と出会えたら、メンバーになってもらう可能性もあります。

OKMusic編集部

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