取材:石田博詞

自分にしかできないものができた満足感
がある

本作はデビュー25周年記念なのですが、どんな作品を作ろうとしたのですか?

1枚はハードな曲のみで、もう1枚は私の声しか入ってないっていう、極端な端と端に集約させた2枚なんですけど、それが反射し合ってバランスをとっているっていう意味で“Reflection”というタイトルにしたんですね。オリジナルアルバムを作る際は、かなりストーリー性を持たせて、曲の流れや構成を考えるんですけど、今回は25周年を記念したコンセプチュアルなアルバムなので、そんなことは考えずに突き詰めようって。

なぜ極端なものにしようと?

今までの私を明確に作品化して後世に残したかったからです。昔は私のコピーバンドがすごく多かったじゃないですか。なので、自分みたいなタイプのシンガーがたくさん後に続くと予想してたんですけど、25年経ってみると、ほとんどいなかったという状況だから、ハードなヴォーカルスタイルは自分の最大の個性だと自覚したんですね。もう一方で…シャウトしているシンガーって、繊細なアカペラとは縁遠いイメージがありますよね。その逆もあると思うんですけど。私の場合は子供の頃にやっていたスタジオでの仕事というのが、今もどこかに根付いてて、細かいヴォーカルワークも得意なんですよ。実はそういう素質が私のロックスタイルの基礎にもなっているんです。あと、ロックとは表面的なスタイルとかカテゴリーじゃなくて、自分が信じたものを自信を持って突き詰めて表現する姿勢なんだっていうのも、アカペラ盤があることによって伝えたかったというか。極端であればあるほど伝わりやすいと考えたんです。どうしても私みたいなタイプというのは、時代時代でいろいろなイメージコピーが付けられてしまうから、フラフラとしているように思われがちですが、表現に幅や冒険があってこそハードな歌を徹底できるし、ポップ性も自分のものとできるって思ってるので。それこそ“ポップシンガーに変貌”や“バラードシンガーに転身”とか勝手に形容されてきましたが、私は始めから私です。両極を作品にしたのは、そういう形容に対するアンチテーゼでもあるんです。とにかく“自分にしかできないもの”にしたかったんですよ。

ハードな楽曲を集めた“Disc/wing I”ですが、その選曲はどのようにして?

新曲については私なりのハードな側面として今残したいもの…4人のギタリストが参加してくれているんで、それぞれに合うかどうかも加味して選びました。昔の曲に関しては、『BLUE REVOLUTION』みたいに今までのベストにたくさん入っているような曲はあえて外し、少しマニアックなハード曲を集めてます。リマスタリングする時に新曲と過去の曲の音質をそろえるのが大変かなと思ってたんですけど、意外にもすんなりといきましたね。自分で聴いてみてもテンションというか、内に秘めた情熱みたいなものが変わってないからだと思います。

新曲は4人のギタリストを招いて録られているのですが、それも最初から構想としてあったのですか?

いえ、これは偶然に近いというか…新曲は2曲かなって思ってたんですけど、たまたま松本(孝弘/B'z)くんから別件で連絡があった時に“弾こうか?”って話になったんですね。増崎(孝司)くんと大槻(啓之)さんには弾いてもらうことが決まってたんで、あとはMicheal(Landau)が入れば歴代の私を支えてくれた人が全員そろうと考え、アメリカで録ったばかりの『Eagle』をハードな感じにリミックスして入れることにしたんです。

次にアカペラの“Disc/wing II”なのですが、プロローグやインタリュード、エピローグを作ることで、コンセプチャルな1枚にしたという感じですか?

アカペラにするには骨組みから何もかも全部声で作るわけなので、一般リスナーの耳馴染みを考えると、まるまる1曲構成で新曲を作るよりもコンパクトなものにした方がいいかなって思ったんですね。なので、リメイク曲を重量のある感じにして、新曲はコンパクトなものに…曲の間を埋めるようなものにすれば、流れが作れると思ったんです。

歌詞を読んでいると、生と死ではないものの、命に限りがあることがメッセージされているように思ったのですが。

人生経験をそれなりに重ねてくると、時間には限りがあるからこそ今が愛おしく輝くことが分かってくると思うんです。与えられた時間の中で何ができるのか…世相的にも不安な世の中ですが、音楽というもののポテンシャルを信じたいですね。

本作は、25周年記念としてどんな作品が作れましたか?

制作期間には制約があるので、100%のものが作れたかって言ったら、まだ可能性は尽きませんが、その時間の中で精いっぱいのことはやれたし、自分にしかできないものができた満足感はありますね。

この25年の中で、やはり歌に対する思いも変わりました?

デビュー前やデビューした時とはまったく考え方が変わりましたね。ハードな歌って限界に挑戦するみたいなところがあると思うんですよ。先駆者としての自分に使命感を感じていた頃は“毎日が記録に挑戦”っていうような思いだったんですけど、自然に“人に伝える歌”というものを意識するようになったんです。心を救い出し、無限大の人々と分かち合う…宗教的な意味ではなくて、歌は“魂の搾り出し”みたいなものだと実感してますね。

では最後に、どんな25年でしたか?

難しいですね…やっぱり頑張ってきたなって思いますね。何をするにも第一号ってことが多かったので、自分自身に“大丈夫だよ”っていつも言い聞かせながらやってきたような気がします。だからって、何かに迎合したり、妥協したことは、今までに一度もないですね。外側で人がどう言おうがずっと自分の軸を信じてやってきた、その歩みを誇りたいと思っています。公で簡単に批判されたりすることも多いのは、結構、ショックなんですけど(笑)、第一号の宿命だと思ってます。
浜田麻里 プロフィール

ハマダマリ:15歳でプロシンガーとしてのキャリアをスタート。大学時代に参加した女性ロックバンドMisty Catsで出場した『East West'81』でスカウトされ、1983年4月にアルバム『Lunatic Doll』でデビュー。数多くのコンサートツアーとコンスタントなアルバムリリースにより、本格派女性ロックヴォーカリスト、ヘヴィメタルの女王としての地位を確立。80年代後半にはメタルクイーンからの脱皮を図り、幅広いフィールドで魅力が発揮できるアーティストへと転身。デビュー35周年の18年には通算26作目となるアルバム『Gracia』をリリースするなど、精力的に活動を続けている。浜田麻里 オフィシャルHP

OKMusic編集部

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