【焚吐】ルールを設けず、純なものを
作りたかった

今年の夏、ゆかりのある池袋の地で60本に及ぶストリートライヴを行ない、300曲を歌い切った焚吐。この経験をもとに制作された『トーキョーカオス e.p.』に込めた焚吐の思いを訊く。
取材:桂泉晴名

池袋で開催した60公演の『ノンブレス・ノンリプレスライブ』は、焚吐さんに大きな影響を与えたようですね。

池袋は本当に混沌とした街で、これといった特徴というか、カルチャーが定まっていないんですね。そこに影響を受けつつ、60公演中に池袋で感じたことを、ちゃんと作品にしたいという想いから、今回の作品は“まったくルールを設けずに純なものを作ろう”と思って作り始めたんです。

1曲目「僕は君のアジテーターじゃない」はカリスマボカロPのNeruさんの書き下ろし曲で。

以前に「人生は名状し難い」の楽曲提供を受けていて、Neruさんにもう1曲作っていただきたくて、今回は“アップテンポでお願いします”というリクエストだけ出しました。でも、自分が細かく指示を出したかのような、歌っていてしっくりくる内容だったので驚きました。僕は2ndシングルで初めてラブソングを出したんですけど、もともと自分はえぐ味みたいなものを楽曲に投影してきた身なので、そういった部分を持っているんだという自分の気持ちをNeruさんが代弁してくださっている感じがして、本当に感動しました。

「人生は名状し難い」は、タワーレコード池袋店限定販売シングルだった曲ですよね。

はい。限定生産の音源は、デビュー前…昨年の3月くらいにNeruさん監修のもとで録ったもので、今と歌い方も表現方法もかなり違ってます。他の曲は公演期間中に録った楽曲なんですけど、この曲の“e.p._Ver.”はライヴが終わった2日後くらいに録ったんです。録り直して良かったのは、8月31日に最終公演があったんですけど、その時に一番いいライヴができて、そのあとに録ったということが大きいと思います。

最後に最高がくるなんて、なかなかないことですね。

30回目で10年使っていたカポが真っぷたつに割れたり、最終日の初回公演ではギター本体が壊れ、急きょ違うギターを使うということがあったんです。そういったハプニングも体験した上で、最終公演はすがすがしい気持ちでできました。

2曲目の「クライマックス」のMVはクールですね。

歌的にも、自分の楽曲の作り方的にも、本当に新しいことに挑戦した楽曲だったので、MVも新しい感じにしたいと思いました。曲のビジュアルテーマになっているので、ゲームは絶対に出してほしいっていうことは提案しましたし、今までギターを持って歌ってきたから、あえてハンドマイクで歌い切ることにはこだわりました。

3曲目の「四捨五入」は、実に焚吐さんらしい歌詞だと思いました。

大学に入ったばかりの頃、周囲の人たちは場を盛り上げたりして、人ひとりとしての存在意義がちゃんとあるのに、自分はコミュニケーションを取るのが苦手で、何人分の価値があるんだろうと考えたら、0.3人分くらいしかいない。0.3って四捨五入するとゼロだから、自分はいないのと同じじゃないかと考えて。歌詞はリアルに自分を投影し、その時に思っているものを全部吐き出した感じです。でも、想いを込めた分、本当に純粋にいいものができたなと思いました。

11月4日にはワンマンライヴ『リアルライブ・カプセルVol.1』が開催されますね。

初ワンマンを7月21日にやったんですけど、今回はよりバンドとすり合わせを行なって、その時とはまた違う空気感を作れたら、と思います。
『トーキョーカオス e.p.』
    • 『トーキョーカオス e.p.』
    • JBCZ-4026
    • 2016.10.26
    • 1400円
焚吐 プロフィール

タクト:1997年2月20日生まれの21歳。東京都出身。某音楽大学在学中。10歳頃から楽曲制作を始め、それらを人前で歌うことで、自身の苦手とするコミュニケーションの代わりにしてきた。普段の物静かな佇まいとは裏腹に、本音を露わにした鋭利な歌詞と心に訴えかけるような力強い歌声が特徴の男性シンガーソングライター。焚吐 オフィシャルHP

OKMusic編集部

全ての音楽情報がここに、ファンから評論家まで、誰もが「アーティスト」、「音楽」がもつ可能性を最大限に発信できる音楽情報メディアです。

新着