【NakamuraEmi】たくさんの人の光が
入って完成した作品

昨年のデビュー以来、パワフルなヴォーカルと自分の気持ちに真っ直ぐな歌詞で聴き手の心をとらえてきたシンガーソングライターNakamuraEmi。メジャー2作目となるニューアルバム『NIPPONNO ONNAWO UTAU Vol.4』は、この1年の活動を経て変化してきた彼女の心情が非常に反映された一枚となった。
取材:桂泉晴名

“NakamuraEmiはどんなアーティストなのか”という自己紹介を行なっているのが1曲目の「Rebirth」。Nakamuraさんが影響を受けたヒップホップの要素がふんだんに入っていますね。

私がヒップホップを好きなったきっかけがRHYMESTERさんで。初めて聴いた時に、子供のことや世界のこと、平和のことを歌っているリリックが素晴らしくて。歌もドラムみたいだし、こんなにカッコ良い音楽があったんだ!と感じて、そこから自分の人生観が変わりましたね。でも、自分のルーツはJ-POPなので、私の曲はヒップホップになりようがないと思っていたんですよ。だから、ヒップホップを目指したというよりは、“ヒップホップが好きです”くらいの気持ちだったんです。けれど、プロデューサーのカワムラヒロシさんに出会って大きく変わったんですね。カワムラさんもヒップホップが好きだったし、この曲を作る時にカワムラさん率いるバンドでやらせてもらえることになったので、もしかしたらヒップホップっぽいものが本当にできるのかもと思って。それまでは弾き語りでヒップホップっぽくやっていたんですけど、自分だけじゃ限界だったんです。だから、「Rebirth」で初めて韻を踏んだり新しい挑戦をしています。

語るように歌う曲というと、「ハワイと日本」はNakamuraさんの心の声がそのまま歌になったようなナンバーですね。

これは一番自分らしいというか。本当に日常生活のままだったりするので、絵日記を開いているような感じで歌おうと決めました。昨年1月にデビューして以来、ずっと音楽漬けだったので、周囲が心配して“どこに行きたい?”って。“ハワイですかね”と答えたら“行ってきなよ”って言ってくれたんです。それで実際にハワイに行って、その時のテンパっている自分とか、楽しかった自分を描いてみました。

ご自身が一番出ている曲ですか?

そうなんです。何回聴いても笑っちゃうのは、《最初はびびってカード払い》というフレーズのあたりで、後ろのほうで私が“あーっ”て言っているところ。レコーディングの時に“ちょっと焦ってる声をやってみて”って言われていろいろやってみたら、そのひとつをみんなが気に入ったみたいで。レコーディングが終わって全部を通して聴いた時に、それが入っていたからびっくりしました(笑)。そういう私の本当の声とか足音だったり、リアルな音をそのまま表現して入れてくれているので、ちょっと面白くて今までにない曲になったと思います。

そんな曲の次に収録されているのが親子関係を描いた、胸に迫る「めしあがれ」という。

20代で1回実家を出たんですけど、親の病気で30代になってから戻ったんですね。その時に初めて親が人間に見えたというか…初めて会った人って“この人どんな人だろう?”って考えるじゃないですか。そういう感覚でした。子供の頃は“お父さん” “お母さん”という認識しかなかったけど、“お父さんってこんな考え方していたんだ!?”とか客観的に見るようになっていて。“この人たちが自分を育ててきたんだな”と思ったりしたんです。

この曲は歌い方が独特ですね。

自分の中ではすごく光がある曲なので、あまり入り込んじゃうとちょっと違う世界になっちゃうんです。他の曲は歌詞に入り込むんですけれど、これは本を読むような感覚で歌っています。

あと、2曲目の「大人の言うことを聞け」は歌詞にある通り、“子どもと大人の真ん中”にいるNakamuraさんのならではの目線の曲だなと。

音楽の世界に入ってからは、かなり年上の方と普通に話をさせてもらえる場があったので。“この人、オーラがすごくカッコ良いなぁ”とか“いつかこういう人になれたらいいな”と思ったり、逆に“そんなこと言っちゃうんだ。私はこういう人にならないように気を付けよう”と感じることがあったんですね。でも、自分も学生から見れば“あ、このおばさんカッコ良いじゃん”ってなるのか、“このおばさんみたいに絶対にならない”って思われるのか、そういう真ん中にいる年齢なんだなと思ったんです。年上の方には“あなたの言葉は子供たちにとって影響力がすごいんだよ”ということが伝わったら嬉しいなって。で、子供たちには“うわ、ムカつく”と思っても、何十年後かにそのムカつくの意味が分かることもあるし…もちろん、本当に適当なことを言っている大人かもしれないけど、それも全部込みで、とにかく相手の言うことを聞いて自分のものに変えちゃえばいいじゃないかっていうのが伝わったらいいなと思っています。

そして、最後を飾るのはこれからの決意を込めた「メジャーデビュー」で。

歌詞にある《一緒にやっていくんだ》というところは、スタッフとバンドメンバー全員の声が入っているんです。私はそもそも事務所に所属することもすごく怖かったというか、自分のやりたいことができなくなっちゃうんじゃないかって不安だったんですよ。でも、そういう自分のことも分かってくれて、みんなが何度も話し合いの場を持ちながら、メジャーデビューへの期間を準備してくれて。メジャーデビューしてからも、NakamuraEmiらしいものを常に一番に考えながら全ての仕事をやってくださっているんです。こういうデビューをさせてもらえるのはなかなかないことだろうし、これからも「メジャーデビュー」に込めたような想いでいたいです。

そんなNakamuraさんの活躍は、若手女性のシンガーソングライターの刺激になっているのじゃないでしょうか。

同年代の方は少ないんですけど、ライヴハウスでは30歳くらいのシンガーソングライターの女の子が多くて、そういう方から“この曲聴きました”と感想メールをいただいたりするんですね。自分がRHYMESTERさんの曲と出会って“そうだよな”という気持ちになったのと同じようなことが起こっているとしたら嬉しいですし、自分も頑張ろうという気持ちになります。

この『NIPPONNO ONNAWO UTAU Vol.4』はNakamuraさんにとってどんな作品ですか?

去年はたくさんのお客さんに出会ったり、自分のチームができたり…ほんと宝箱にしまっておきたくなるような毎日だらけだったんです。このアルバムはたくさんの人の光が入って、それが音になってできた作品だと思っています。
『NIPPONNO ONNAWO UTAU Vol.4』2017年03月08日発売日本コロムビア
    • 【初回限定生産盤】
    • COCP-39885 2916円
    • ※豪華紙ジャケ特別仕様 ※初回限定生産盤が終了次第、通常盤に切り替え
    • 【通常盤】
    • COCP-39890 2916円
    • 【LP】
    • COJA-9310 4320円
NakamuraEmi プロフィール

ナカムラエミ:神奈川県厚木市出身。1982年生まれ。山と海と都会の真ん中で育ち幼少の頃よりJ-POPに触れる。カフェやライヴハウスなどで歌う中で出会ったヒップホップやジャズに憧れ、歌とフロウの間を行き来する現在の独特なスタイルを確立する。その小柄な体からは想像できないほどパワフルに吐き出されるリリックとメロディーは、老若男女問わず心の奥底に突き刺さる。16年1月にアルバム『NIPPONNO ONNAWO UTAU BEST』メジャーデビュー。20年2月には5thアルバム『NIPPONNO ONNAWO UTAU BEST2』をリリースした。NakamuraEmi オフィシャルHP

OKMusic編集部

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