夏の風物詩「蛍」の光に思い描くもの

夏の夜に淡い光を燈す蛍。平安時代に書かれた枕草紙の夏の一文で、すでに取り上げられているのだからその歴史は相当長い。近年は環境破壊などであまり見なくなってしまったが、今でも夏の風物詩として愛されている。

蛍を扱った作品は文学を問わず映画、音楽と幅広い。現在は活動を休止している3ピースバンド、レミオロメンもその中の1つである。彼らの通算11枚目のシングル『蛍』はボーカルの藤巻が初めて試みた、映画を見てから作られた楽曲。シンガーソングライター、さだまさし原作「眉山」の映画主題歌として披露された。

主演に松嶋菜々子を迎え制作された映画は、家族のつながりの大切さを感じさせるストーリー。「母だから、言えなかった―。娘だから、聞けなかった―。」その中で、娘がたどり着いた母の想いとは?

レミオロメン「蛍」



古典文学に出てきそうな歌詞内容には、秘められた恋物語を想像させる。

その光の妖しさから、人魂に例えられたこともあったという蛍。もういない人を蛍の中に見たのかもしれない。


“今、逢いに行けたら 夜の隙間から蛍が紡ぐ光の先へ”
…ため息を零す女性が浮かぶようだ。

夜の闇に引き立つ蛍は、そうして人の心を虜にしてきた。目を奪う幻想的な世界に、あの世との繋がりを見てしまうのだろう。

この楽曲は、藤巻の高く澄んだ声が続くのも特徴である。彼の声により言葉が伸びることによって生まれる間に、蛍が見えてくるようである。目を閉じて聴けば、瞼の裏に淡い光を感じることができる。PVでもタイトルに合わせ蛍は出てくるが、登場するのは最後の最後。映像がなくても蛍がいる空気を作り出せるのは、楽曲が夏の空気を作り出しているからこそなのだ。

この楽曲を含め、儚いものを題材にしながら力強い曲を生み出してきたレミオロメン。2012年の休止宣言以来、ソロでの活動がメインとなっている彼ら。
できるなら、また3人で揃って作られる楽曲を聴きたいものである。

私は『蛍』に、彼らの姿を思い描く。

TEXT:空屋まひろ

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