L→R 高緑成治(Ba)、宮本浩次(Vo&Gu)、冨永義之(Dr)、石森敏行(Gu)

L→R 高緑成治(Ba)、宮本浩次(Vo&Gu)、冨永義之(Dr)、石森敏行(Gu)

【エレファントカシマシ】今しっくり
くるものを必死で探してきた

1988年3月にデビューしたロックバンド、エレファントカシマシが30年の歩みを記念してキャリア初となるオールタイムベストアルバムをリリース! これまでのバンドの歴史も辿りながら、同作について宮本浩次(Vo&Gu)に話を訊いた。
取材:田山雄士

“30年”という事実や数字についてどう感じていますか?

「ファイティングマン」を作ったのが18歳くらいですからね。当時は世の中にどう打って出るかとかで頭がいっぱいだったので、まさか30年もバンドをやるなんて思ってなかった。「四月の風」を作った頃はレコード会社(EPIC ソニー)との契約が終了してしまって、お先真っ暗な状態だったり。その時々、いつも必死でやってました。振り返ってみると、悩んだことや楽しかったことが随所にあったなと。契約が切れた時は給料もないし、どこにも属してないし、26~27歳だったからメンバーがバラバラになって音楽以外の新しい人生を歩むこともできた。でも、もう1回やるって決めたんです。なぜなら、この4人で絶対にヒット曲を出したくて。

PONY CANYONから「悲しみの果て」で再デビューする前の話ですよね。

そうです。でもって、デビューしてかれこれ10年ほど経って「今宵の月のように」がヒットしたんですよねぇ。ヒットが生まれてみたらみたで、次はいきなり打ち込みにシフトしたりして。「ガストロンジャー」とか、まさにそうなんだけど。

今のユニバーサルミュージックも在籍10年くらいですが。

もう10年なのかぁ。最初に僕らをスカウトしたディレクターが“ヒット曲を出そう!”って言ってくれたんですよ、40代の中年のミュージシャンにね。「俺たちの明日」を一生懸命作りました。その後の「笑顔の未来へ」「ハナウタ~遠い昔からの物語~」あたりは手応えを感じてて。40代で新たにヒット曲を出すんだって。

宮本さんの口から“ヒット曲”って言葉がこんなに出てくるとは。

長くやってるとさまざまな時期のファンがいまして、「ファイティングマン」を出した1988年はまだ生まれてない人もいるわけですよ。で、まぁ、“初期が好き”っていう意見とかね。分かりますよ。僕だって洋服屋さんで“昔のデザインのほうが…”みたいに思ったりする。でも、年代も流行も変わっていくし、そんなこと言っててもしょうがない! “あの頃の日本が良かった”なんて話しても、実際は戻れないわけだから。となると、新しい、今しっくりくるものを探したいんですよね。その意味で、「RAINBOW」はひとつの総括ができた曲で。ヒットってのは常に狙ってます。やっぱり自分の曲をたくさんの人に聴いてほしい。いろんなプロデューサーと仕事して、研究を重ねて、“これだ!”と熱くなれる曲を作りたいんです。

歌い方も変わっていきましたよね。

あのね、富士山の麓に忍野八海っていう名所がありまして、20代はそのあたりでよくバンド合宿をしてたわけですよ。そしたら、スタジオの近くのセブン-イレブンでね、「奴隷天国」が流れてきたことがあって。《何笑ってんだよ》《そこの おめえだよ》《死ね》みたいな、例の叫び声が(笑)。素で歯ブラシかなんか買いに行ったのに、コンビニで自分の歌が荒々しく鳴り響いていて…でも、何年か後にヒット曲が生まれてさ、世間の人が俺たちを知ってくれるとね、遡って“「奴隷天国」カッコ良いじゃん!”ってまたなってくるわけ。気付けば内輪じゃなくて、ライヴでみんなが盛り上がる曲に成長してたりするのが面白い。

結果、今作の収録曲にも選ばれたと。

はい。僕はこれ、基本的にはベストというよりエレカシの基礎、入口であり、30周年の記念盤だと思ってます。フェスでよく披露する曲も、バンドの混沌とした想いが表われた曲も詰まってる。「今宵の月のように」「悲しみの果て」「ガストロンジャ―」「ファイティングマン」「翳りゆく部屋」(荒井由実のカバー)がまとまってるし、そこから広がっていけばと願って選曲しました。

Disc 1の1曲目が「今宵の月のように」ですね。

やっぱり広がってほしいので、一番分かりやすい曲を1曲目にしたかったんです。ドラマタイアップがあってこそできた曲なんだけど、頭の《くだらねえとつぶやいて》のところの歌詞は、「ファイティングマン」の歌い出しの《黒いバラとりはらい》に匹敵する爆発力があると思ってますから。

「RAINBOW」についても聞かせてください。

ユニバーサルに移籍して「俺たちの明日」ができた頃はすごく上手くいってたと思う。でも、“これからどういう歌を歌っていけばいいんだろう?”と模索する時期がくるんです。でまぁ、耳の病気(外リンパ瘻)もやって、ようやくここ6~7年の戸惑って落ちていく感覚というか、誰もが歩む道筋を初めてちゃんと描けたのが「RAINBOW」で。闇雲に人を慰めるわけでもなく、“いずれ死にゆくただの男である俺が、実はヒーローだったんだ”ってことを歌ってるんだけど、そんな境地が非常にいいなと。

何かを受け入れられた感覚というか?

でしょうね。病気が直接のきっかけというわけじゃないけど、“あぁ、死ぬんだな”って現に思わされたし。時の流れで生まれる抗いようのない喪失感は誰にだってあるじゃない? そういった喪失感、光と影を、「RAINBOW」でストレートに表現できた気がするんですよ。「夢を追う旅人」も近いことを歌えてるんじゃないかな。

今の自分たちに似合う曲が分かってるって素敵なことだと思います。

ありがとうございます。大変だけど、どうにか探して見つけ出してね、ドーンとやっていきたいですよ! 服とかもね、いろんなものを買って試すわけ。でも、昔みたいに似合わなかったりして。若いと汚い服だろうが、頭グシャグシャだろうが大丈夫なの。そういうのも模索するんですよね。音楽もまったく同じ。今ピタッとくる想いを歌にするとリアリティーがあるし、サウンドとはまれば届くものになるんだと思ってます。
『All Time Best Album THE FIGHTING MAN』2017年03月21日発売UNIVERSAL SIGMA
    • 【デラックス盤】
    • PDCS-1903 12960円
    • ※2CD+ボーナスCD+2DVD+ブック ※UNIVERSAL MUSIC STORE完全受注生産限定
    • 【初回限定盤(2CD+DVD)】
    • UMCK-9896 4536円
    • 【通常盤(2CD)】
    • UMCK-1563/4 3240円
エレファントカシマシ プロフィール

エレファントカシマシ:1981年結成。88年3月、EPIC SONYよりアルバム『THE ELEPHANT KASHIMASHI』、シングル「デーデ」でデビュー。17年、デビュー30周年アニバーサリーイヤーに突入。デビュー記念日の3月21日にはキャリア史上初となるオールタイムベストアルバム『30th Anniversary 「All Time Best Album THE FIGHTING MAN」』をリリースし、3月20日の大阪城ホールを皮切りに、12月まで続くバンド史上初となる47都道府県ツアーの開催を予定している。エレファントカシマシ オフィシャルHP

OKMusic編集部

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